518 偽物だと突きつけるなら…
噂の神父様はシスター・マリアと話をするために別の部屋にいる。
きっと何か嫌な悪巧みでもしているのだと思う。
「それで、一番気になっていることを聞いていいですか?」
「なにでしょうか?」
私は天井しかない上を指し示す。
「上にあったものはどちらかと同じでしたた?」
月の聖痕か、それとも太陽の聖痕か。
どちらも見ている第十一部隊長さんなら答えられるはずだ。
「どちらとも違いました」
何が同じだったのかと主語を言わなくても、理解してくれた第十一部隊長さんは、はっきりと答えた。
どちらの聖痕でもないと。
「これ面白いね。どこでその絵をみたのだろう? それって一般的に公開されているもの?」
私は隣を見て尋ねる。
ルディから聞いた話では、隠されるように飾っている感じがした。
見れるものが限られている感じだ。
だけど、それを玉藻が見て、カセツという少女になった。
でなければ、貴族たちがカセツという少女を聖女に掲げようとしなかったはず。
「俺は知らないが、写し絵ぐらいはあるかもしれない」
「聖女至上主義ね。でもさぁ、教会にある聖女像じゃなくて、その絵を真似たっていうところが気になると思わない?」
「それは何か関係があるのか?」
ファルが聞いてきたけど、あるか無いかってよりも私が気になるというだけ。
「シェーンが玉藻は聖騎士団の敷地の常闇から顕れたと言ったんだよね。そうなると、そこから貴族に保護される前に何があったのだろうと思うじゃない」
これはただ単に私が気になるだけ。
普通、誰かに説明を受けたのなら一番人の目に入る月の聖女の姿を真似ると思うのだよ。
だけど、太陽の聖女を描いたという絵の姿を真似た理由を知りたいよね。
「偽物だと突きつけるなら、同じ月の聖女のほうが説得力があるのにね」
「言われてみれば確かに……月の聖女が二人となれば、どちらかが偽物だという流れになるが必然的だ」
ルディの納得した言葉が返ってきた。
太陽の聖女の姿を模した理由は何だったのか。
元々は対として存在する太陽と月だ。双子の聖女の再来にしたかったのか。
それとも太陽の聖女のみを聖女として掲げたかったのか。
「あの? 話が見えないのですが、偽物だから聖痕の形が違うということではないのでしょうか?」
シェーンがいたときにいなかった第十一部隊長さんには、私が言いたいことがわからなかったようだ。
「第十一部隊長さんがさっき言ったように、二百年前の聖女の姿をしていたんだよね?」
「はい」
「第十一部隊長さんも今まで太陽の聖痕は、描かれた形と思っていたよね?」
「ああ、そういうことですか。そもそもあの太陽の聖女の絵が偽物だったということですね」
ちょっと違うけど、まぁそういうことだね。
「しかし、太陽の聖痕の力を間近で見た者としては、偽物は所詮偽物だとわかります」
「当たり前だ。アンジュはただ一人だけだ」
ルディ。そういうことじゃないと思うけど。
ただ単に常闇を閉じた力を見たので、本物だと言っているだけだと思う。
「まぁ、聞いていたとおりだとわかったよ。それで第十一部隊長さんはこれからどうする?」
「敵側に潜り込めと命じられるのであればその通りに動きます」
いや、私にそのような権限はないよ。
あるとすれば、団長だけど、その団長は侍従についているので、ここにはいない。
すると次に権限を持っているのはルディなのだけど……。
「アンジュ。どうする?俺はそのままあちらに行っていいと思うが?」
私にどうするのか委ねるってこと?
はぁ、これは難しい。
確かにカセツの側にいてあちらの様子を見てくれたらいいのだけど、それは長期間潜伏して意味をなすと思う。
はっきり言って、今回は時間がない。
第十一部隊長さんが
それなりにカセツに近づける立場とは考えにくい。
「精神防御していた時点で、カセツは第十一部隊長を警戒すると思う。それなら、こちらの戦力にしたほうがいい」
そう、目に見えない形で接触しようとしてできなかったのだ。そういう者を近くに置くとは思えない。
「こちらで戦える騎士が、どれだけいるのかわからないけど」
「それはシスター・マリアがピックアップしているはずだ。おそらくそれを今すり合わせているのだろう」
神父様や侍従に団長の姿が見えないと思っていた。それは、今まで訓練を見ていたシスター・マリアの目にかなった者を報告しているらしいと。
「おそらく、残るのは部隊長クラスだけだろうが」
「少ない!」




