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聖痕の聖騎士〜溺愛?狂愛?私に結婚以外の選択肢はありますか?〜  作者: 白雲八鈴


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486 遊撃隊に作戦を伝えるよ

「茨はそのままで術の停止を」


 今ある茨はそのままで、檻という役目を果たしながら、新たに生えてくる茨を止めた。


 これで『けいもう』の動きは阻害できるだろう。


 問題はあの滝のような雨。それとこの山が住処の山と勘違いしている『けいもう』からエメラルドの執着を取り除くか。


「酒吞。山を燃やしてくれるかな」

「あ?いいのか?それはアイツを怒らせるだけだぞ」

「もう、怒っているじゃない」

「そらそうだ」


 この状況で怒りを鎮めるのは無理だろう。それこそ天宇受賣命に踊ってもらうしかない。

 それが、大陸の怪神に効くかはわからないけどね。


「茨木。あの滝のような雨って凍らせられる?」

「流石に神気がまじっている上に、あの量は無理ですね」

「そうだよね。それじゃ、一部を凍らすことは?」

「アンジュ様の意図が計ることができないのですが、どのような形をお望みで?」

「針山かな?大きめのね」

「複数は無理ですね。槍程度なら可能です」

「いいね。それ。お願いするよ」


 神には普通の力は通じない。

 神の力が宿った聖剣すら水の壁に阻まれているのなら、それから打開するしかない。


「緑龍は酒吞の援護。『けいもう』の邪魔が入らないように一気に火を広げて」

「それだと、皆様も炎に巻かれることになります」

「それは大丈夫。火の中でも戦えるよ」


 神父様の教え子で、場所を選んで戦う者はいない。どんな場所でも戦うように訓練されている。

 本当に一個中隊がいれば、国を簡単に落とせるほどの戦力だ。


「それじゃぁ。行くか」

「え?本当によろしいので?」

「アマテラスがいいって言ったら、いいんだよ」


 豪快に笑う酒吞と挙動不審の緑龍は茨の中に消えていった。

 恐らく山の頂上から効率的に燃やしていくのだろう。


 すべてが終わったら、ファルに元通りに木々を生やしてもらえばいい。


 そして私は背後を振り返った。

 そこには何故かヴァルト様が立っている。

 確かにここは戦闘区域より西側だけど、少し北側にズレているので、通るはずはないのだけど?


「どうかされましたか?ヴァルト様」

「どうも拮抗状態ですので、打開策があるのであれば、アンジュ様の指示を仰ぎたいと参りました」


 ……だから、私がこの部隊を率いているわけじゃないよ。

 部隊をまとめるのは、ルディだと決めたじゃない。

 それにロゼが言っていたよね。私を使うなら遊撃部隊だと。


 私は虚をつくべく、策を練っているだけだよ。だから、これは決定打にはならない。


「ヴァルト様。私は酒吞たちと同じ遊撃部隊ですよ。私は神殺しの聖剣は持っていないのですから」


 そう言ってヴァルト様の抜き身の剣を指す。異界の神の力と世界の力を持った剣。

 異形を追い詰めるのは、その剣だ。


『けいもう』は薄々気がついているのかもしれない。だから防御に徹しているとも考えられる。


「判断を間違ってはいけません」

「これは失礼しました。未熟者で申し訳ございません」


 そう言って、私に敬礼する鎧。どうして第十二部隊長のヴァルト様が、私に礼をするのよ!そして敬語!


 文句を言おうとすれば、その姿は既にここには無かった。鬱陶しい鎧を着ているとは思えない素早さ。

 流石、部隊長だよね。


「アンジュ様。我々はいつ行動開始ですか?」

「戦闘区域以外が火の海になったぐらいだね。あ、今から壁を作るから冷気をまとわしてくれない?酒吞の火に燃えないぐらいの」

「お安い御用です」


 私は戦闘区域より少し離れた場所の茨を移動させ戦闘区域を覆うようにする。まさに茨の檻であり壁だ。


 そして、気配を探りロゼの居場所を探り当てる。三人の気配がこちらに近づいているようだ。


 第十一部隊長さんは戻るかと思ったのに、茨の山に入って来たのか。まぁ、神父様の手前、戻ることはできないよね。


 私は嫌がらせの為に作った魔術を使う。

 相手の鼓膜を振動させて、私の声なき声を伝える魔術だ。


『ロゼ。もうすぐ炎の海になるから、防御しておいてね』


 この魔術の残念なところは、私からの一方通行なので、ロゼが何を言っても聞こえないところだ。


 そして、熱風が北側から吹いてきた。


 嵐で湿気ていた周辺は、少し前の酒吞の戦いでカラッカラに乾いている。

 だから、ゴゥという轟音と共に一気に炎が広がった。

 ただ、茨の壁には茨木の冷気をまとわせてもらったので、戦闘区域には炎は届いていない。


 だから、まだ気がついていないはずだ。


 大事な住処の山が炎の海に包まれていることに。


「それじゃ行こうか」

「もしかして、アンジュ様は更に怒らそうとしていますか?異国の神をも恐れないということですね」


 背後からついてくる茨木から、怖い物知らずと言われてしまった。

 恐れていないわけじゃない。神は恐ろしい。


 だけど、冷静に対処しているから、防御に徹しているのだ。

 冷静さを失えば、あの防御は崩れる。


「ずっと、水の壁で防御されたら、ただの人でしかない私たちの力負けだからね。それを壊す必要がある。だから最初の要の一撃は強烈で致命的にしたいのだよ」


 あの常闇から死の鎖を出すほどの一撃をだ。




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