496 美人と言う基準
ということはだ。第十一部隊長さんは家のために偽聖女側についたのではなく、聖女の聖騎士になりたいためについた。
あれ?でもなぜシェーンでは駄目だったのだろう。……いや、これはお貴族様特有のプライドがあるからか。
何処かの公爵はそんなプライドはなく、早く帰りたいオーラが見える。
本当に公爵というものなのか疑問が出てくる。
婚約者がいるらしいけど、また逃げられていてもおかしくはない。
一度目は婚約者に逃げられたらしいし。
「ここは、もう大丈夫だと思うから、戻ろうか」
長居をしても仕方がない。それにどちらかと言えば、第一部隊の駐屯地の方が食べ物が充実していそうだ。
今日は美味しいものを食べたいな。
「あの……王都に戻るのなら同行しても構わないだろうか」
何故か、関係のない第十一部隊長さんが声を上げた。
いや、ここに第十一部隊の騎士たちがまだいるのに、部隊長だけ別行動って駄目でしょう。
ああ!わかった。
「そうだよね。早く王都にいる偽聖女に会いたいよね」
「そうではなく……」
「どうして、アンジュって時々斜め上のことをいうのかなぁ」
「アンジュちゃんって、自分のことになると無関心になるところがあるわよね」
歯切れの悪い第十一部隊長さんの言葉を遮るように、ロゼとリザ姉が私を批判してきた。
私は私自身のことに無関心じゃないけど?
どちらかと言えば興味津々。やりたいことたくさんあるし、美味しいものには妥協したくないよ。
「レクトフェール。あなたは部隊を引き連れて王都に帰還しなさい。聖女の聖騎士でないものが同行を願うなど、おこがましいにも程があります」
神父様が上官のように第十一部隊長さんに命じた。否定など言わせないという圧力を放ちながら。
「しかし……」
だけど、それにも屈せず第十一部隊長さんは反論しようとする。
「私に偽物の聖女の調査をさせたいのであれば、必要なことかと」
おお!第十一部隊長さんは生贄志望だった。
「それじゃ、そのまま玉藻……珂雪側に入っていいよ。たぶん、ちょー美人だと思うんだよね。一国を滅ぼした逸話が残る九尾の狐だから人の心につけ込むのが上手いというし。情報だけくれればいいよ」
「なぜ、これが聖女に選ばれたのだ」
「アンジュから、ちょー美人と言われる側もたまったものじゃないよね」
「喋らなければ、アンジュちゃんも美人よ」
「なんかリザ姉から条件がつけられた!」
ため息を吐く第十一部隊長さんに、呆れた感じのロゼ。そしてしゃべらなければいいという条件を言うリザ姉。
その美人というのは、この国での美人だよね。銀髪の守ってあげたくなる聖女様感というやつ。
それ私に当てはまっているのは銀髪だけだからね。
「精神操作の魔術を常に発動しておくという条件が呑めるのであれば、受け入れましょう。精神操作されて偽の情報を与えられても困りますからね」
あ、確かに神父様の言う通りだ。
人の心につけ込むということは、敢えて偽の情報を与えられる可能性があり、いざというときに混乱する。
思い込みという罠にハマるのだ。
そんなことをひと通り決めて、第一部隊の駐屯地に戻ってきた。
「お……おかえりなさいませ」
何故か緊張したように、ガチガチに固まった第一部隊長さんが出迎えてくれた。
あの転移できる腕輪の相方を持っているのが第一部隊長さんなので、ここにいるのはわかる。
けれど、何を緊張することがあるのだろうか。
あ、そうか神父様を目の前にしてということか。それならわかるよ。
悪魔神父は怖いからね。
「せ……聖女様。お勤め、お疲れ様でした。……将校ディリラから聞いて、好みの果物を用意しております」
「え?ディリラ姉って第一部隊にいたんだ」
ディリラ姉は同じ部屋ではなかったけど、リザ姉とよく一緒にいたので、よく知っている。
「あと、聖女様呼びやめてくれない?誰が聞いているかわからないし。聖女はシェーン」
「はっ!失礼いたいしました。それで何故に第十一部隊長であるレクトフェール・ファニング殿がこちらに?」
おお!同じ隊長同士なのにフルネーム呼び。だが、私にはレクトなんたらかんたらとしか聞き取れないけどね。
長いから、フルネームで呼んでいるのだろうという予想。
「その聖女様からご指名の依頼を受けたのですよ」
「だから聖女はシェーンだからね」
「なんですと!私にもご用命を!」
何故か第一部隊長さんから迫られてしまった。
いや、特にないよ。
「ロベルにはロベルにしかできないことがありますから、そのうちお声がかかるでしょう」
悪魔神父が適当なことをいう。
いや、私は別に第一部隊長さんにして欲しいことはなにもないよ。
豚貴族をブヒブヒ言わそうぜ作戦のあと、豚貴族の後釜になって欲しいと言うぐらいで……あ、あったわ。
出先で書いたので、後で修正入れるかも?




