513 駄目だったかぁ
「最低条件の女性聖騎士というのは、要望に応えられましたね」
侍従が偉そうに言ったけれど、ヴィオならどうなのかと案を出したのは私なんだからね。
「さっき毒とか言っていたけど?」
「ええ、毒の聖痕を持っているので、それは受け入れてもらえれば、ありがたいですね」
侍従って、一応ヴィオが何の聖痕を持っているか把握していたんだ。
一般聖騎士の聖痕の力なんて把握していないと思っていたのだけど。
「私、殺されない?」
「……その辺りはどうなのですかね?」
侍従が、隣のルディに問いかける。
どれほどの力があるかまでは把握していないということか。
「ヴィオーラが淹れたお茶を飲まなければ問題ない」
「わかりやすい毒だから、飲めばすぐにわかるから安心しろ」
ルディとファルが答える。たぶん、今まで何度も飲んだのだろう。
確かにヴィオが淹れたお茶はピリピリしておかしいなとわかったので、わかりやすいのは確かだ。
「それ飲んでいるし!」
「聖女なら解毒ぐらいできますよね?」
「やったことないわよ!」
解毒。したことないんだ。
でも、普通に生活していたら、毒に触れることなんてないよね。
「そもそも何故、貴族じゃなくては駄目なの?普通の女性騎士でいいと言ったじゃない」
何も知らなければ、シェーンの言う通りだ。貴族にこだわる必要がないし、リザ姉の言った言葉は隊長の命令が最優先と答えたに過ぎない。
そこに女性聖騎士の現状は含まれてないのだ。
そして、シェーンの問いに侍従はいいどもってしまう。
それは答えにくい問いだからだ。
そして本質としては、ここにいる三人の兄弟の母親に繋がる話になるのだから。
「シェーン。私が自由にならない理由が答えかな?」
「どういうこと?ただ単に銀髪ということじゃないの?」
「親に売られたという話をしたじゃない?」
「ええ、聞いたわね」
「身分がない者は、教会が所有権を持っているわけ。それも子どもの引き取るときに誓約で決められているんだよ」
「所有権……」
「だから、聖騎士団の上である教会が、貴族の愛人になれと言われたら、従うしかないんだよ」
「え?」
「その命令を覆せるのが、貴族の部隊長に気に入られていること。そうすれば、教会は何も言ってこない。だから、ここにいる女性聖騎士は部隊長の意に反する行動はしないっていうこと」
「それ、アンジュが言うのか?」
ファル、うるさいよ。
結局魔王様が降臨して、私を捕獲しているのには変わりはないじゃない。
「それで、毒という忌避される聖痕を持っているヴィオは男爵令嬢なんだよ。自分の意思で聖騎士団にいる珍しい貴族の令嬢だね。ミレーは他国の公爵令嬢だった人。だから、教会は彼女たちに干渉してこない」
逆に言えば扱いにくい二人だ。
だから、第十三部隊に配属されているのだけど。
「教会の傀儡にも貴族の傀儡にもなりたくないのなら、うってつけの護衛だね」
「傀儡はいや」
「そうだね。シェーンは最後の聖女となると決めてくれたのなら、自分の意思で動いてほしいからね」
なんか、後ろからブスブスと視線が突き刺さるのだけど。私は聖女とは名乗らないよ。
「でも……毒は……」
「シェーン。言っておくけど、私も毒の聖痕を持っているよ」
「え?」
「こうやって話しているだけなら、問題ないよね。聖痕ってそういうものだよ」
まぁ、ヴィオはそれでもばらまくのだけどね。
「わかった」
シェーンは内心不服なんだろうけど、納得はしてくれた。
「うん、解決できてよかったよ。信頼できない者を聖女の護衛にはできないからね」
王様は解決できたと喜んでいる。だけど、その護衛に問題があることは口を噤んだほうがいいよね。
ルディが護衛にと命じたのだから、責任は取ってくれるだろう。
「それじゃ、お披露目パーティーの詳細を説明しようかな?」
そんな軽いノリで王様が説明をしだした。
あの、それって王様の付き人がするようなことだよね。
いや、貴族の阿鼻叫喚地獄を作ろうぜと張り切っているのは王様本人なので、とてもヤル気なのは窺えたのだった。
「私を通行手形にするとはどういうことですか!」
王様の説明が終わったところで、タイミングよくシスターマリアが扉を勢いよく開けて入ってきた。
シスターマリアを通行手形にすればいいと言ったのはルディだから、ルディが説明してよね。
「叔母上、相変わらずお元気そうで何よりです」
「スラヴァール。聖騎士だったと言っても表に出ない聖騎士だとわかって、あの者たちを連れて来いと言ったのですか!」
あ、そうか。ルディの母親が聖女として立たなかったから、王城内でシスターマリアを聖騎士と判断する者が居ないということか。
「それは僕じゃなくて、シュレインが言ったのだよ」
「シュレイン。部隊長として、彼らを引き取りにいきなさい!」
……やはり検査に引っかかってしまったようだ。毒の持ち込みは駄目だったかぁ。
使えると思ったのになぁ。




