503 見られていた
酒吞と茨木がその場でなにかの動作をすると、部屋中に目が開いた。
まさに壁や窓、天井に至るまで目があるのだ。
しかし実際に見ると気味がわるい。これは壁に耳あり障子に目ありのメアリーだよね?
そして酒吞は大雑把に大刀でいくつもいっぺんに斬っているけど、茨木は氷の刃で一つ一つ潰していた。
ヤバい。これ相当ヤバい。内心私はパニックになっている。
これは玉藻に情報がダダ漏れだ。
ここで、どこまでのことが話し合われたのだろうか。いや、全て王様を通すだろうから、全部と言っていいと思う。
それは偽者の王様が偽者とバレるわけだ。
しかし、何故私と酒吞と茨木しか気づかなかったのだろうか。
ちなみに緑龍はワイバーンの世話を任せているのでここにはいない。
ということは、あっちの世界の者でないと気付かないということなのだろうか。
酒吞と茨木が、何かをしたきっかけで目が開いたので、隠蔽か何かをされていたのかもしれない。
「王様。作戦を大幅に変更すべきだよ。今までここで話し合われたことは全部あちら側に筒抜けだと思った方が良い。あ、第十一部隊長さんのことって王様に伝えているの?」
もし、報告されていたなら、第十一部隊長さんは戻ってこないかもしれない。
「私の独断で決めましたので、まだ報告はしていないですね。ここに来て言うつもりでしたから」
神父様の言葉にほっと安堵のため息が出る。
スパイをしてきてよと言った手前、そのせいで何かあったら私の責任だからね。
「それで今のは何なのかな?」
いつもニコニコと笑みを浮かべている王様が、何か難しい顔をしながらきいてきた。
「えー……目目連の系統かなぁ?それとも目玉のおやじ?あれを使って敵情視察をしていたと思うね。でも耳がいなかったから見るだけ?茨木、どうなのかな?」
あれだけでは判断できないけど、こちらを監視していたのは間違いないと思う。
「そうですね。術者が操っていれば、その目を借りて見ることができるでしょう」
「術者?」
「はい、妖狐は妖術に長けていますからね」
これはなにかの属性に特化型ではなくて、オールマイティに対応できると思ったほうがいいのだろう。
それも陰陽師でないと倒せない玉藻だからね。私たちでどうにかなるのかわからない。
「フリーデンハイド。悪いけど緊急事態だから、今すぐに王城に来てもらえないかな?」
突然王様が、首から下げた銀色のタグに話しかけている。そういうのって、背後霊のように立っている偽者の王様が持つべきじゃないのかなぁ。
でも身内同士で連絡を取るぐらいにはいいのか。
『陛下。何が起こったのですか!』
「ん?取り敢えず聖女様も連れてきてよ。二日後の話を聖女様を混じえてしないとね?」
『わかりました。団長!焼き菓子を食べて……』
侍従が団長に話しかけたところで、ブチッと通信が途切れてしまったけど。
ズルい。甘党好きの団長はお菓子タイムだったらしい。
「甘い物が食べたい」
神父様からの差し入れのシュトーレンは、既に私のお腹の中に収まってしまったので、もうないのだ。
そう、考えるには糖分が足りないのだ。
甘いお菓子が食べたい。
「そうだね。用意させるよ。お茶とお菓子を持ってきてくれるかな?」
この部屋の中には、使用人らしき人はいない。いるのは偽者の王様だけだ。
一度毒を盛られた王様は色々警戒しているのかもしれないけど、それにしても使用人の一人ぐらいは側に置いたほうがいいと思う。
そして数分後、ただの雑談をしているところに扉をノックする音が響いてきた。
お菓子を持って来てくれたのだろうと、ウキウキして扉のほうに視線を向ける。
入ってきたのは水色の髪の人物だった。
「はやっ!」
「なんですか?緊急事態だとお聞きしましたが、くつろいでいる感じですね?」
侍従だった。その背後にはガタイのいい隻眼の団長もいる。
もしかして、離れた場所にある聖騎士団本部にいたわけではなく、王城内にいたってことかな?
「緊急事態は本当のことだよ。聖女様も連れてきてくれたようで、まぁ一安心かな?」
そして侍従と団長に挟まれる形で聖女シェーンがいた。それも馬鹿を……麒麟を抱えてだ。
なにかペット化していない?
角にリボンがついているけど?
そしていつの間にか王様の背後にいた偽者の王様が、王様の隣に座っている。これはシェーンには彼が王様だと通すつもりなのだろう。
「主様。ご無事のお戻り喜ばしいかぎりです」
そして朧もついてきたようだ。うん。なんだか人口密度が高くなってきたよ。
それよりも、お菓子はまだかなぁ。
電子書籍のご報告です。
魔女との契約婚で離縁すると、どうなるかご存知?2~聖騎士の押し掛け夫とエルフと魔女の来訪者~
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コミックシーモア様先行配信。もちろん限定特典つきです。
イラストはまろ様。エルフっ子を描いていただきました!
エルフっ子に魔女たちの集まり、そして勇者の謎に迫る二巻です!
あともちろん、web以外の話も追加しています。
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