511 聖女に女性聖騎士がつくのは難しい
「そうかな?言い方の問題だけだよ。聖騎士に与える剣ということ」
シェーンは守護剣と言ったけど、内容的には聖剣ということだろうと王様にいう。
ゲーム云々の話はできないからね。
「それにその剣は使い手によって、出せる能力が違ってくる。あと、世界の意志のようなものも絡んでいるから、聖騎士と一言で言っても何かランクがあるようだね」
今のところ神父様とヴァルト様の聖剣が、飛び抜けて能力を解放していると思われる。
その後はルディなのだけど、何かが引っかかっているように、能力が欠けている。
聖騎士の名を与えたときもそうなのだけど、根本的な問題があると思う。
「おそらく、200年前の兄の聖騎士は、本物の聖騎士だったのだろうね」
そうであるなら、未だに炎が燃え続けているという能力に説明がつくだろう。
普通ではないということにだ。
「そうなってくると、月の聖女の聖騎士がいないことが欠けているということになるね」
王様の言葉に、私は返す言葉はない。
そういう状況を作ったのはシェーン自身だ。
月の聖女の力の源を他者に頼らなければならない。その力を選ぶか、心の平穏を選ぶかで、シェーンは後者を望んだからだ。
だけど、今は違う。
多少の魔力を常時扱えるようになった。
シェーンは力を得るためではなく、自分自身を守るための聖騎士を側に置くことができる。
ただ、今までのことがあるから、シェーンの聖騎士になりたいという者がいるかということと、すぐに聖剣は与えられる状況にはならないということだ。
「一応、今回の護衛としては、叔母のマリアセリーヌ・アイレイーリスと将校アンジュをつける予定ですが、別の者がいいということでしょうか?」
侍従が聖女お披露目会のことを出してきたけど、そこは関係ないのではないのかな?
「そうだね。話を聞くかぎりでは聖女と聖騎士の間には絆が必要な感じだからね。彼女自身の聖騎士がいたほうがいいだろうね」
王様としては、お披露目の場で聖女と聖騎士をセットとして、貴族たちに認知させたいということだろうか。
そこに何の意味があるのか。
例えば、聖女の背後にいかつい団長のような人物が立ってるのであれば、牽制になるだろう。
だけど、現状としては難しいと思う。
「聖女シェーン。君はここ数ヶ月間、聖騎士団にいたけど聖騎士としていて欲しい者はいるかな?」
王様がシェーンに聞いたけれど、シェーンは視線を逸らしてしまう。
そしてチラリと私の方を見た。
私はシェーンではないので答えられないよ。
「その……アンジュでは駄目なのですか?」
え?そっちの確認の視線だったの?
それは難しいかな?
「駄目だ」
私を捕獲したまま離さない魔王様からダメ出しをされた。
わかっているよ。
私が動くと、みんなが動いてしまうからね。
「うん。次期王妃に聖女の聖騎士をさせられないね」
ぐふっ!次期王妃と王様から言われると無性に逃げ出したくなる。
しかし最初の予定は聖女のお披露目だけだったけれど、王様の退位とルディが王に立つことを発表する。
必然的に私はルディの側にいなければならないのか。
本当に逃げ出したいよ。
「次期王妃……それで自由にならないと……はぁ、それでこれほどの護衛がついているのですね」
シェーン。壁を背にして立っているリザ姉たちは私が巻き込んだから、ここにいるんだよ。
護衛じゃないからね。
「アンジュが駄目なら女性の騎士をお願いしたいです」
シェーンの言葉に沈黙がおりる。
しかしシェーンはそのことに気がついていない。
「話がしやすくて、優しい人とか……」
女性騎士でシェーンについてくれるのは貴族ということになる。それは私のような教会育ちは、貴族の誰かの庇護下にいなければ、聖騎士を続けられないからだ。
シスター・マリアは公爵家の者だったがゆえに、聖騎士で居続けることができたのだろう。
姉の聖騎士としてだ。
「聖女シェーンの要望は厳しいですね。貴族の出の聖騎士で、聖女につける者は皆無と言っていいですから」
侍従が把握している感じでも難しいのだろう。
貴族の令嬢が聖騎士になるのも難しいけど、婚約者とかいそうだし。
そうなると、聖女優先ではなくなるということだ。
「あの……貴族の方でなくてもいいです」
「それでは、本人の了承は得られないでしょう。第十二副部隊長、貴女はどうですか?」
「私は隊長に付き従っております。個人で聖女につくことはできません」
リザ姉はリザ姉自身の考えをもって私には付き従わないとはっきりと言った。
ヴァルト様がこの場にいるから、ここにいるのだと。
それはわかっている。
リザ姉は私を利用している。
だから私もリザ姉を利用している。
それは互いにメリットがあるからだ。
「ただ、アンジュちゃんを敵に回すほど馬鹿ではありません」
それはどういう意味かなリザ姉。




