509 偽者説が浮上
『そこに玉藻がいるのよ。輝く聖女の証を頭上に掲げてね』
ということを以前にシェーンが言っていた。
しかしまさか蛍光灯だったとは!
それは光り輝いているだろう。
そしてシェーンは身体をくの字に曲げて笑っている。
「アンジュ。何が笑う事があるのかわからないのだが?」
ルディの言葉にハッとする。
私まで意味不明な言葉を話していたよ。
それも私とシェーンしかわからないことを。
「あ。ごめん。ごめん。その偽聖女の聖痕の形が違うらしい。シェーンの皿じゃなくて……」
「せめて円盤て言ってよね!
シェーンから訂正されてしまった。
しかし反応が早かったから本人も思うことはあるのだろう。
「ええっと、こう平たい丸じゃなくて、腕輪のような形をしているって」
「それは太陽の聖痕だと?」
ルディが苛ついたように聞いてきたけど、そうじゃないんだよ。
「それは王冠のような形だよね?」
「え?」
今度はシェーンから疑問の反応が返ってきた。やはり教会の聖女像が皿なのでそのイメージがあるのだろうね。
「違うのか?」
「そうだね」
私は光の魔術で環を作って頭の上に浮かせてみた。
「こんな感じらしい。で、いいんだよね?」
「蛍光灯……」
どうやらシェーンのツボに再び入ってしまったのか、お腹を抱えてプルプルしだした。
うん。これでいいらしい。
……って、シェーン以外の誰もなにも反応してくれない!
「これは……確かに……」
え?神父様。その反応ってなに?
「これを見てみれば、貴族たちは納得しそうだね」
王様。これのどこが納得できるっていうの?私の聖痕と全然違うよ。
なんだか雰囲気が怪しいので光の環を消した。シェーン以外の空気感がなんとも言えないのだけど?
いや、鬼と蛇どもは雰囲気を感じて無言を押し通している感じで、リザ姉とロゼはわからないが口を出さないほうがいいという雰囲気だ。
「本物の太陽の聖痕を見ていない者なら、その聖痕を太陽の聖痕と思ってしまうでしょうね」
「神父様。それはどういうこと?」
何故に、そんな変な勘違いが起こるわけ?
「200年前の聖女の絵がそんな感じなんだよね」
「双子の聖女は偽者だった説が浮上!」
王様の言葉に突っ込んでしまった。
しかし、まさか双子の聖女が偽者だったなんて、聖騎士の兄はまさかその事実を隠そうと……
「違うぞ。馬鹿」
ファルに馬鹿呼ばわりされてしまった。
だったら、何故にそんなおかしな絵が残されるわけ?
「恐らくだけど、当時の王は絵師にも太陽の聖女に会わせることは無かったのかもしれないね」
「当時の聖女を描いているのは月の聖女が多いですが、唯一残された太陽の聖女の絵姿も妹の月の方だったとすれば、絵姿が似ているのも当たり前ですね」
まぁ、この場に姿は全く似ていないのに性格はそっくりな三人の兄弟がいるので、双子の聖女と言ってもそっくりな可能性のほうが少ない。
何故なら聖質持ちは容姿が家族と異なることが多いからね。
そこは未だに謎の部分だけど。
しかし、貴族たちが200年前の聖女の絵を目にする機会があれば、銀髪で頭に輪っかを乗せた者をみれと太陽の聖女と勘違いするわけか……ん?
「私が偽者説が浮上?」
ということは、聖女云々に関わらなくていい!
「アンジュ。太陽の名を掲げているのだ。そこに間違いはない」
私の独り言に答えなくていいよ。ルディ。
わかっているよ。月がお皿なら、太陽が王冠だってぐらい。
蛍光灯なのはきっと月の聖痕の中をくり抜いた聖痕と説明でもしたのだろう。
別に間違ってはいない。
だから蛍光灯を頭上に掲げていても、それが偽者だと思わないのだろうね。
「まぁ、その偽聖女は何処からか仕入れてきた200年前の聖女の姿をしているっていうわけだね」
もし、200年前の聖女の写し絵を玉藻が見る機会があるのなら、きっと容姿も似せてくると思う。
「あっ!そうかなるほどね。異形であれば、可能だね」
「これは多くの貴族たちの求心力になっていると考えるべきかと」
本物と偽者の王様はコソコソと二人で話している。
恐らく王様の元を離れていった貴族が多いということなのかもしれない。
いや、貴族たちからすれば、王は偽者だということが公然の秘密なので、王にかしずく必要がないのだ。
そうなると、貴族と一線を引いているもしくは、戦いに出ていて玉藻と接触しなかった聖騎士のみが、王族側につくということになるのかな?




