表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。

今宵の妄想

作者: お針箱

学生時代に付き合っていたひとから

突然ラインがきた

ちょっとドキドキする 年甲斐もなく


写真も送られてきた

ニットキャップを被って微笑んでいる

さすがに積み重ねた時を感じるが

上手く重ねていると思った


ただ 何かちょっと違和感を感じた

でも あまり気にもかけず 

当たり障りのない返事を返した


翌日もまた写真が届いた

ヤンキースのキャップを被っている

黒地に白のロゴ


あれ?

Nの字が裏返しだ

そうか 

自撮りしてミラーモードのままなのね


一枚目の写真に感じた違和感の正体はこれだ

彼は左顔の方が優しいから と言って

いつも左側から撮影していたのに

あの写真は右顔だった


三日目に届いた写真では

ちょっとつばの広い登山帽を被っている

無精ひげを生やした顎は

あの頃と変わらず 

男らしい意志の強さを感じる

目じりの皺も ほうれい線も

わたしの脳内修正アプリにより消し去られた


20代の青年に変換された彼から


「今度 久しぶりに会えないか?」


待ち合わせ場所に 

キャップを被った彼の姿をみつけた

私の写真は恥ずかしいから送っていない

修正しても会えばバレる


私のことわかるかなぁ


その時 彼はキャップを持ち上げ額の汗をぬぐった

キャップの下の彼の額は

大胆に領土を広げ 

頂上は地肌を覗かせていた


送られてきた写真ですべて

帽子を被っていた理由が分かった


修正された画像は

瞬時にオリジナルに戻った


周囲を見回す彼の視線が私の前を通り過ぎ

素早くキャップを被りなおした


やっぱり 私に気付かなかった


結局 


「急に用事ができたので 今日は会えません」


これが最後の送信


彼からの返信は


「花柄のブラウス似合ってたよ」



評価をするにはログインしてください。
この作品をシェア
Twitter LINEで送る
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ