514 ここは魔王城?
私はルディに抱えられてドナドナされている。
ルディを、いってらっしゃ~いと送り出したにも関わらず、無言で私を抱えたまま立ち上がって何処かに移動始めたのだ。
私は置いていってよ。
ということはだ。ぞろぞろと人がついてくることになるのだ。
何故に酒吞も茨木もついてきているわけ?それもニヤニヤとした笑みを酒吞は浮かべているし。
そして、同じような黒い隊服をきた人型の蛇が三匹もついてきている。
そろそろ指輪に戻っていいと思うよ。
そんな聖騎士の白と黒の隊服をまとった者たちが集団で移動しているものだから、奇異な目で見られていた。
王城で務めている人たちにだ。
やっぱり王様の部屋の近くは人払いがされていたようで、ウヨウヨと人がいる。それも視線がブスブスと突き刺さる。
嫌な視線だ。
人を値踏みする視線だ。
あの人買い貴族どもの視線だ。
条件反射で前髪を下ろすように指で梳くも長さが足りない。
横の髪も前に持ってくる。
この感覚が久しぶり過ぎて、ビビってしまった。
不意打ちはキツイ。心構えする時間は欲しい。背負っている猫が、一斉に逃げてしまった。
この世界は理不尽だ。身分がなければ、人権なんてない。
貴族に逆らえば、人として扱われない。
「おい、なにジロジロ見ている」
「アンジュ様。失礼します」
ルディの殺気が辺りに撒き散らされ、私は頭から何かを被せられた。
たぶん、声からしてヴァルト様の上着なのだろう。
だから、王城だなんて来たくなかったのに……。
はぁ……大丈夫。大丈夫。
取り敢えず、猫をかき集めよう。
「黄泉の王よ。行き先を言ってもらえれば、我が先導しよう。こっちを見る輩にジャガンを向ければいいのであろう」
なにかリトが恐ろしいことを言っている。邪眼?蛇眼?たぶん蛇の蛇眼のほうかな。
「ああ、そうだな」
「ルディ。蛇眼がなにか知って了承したわけ?」
「アンジュに無粋な視線を向けた奴らをぶっ殺すのだろう?」
「あ、うん。たぶん間違っていないけど、殺すと問題になるからやめようか」
「何故だ?」
普通に問題になるよね!私の言葉に疑問を持たないでよ。
しかし、魔王様に人の言葉が通じるのかという疑問が湧き出てくる。
「お……王様の……ものだよね?王様の復讐の」
そう、王様の貴族の阿鼻叫喚地獄を作ろうぜに関わってくる人がいるかもしれない。
ルディにそう思わせよう。
「……確かに、それは兄上から許可をもらわなければならないな。リト。息の根を止めなければ使っていい」
「黄泉の王の仰せのままに」
「そのまま進んで、下に向かえ」
「御意」
……あの?なんだか嫌な予感がするのだけど。
私は大きくため息を吐き出し、頭の上からかけられたものを取った。
やはり、白色の隊服の上着だ。
視線を巡らすと、すぐ横にヴァルト様の姿がある。やはり、この上着はヴァルト様のものでしたか。
「お気遣いありがとうございます」
そう言って、私は白い上着を差し出した。
「必要であればお使いください。後でベールでも用意いたします」
「もう、大丈夫です。久しぶりだったので……」
突き返されたけど、本当にもう必要ない。
嫌な記憶が蘇ってしまっただけだから。
と言っている側から、前方の廊下にいる人々が倒れていっているのだけど?
何が起こっているわけ!
「リト。何をしているわけ?」
「石化であります」
「駄目なやつ!」
「別にそれでいい。その辺りに転がせておけば、そのうち治療されるだろう」
石化ってたぶん呪い系統だから、普通の治癒で治るように思えないのだけど。
「はぁ、青嵐。水の玉を出して大きめの」
「御意」
私は背後からついてくる人の擬態した青蛇に言った。すると、水球をだしてくれたので、左手を後ろに伸ばす。
そして指から一滴の毒々しい紫色の液体を出した。
「よく混ぜて、倒れている人にぶっかけていって」
「御意」
確かに命は奪っていないので、これ以上の妥協案は受け入れないような気がする。なので、私がフォローしておこう。
普通ならルディの行動を止めるファルが、ヴァルト様の反対側についているのだけなのだ。止めなかったということはそういうことなのだろう。
あの天神がやらかした影響がルディに大きく響いてしまっていると。
止めると悪化すると。
はぁ、この状態を客観的にみると、魔王様が部下を引き連れて、魔王城の中を歩いているように見えるよね。
進行方向の人たちがバタバタ倒れているし。
絶対に明日には王城内で噂が広まっているよね。
これが次期王様でいいの?
王様は、両手を叩いて笑っていそうだけど……。




