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聖痕の聖騎士〜溺愛?狂愛?私に結婚以外の選択肢はありますか?〜  作者: 白雲八鈴


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473 躾は肝心

「巨大化……」

「そうだね。本当はもっと大きいと思うよ」


 全長7メートルぐらいの大きさで地面にめり込んでいる巨大な黒いヘビの塊。たぶんこれ以上大きくなると鎖で身体が千切れると判断したのだろう。

 ボンレスハム状態のヘビどもになっている。


『だから言ったではないか。我が主には逆らわないようにと』

『我が主は龍である我らにも、容赦というものが無い御方である』

「ヘビどもうるさいよ」


 指輪から姿を現さず、私への批判を言うヘビども。後で覚えておくといい。


「うぐっ!離せ!貴様のような小娘に、我が膝を折ると思っているのか!」


 本性がでてきたね。やっぱり、先ほどまでおとなしくしていたのは、期を見計らっていただけにすぎなかったということだ。


「ルディ。これどうするの?躾をするなら最初が肝心だよ」

「躾とは何だ!我はその辺りにいる犬畜生では無いぞ!」

「犬は存在しないから発言に気を付けたほうがいいよ」


 犬の躾と同じにするなと言いたかったのだろうけど、残念ながらその例えである肝心の犬がいないから、言葉の意味が通じないんだよね。


「これがさっきのモノと同じと……アンジュのヘビと何故、こうも違う」

『我らはヘビではありませぬぞ』

『我らは誇り高き龍であります』

「くだらない誇りは天日干しにして、はたき落とすようにって言ったよね。一週間も経っていないのに、忘れるなんてヘビで良いんじゃない?」

『『ぐはっ!』』


 これで、うるさいヘビどもは静かになるはず。

 しかし、このツチノコもどきはどうしたものか。私よりルディがきちんと一度シメたほうが……教育したほうがいいと思う。


「ルディ。最初が肝心だよ。目の前で酒を地面に流すぐらいするといいんじゃない?」


 手に持っているジョッキを掲げる。それにはなみなみと赤い液体が入っていた。ワインを踏みつけている一匹の頭の目の前で、地面にドボドボっと零す。


「もったいねぇ!」

「我の酒が〜!」


 酒吞の声とツチノコもどきの声が重なる。そしてヘビの頭の一つが伸びてきた。

 裂けた口から赤い舌がチロチロと伸びている。


「これは地の神に捧げる酒。ツチノコにやる酒は無い!」


 そう言って『毒の茨』で開いた口をぐるぐる巻にする。


「ぐぉぉぉぉぉ!」

「焼けただれるようである!」

「痛い!痛い!痛い!」

「我に!この我に痛みなど!」

「うにゃぁぁぁぁ!」


 一匹変なのが混じっている。これはまさか……


「これが剣を持っているヤツ!」


 私は変な声を上げた一匹を、銀の鎖で引き上げる。これ、剣のことを言ったときに『ポギャ』って、鳴いなやつだよね。


「ほら、剣出して。剣」


 茨の毒に苦しみ悶えているヘビの頭に、空になったジョッキでバシバシと叩く。


「頭の一つが骨まで溶ける前に、剣を出したほうがいいよ。さっさと出したほうがいいよ」

「これ、どっちを討伐すべきか迷うところだよな」

「こういう悪どいことは、嬉々として得意ですよね」


 ファルと神父様。外野なら外野らしく、黙っていてよね。


「アマテラスはおっかねぇからな、触らぬ神に祟りなしっていうやつだ」

「躾には最初が肝心ですよね。わかりますよ」


 茨木。何を躾したのか聞いていいかな?それとも聞かないほうがいいのかな?


 プルプル震えていながら、銀の鎖でボンレスハムになっているヘビを見上げる。

 そして、ルディのほうに視線を向けた。


「取り敢えず、一匹ずつぶん殴っておく?それとも闇で浸食してみる?」

「そうだな」


 ルディは私の隣に立ち、黒い異形を見下している。それも何故か背景が歪んでいる。

 どこに魔王様のご機嫌を損ねることがあったのだろうか。


 徐々に、横にズレて離れて行こうとしたけど、捕まってしまった。何を怒っているのかさっぱりわからない魔王様に。

 だから、そういうことをやめて欲しいと言ったんだよ。


「あの姿は、アンジュを真似ていたのか」


 ん?

 いや、真似ていたというより、可愛らしい女の子の姿をして、相手の油断を誘おうとしていただけだと思う。


「アンジュはあんなにブサイクではない。このクズが!」

「そっち!」


 普通に可愛らしい美少女だったと思うけど?


 沈んだ地面から闇が沸き立っている。

 なにこれ?常闇なの?


「再び暗く寒い世界に沈むか?それとも日が当たる世界を望むか?」


 徐々に黒い地面に沈み込んでいるツチノコもどきが悲鳴を上げている。


「いやじゃ〜!」

「根の国はおぞましいところぞ!」

「あそこは寒くて嫌である!」

「ぎゃぁぁぁぁ!」

「ぷぉぉぉぉぉ!」


 何故に一匹だけ個性的な鳴き声なのだろう?


「わかったのである。黄泉の王に従うでのある」


 身体が半分沈んだところで、ヘビの一体が白旗を振った。よほど常闇の中は恐ろしいところだったらしい。


 っていうか。ルディが普通に常闇を操っている。これはある意味最強かもしれない。


 そして世界に浸食していた常闇は、存在していなかったかのように、何も痕跡もなく綺麗に無くなっている。


 ……この能力があれば、聖女はいらなくない?



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