504 隣に座ってきた!
「神帝様。我は神帝様の命を忠実に……ぐはっ!」
角にリボンをつけた馬鹿が、場をわきまえずに飛んできたので、重力の聖痕を使って床に叩き落した。
あれ、引き渡したときと変わっていないようだけど、きちんと通訳の役目はできているの?
侍従の評価はいいようだけど、今までよりマシという感じではないよね?
「あれ、なに?」
「アンジュが言っていた精霊ですか?」
王様は麒麟のことを聞いていなかったのだろうか。床に落ちてもだえている麒麟を珍しいものを見る目を向けている。
そして神父様は私経由で聞いているものの、初めて麒麟の姿をみたようだ。
確かに翌日には北に向けて出立したから、見たことはなかったのだろう。
「キリンというモノらしいですが、そこの将校アンジュが聖女シェーンの話し相手として置いていったものですね」
「それ、全然役に立ってないってことだよね!」
王様の言葉に答える侍従。何か私が邪魔なものを置いていったというふうに聞こえるけど?
「あ……」
そこにシェーンの声が聞こえてきた。視線を向けると、床に落ちている麒麟を拾い上げようとして、床から離れないことに戸惑っている。
重力の聖痕で床に押し付けているからね。それは持ち上がらないよ。
「まぁ、落ち着いて話ができるぐらいには役に立っていますよ」
「精神安定剤ってこと?」
「聖女シェーン。話が始まらないので取り敢えず、そこに座っていただけませんかね」
私のことを無視をして、侍従はシェーンに一人掛け用のソファーに座るように促す。
無視って酷くない?
「あと、力が安定して使えていることですかね。いったい何をしたのか聞きたいのですが?」
ああ、魔力がダダ漏れのシェーンに力が使えていることね。しかし、何の力を使ったのだろう?
「聖女様に何かを頼んだの?」
「質問してるのはこちらですよ」
……なんだか、最近同じような言葉を聞いたような気がする。
私は後ろを指した。
「朧につかったことと同じだね。世界から力を搾取しているから、あまり大きな術は使わせないでね」
「は?」
私の返答に侍従が固まってしまった。
「流石と言えばいいのかな。そういう解決方法か。感嘆に値するよ。フリーデンハイド。取り敢えず君も席につこうか。いつまでも立っていたら話が始まらないからね」
王様は楽しそうに、クスクスと笑いながら侍従に座るように促す。しかし、空いているソファーはないはずだけど?
そう思っていると侍従が隣に腰を下ろしてきた。正確にはルディの隣にだ。
そこなの?
そして定位置のように団長が侍従の背後についた。
やはりこの位置関係は未だに違和感を覚えてしまう。
もやもやと思っていると私の目の前のローテーブルに数種類の焼き菓子と白いクリームに覆われたケーキが現れた。
そう、突然現れたのだ。周りを見ても私の視覚では捉えられない。
だけど偽者の王様の視線が動いているから、黒狼の人がお茶と甘味を用意してくれたのだろう。
「なにこれ……こわっ」
私と同じように目の前にお茶とケーキが突然現れたことにシェーンは引き気味だ。確かに知っていなければ怖いと思う。
「それじゃ、フリーデンハイドとサイガーザイン伯爵に緊急招集を告げた理由を説明しておくよ」
王様は出されたお茶に口をつけることもなく、今あったことを、侍従と団長に説明をしだしたのだった。
私はケーキを食べ終わって、斜め後ろの視線が気になりつつ紅茶を飲む。
今、思ったのだけど、何故に王様が説明しているのだろう?
いや、今は影の王様の従者または側近という感じなのだろうけど、王様と並んで座る従者はないと思うのだよ。
身内の集まり風だからいいのだろうか?
しかし斜め背後からの視線が痛い。
団長は侍従にクッキーでも食べているところを邪魔されたのだろうと推測される。なんというか視線に殺気が乗っているきがする。
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「ということで、大幅な変更をしたほうがいいという助言をもらったのだけど、どう思う」
一応王様は話し合いをする気はあるらしい。でも貴族の阿鼻叫喚地獄を作ろうぜ作戦は変わらないんだよね?
「ありえなくないでしょうか?壁や天井に目が現れるなど。そこの者たちは何をしていたのです」
しかし、侍従は目目連が現れるまで気づかないことに、偽者の王様に睨んでいる。
いや、対外的に偽者の王様を本物であるようしているはず。
「アンジュ。サイガーザインに与える必要はありませんよ」
私が斜め後ろの視線が気になって、焼き菓子が乗った皿を後ろに差し出していると神父様から言われてしまった。
だって、凄く恨めしそうな視線が突き刺さってくるんだよ。斜め後ろの団長から……。




