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聖痕の聖騎士〜溺愛?狂愛?私に結婚以外の選択肢はありますか?〜  作者: 白雲八鈴


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470 やり直し

「ただ俺は家族というものがわからないが、アンジュがいたキルクスの教会が家族だったというなら、それはとても幸せだと思った」


 ……シスターたちのことは家族と言ったものの、あれはいわゆる軍人の教育機関だ。

 あの殺伐さを幸せというのは、違う気がする。


 しかし、私はルディがそれまで、どのように過ごしてきたかは知らない。だから、あのような場所で過ごしたことが、楽しかったというのは、私が否定することじゃない。


「いや、アンジュがいたから、幸せだった」


 ……重すぎる。重すぎるよ。


「だから俺はどのような場所でも、立場でもアンジュがいてくれたら、幸せなのだと思う」


 わかっている。これはルディの本当の気持ちを言葉にしているのだと思う。

 しかし。しかしだ。

 何故に私一択みたいになっているわけ?


「だから、これからも共にいてくれないか?」


 私は一度受け入れると決めたから、『ノー』とは言わない。

 だけど。だけども……この重すぎる言葉を受けいれられるかと言えば、このまま逃げ出したい気分にかられている。


 これを言われて『これからもよろしく』と言える神経は私にはない。

 ファル。これを私に言えってことだったの?


 流石にここまで言われたら、普通は引くよね?


「……」

「……」


 無言の時間に比例して徐々に威圧が増えていく。これは私に返答しろということなのだろう。

 ルディの言葉を受け入れると、歴代の聖女と同じように隔離生活になる可能性もある。

 今も若干その気配が見え隠れしているので、なくなりはしないだろう。


 うっ……ルディの背景が歪んでみえるようになってきた。


「はぁ。それってルディの要望だよね?」


 そう、私のことはなにも考慮されていない。


「それじゃ、私を抜いた世界で、何が大切だと思う?」

「ない」


 はっきりと言ってくれる。それじゃ、困るんだよ。


「私は美味しいものが食べたい。いろんなところに行って食材を探したい。お金もうけになりそうなものを探したい。珍しいものを探しに町を出歩きたい。自由に世界中を巡りたい。私が大切というなら、私の願いを叶えてくれる?」

「……」

「ほら、だんまり。ルディが言ったことはこういうこと。全てを受け入れられるものじゃない」


 私もわかっている。聖女と名乗らなくても、すでに聖女として動いてしまっている。

 私が聖騎士として選んだ者たちがいる。


 だから、私が動くと彼らも動くことになる。そして、私が居場所を与えると言った、酒吞と茨木もついてくるだろう。


 流石に身勝手な行動はできないとわかっている。


「はい。やり直し」

「ぶはっ!ここまで言わせてやり直しって……」


 そこにファルの馬鹿笑いが聞こえてきた。

 いや、やり直しさせるよね。流石にあんな重い言葉は受け入れられない。


 せめて私一択のような言葉はやめてほしい。


 それから、隠れて見ているのなら、最後まで隠れていてよね。馬鹿笑いが響き渡っているけど?


 私はルディの手を払って、左手でもった皿から焼菓子をとって食べる。


 そして、もう一つとって私の目の前に焼き菓子を掲げた。


「理想論は抜きにして、現実的な話をしよう。私は聖女はイヤだけど、必要なことはしている。嫌なのは貴族どもに掲げられることだからね」


 何かと率先して首を突っ込んでいたのは、聖騎士として叩き込まれたというのもあるけど、歴史に刻まれた聖女の話を聞いていたからだ。


 彼女たちは率先して前線に立っていたと。

 だったら、頭上に光を掲げる者としてやるべきことは、やらないといけないと思った。


「ルディは、私が隣に必要だと思った理由はなに?」

「好きだから」

「『simple is the best』」

「なにって言った?」


 私は答えず笑みを浮かべて焼き菓子を食べる。


「私は美味しい食べ物が好きだから、美味しいものを探して食べる。答えはというものは簡単というもの」


 そして先程まで笑い声が聞こえていた方を指す。


「ルディは私以外大事なものは無いと言ったけど、ファル様も好きだよね?王様も好き。神父様は好きというよりも尊敬している人かな?」


 困惑したような表情をしているルディを見上げる。私がこんなことを言うとは思っていなかったのだろう。


「キルクスで過ごした中で、ヒュー様やアスト様と仲良くなったし、第四部隊長さんや第九副部隊長さんとかいろんな人と、色々話をすることもあったよね?ルディにとってキルクスは共に戦う人を得た場所だと私は思っている」


 そう、戦友を得た場所だ。だって今の現状を見ればわかるじゃない。


「この聖騎士団で、ルディと共にキルクスで過ごした人たちはどれほどいる?その人達はルディの言葉を聞いてくれる人だってわかっている?心強い仲間だよね?」


 私だけじゃない。ルディを。今のルディに影響を与えた人たちは多いのだ。


「だから、やり直し」


 すると、私はルディに抱きかかえられてしまった。

 何故に?もう少しでお皿を落としそうになったのだけど?


「そうやってアンジュは俺に光を与えてくれる。だから手放したくない。だから誰の手にも渡したくない。俺だけの太陽(ソール)でいて欲しい」


 ルディ。やり直しって言ったのは聞こえていたかな?



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