519 心の平穏か、それとも…
「いや、今まで戦ってきて第十二副部隊長リザネイエや将校ロゼでは、決定打に欠けていた。補助的役目に徹するのがせいぜいだ」
副部隊クラスでは駄目だとルディが言う。そのルディももう一歩なのだけど、それは口にしないでおこう。
「ファル様は環境変化を行うにはいいのだけど、今回は城の中だしね」
「アンジュ。もしかして俺を便利な事後処理要員と思っていないか?」
ファルは戦闘跡を綺麗にしてくれる便利な人だよね。
「なにか違うの?」
「言っておくが俺は木を生やす要員でもおやつを出す要員でもないからな」
非常食にはうってつけだと思う。
種である食べられる樹の実を出せるのだから。
「大丈夫。ファル様には別の役目もあるから!」
ルディの安定剤という役目もある。それは昔からのファルの役目だろう。
「絶対に碌なことじゃないよな」
大事な役目だよ。
「でも、精神防御をしながら戦わなければならないから、普通の騎士では難しいかもね」
ルディの言う残されるのは隊長クラスだけというのは、あっているのだろう。
「まぁ、シェーンが知っている最悪の未来よりはマシなだけいいよね」
私はそう結論づけるて何の肉かわからないステーキを切って食べる。
思っていた以上にナイフがすっと入って切れた。
これは聖騎士団で出されていたゴムのようだ肉ではない!
一口大に切った肉を食べる。
「美味しい!この肉柔らかい!これ何の肉?」
「あ?よく出される家畜用のロアだろう?」
よく出されるって私は初めて食べたけど?
それもロアって魔鳥の一種だよね。鶏肉より豚肉に近い。脂がすごい。
「私は一度も食べたことないのだけど?リザ姉は食べたことある?」
私が聖騎士団に入って半年ほどだ。
料理に出てきた記憶はない。
でも私はほとんど自分で作ってきたから、食堂のほうでは出てきたのかもしれない。
リザ姉はどうなのかと聞いてみる。
「アンジュちゃんの出すお肉が特別で、お肉って硬いものだと思っていたわ」
どうやら、リザ姉も食べたことがなかったらしい。もしかしてこれはお貴族様専用の肉なのだろうか?
家畜用とファルが言っていたから、一般庶民の口には入らないものなのかもしれない。
「あの、今の話だと……あ、お肉の話ではなくて、聖騎士としての話です」
あ、ごめん。私があまりにもお肉が普通に食べられることに感動してしまって、話を逸らしてしまった。
リザ姉がルディが言ったことに、なにか意見があるようだ。
「私たちは今回の戦いに参加しなくていいということでしょうか?」
ああ、ルディに役立たず扱いされたからね。足を引っ張るぐらいなら、他の部隊長さんたちに任せればいいと。
「また、その剣は何なのかと問うたほうがいいのですか?」
そこに神父様の声が聞こえてきた。
突然のことにリザ姉は思わず席を立って、声がした食堂の入り口に身体を向けている。
「我々は聖女の護衛をさせていただきます」
戦うことではなく、私の護衛という役目を果たすとリザ姉は敬礼をしながら言った。それもシレッとロゼと一緒にと言っている。
「よろしい」
「神父様。先にご飯をいただいているよ」
お昼を抜いているのは神父様も同じなので、先に食べていることを告げる。
私を守る者が戦いたくないというならば、無理強いしたくはないのだけど。
別に私が弱いわけではないからね。
リザ姉が待機要員だったとしても、私はいいと思う。
だから、話を変えてみたのだけど……無理なようだ。
「明日には各部隊長と副部隊長に王城に詰めてもらいます。その間騎士団のほうが手薄になるといけませんので、一部の副部隊長には残ってもらいます」
神父様はそう言いながら、空いている席についた。
「アレを持ってきなさい」
神父様は誰に命令したのかわからないけど、何かを持ってくるように指示をだした。
すると、私の横に怪しげな箱が置かれる。
横目で見ると黒狼の人が側にいた。
気配が感じられなくて怖いよ。
そして『アレ』という物はどうも私に与えられるものらしい。
この箱、異様に装飾されていて、触らないほうがいいという雰囲気を醸している。
例えて言うなら、宝石箱のように見えるけど、開けるとミミックだったという落ちがありそうなものだ。
「アンジュ、開けてみなさい」
「神父様、私は今ご飯中です」
私は開けるのを先延ばしにした。
できれば、この箱は遠ざけたほうがいいと思う。
「開けないとデザートを持ってこれませんね」
「デザート!」
え?お城のデザートってどんなものが出てくるのだろう!
しかし、これを開けないといけないのか。
私の心の平穏を選ぶか、デザートを選ぶか……究極の選択肢!
「さっさと開けてしまえ、アンジュ」
外野は黙っていて欲しいな、ファル。




