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第21話 動き出す陰謀(黒幕サイド)

明和めいわ 久二雄くにおを収容し、関連企業に派遣しました」


「よろしい」


 エルフウッドで作られた椅子に腰かけたデルゴ・ミウスは、満足そうに紫煙をくゆらせる。


「あのような小物、処分しても良かったのでは?

 デルゴ様のお役に立つとは思えません」


 ダークスーツを隙なく着こなした女性秘書が、サイドテーブルにブラックコーヒーを置く。

 わずかに動く尖った耳が、彼女の不満を示しているようだ。


「そう言うな、レイニ。

 いつでも切り捨てられるニホンジンの手駒というのは、案外貴重なモノなのだよ」


 レイニが淹れたコーヒーを、一息で飲み干すデルゴ。

 まったく、このコーヒーとか言う飲み物と、タバコの質は素晴らしい。


(そう、素晴らしいのだ)


 執務室の窓からは、地平線まで続く街が一望できる。


 ヴァナランド出身のデルゴにとっては驚異的な光景だ。


 ()()()()()()()ほんの少し前の出来事であるヴァナランドとニホンの”接続”。


 ニホンジンたちは魔窟から無限に湧き出すモンスターを退治するだけでなく、優れたカガクと呼ばれる魔法技術や機械仕掛けの道具をヴァナランドに提供した。


(それなのに)


 そのことに満足し、”こちら”に出て来るヴァナランド人が少ない。


 デルゴにとっては信じられない事だった。


 これだけ魅力的な世界が広がっているというのに。

 圧倒的な魔力というアドバンテージが自分たちにはあるというのに。


「それにだ」


 デルゴは視線を右側に移す。


 小高い山を覆うダンジョンポータルの威容。


 あそこは自分の野望を満たすための最高の実験場。


「くくっ」


 幾つかの障害はあるものの、自分の計画は順調だ。

 満足感がデルゴの全身を満たす。


「”Yuyu”に対してはいかがいたしましょう?

 あの無能ニホンジンの工作が失敗し、”Yuyu”の()()は無視できないものになりつつあるかと」


「そうだな……」


 タブレットと呼ばれる魔法装置でゆゆの「公式ちゃんねる」を開くデルゴ。

 フォロワーと呼ばれる”使徒”の数は175万人。


 悪霊の鷹を始め、デルゴが使役する連中の使徒数は合計55万人。

 いささか差が広がっていた。


「奴らは住処を変えたようだ。

 直接攻撃のリスクは増し、むしろそれが逆効果になることを今回私は学んだ」


「あの無能クニオがもう少しうまくやればよかったのですが」


「過ぎたことはもうよい」


「”Yuyu”の能力だけでなく。

 傍らにいる男のスキルも興味深いからな……むしろ手に入れた方が良いのではと私も思い始めている」


「どちらの方針を取るにしろ、私としてはまず”Yuyu”の力を削ぐような策を取るつもりだ」


「デルゴ様、それはどのような?」


「なに」


「ダンジョンアイドル候補は、Yuyu一人ではないという事だ」


 シャッ


 傍らに立つレイニの方にタブレットを滑らせる。


「……この少女は?」


 画面に映っていたのは、挑戦的な笑顔を浮かべたヘテロクロミアの少女。


「魔と王国の落とし子……ヤツは面白い種を蒔いてくれていたのだ」


 デルゴの視線は遠く海の彼方を向く。


「魔の御子よ……貴様は私に何をもたらしてくれる?」


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