459 天意は示された
「レクトフェールか?」
「レクトフェールだろうな」
ファルとルディから、知らない人の名前が出てきた。レクトって誰?
「アンジュちゃんの突拍子もないことに対応できるって言えば、そうなるわね」
リザ姉も同意している。それも相手は私のことを知っているということは、キルクス出身者ということになる。
全くその何覚えがない。あまり関わりがある人ではなかったのだろう。
貴族となると私は避けられていたからね。
そう、特にルディと同期の人たちは、ぶっ飛ばし事件があってから、私を見かけると姿を隠すように逃げることが多かったから。
「取り敢えず、連絡を取ってみなさい。転移となると移動のためのワイバーンはここに置いていくことになります。現地に行くまでの騎獣を用意するように事前に言っておくことも大事ですよ」
確かに転移だと大きなワイバーンまでは難しいだろう。それも人数分となると、余計にだ。
それを補うために、移動手段の騎獣は必要不可欠になってくる。いきなり行って、騎獣を貸せというのは、あまりにも横暴になってしまう。根回しは大切だよね。
すると、私を捕獲しているルディが背後で動いた。これはルディが連絡を取るということなのだろう。
以前はこのような連絡はファルがやっていたのに……まさか、そのレクトという人と仲が悪いとか?
そうだよね。ファルって口が悪いよね。自称公爵だものね。
「何か言いたいことがあるのか?アンジュ」
「別に」
ジト目で見ていたら、逆にファルからジト目で見返されてしまった。
「こちら第十三部隊長シュレインだ。第十一部隊長レクトフェール、応答を願う」
ん?第十一部隊長?
あれ?これって確か……。
『こちら第十一部隊長レクトフェールです。先に言っておきますが、あなた達が来る頃には我々は撤退していますので、あとは好きなように暴れてもらっていいです』
カランっ。私が持っていたスプーンが床に落ちる音が響く。
怖くて味気ないスープから目が離せない。
横目でちらりとロゼとリザ姉を窺い見ると、二人も俯いて頭を上げられないようだった。
撤退?ここで撤退という言葉がでてくるの?
そんな言葉を口にできるの?
「何故だ」
『何故と言われましてもね。ハッキリ言ってお手上げ状態だからですね。食料の確保もままならなくなりましたので、全隊員を連れて、王都へ引き上げますよ。これは上の了承は得ていますから』
え?団長の?それとも侍従の?
でも、神父様崇拝者の団長が撤退を了承するとおもわないし、お兄ちゃん大好きの侍従も了承するとは思えない。
え?私の知らない副団長とか?
ふと気になって視線を上げると、神父様は空間断絶の結界を張っていた。その中で首元から金色のタグを出して誰かと話している。怖い。これ絶対に怒っている。
相手の人は誰か知らないけど、ご愁傷さま。
しかし口元を読み解くと、食料調達云々とか、定期的に降る雨の状況を話しているみたい……あっ!最後に、第十一部隊に出した撤退を命令の撤回を言っている。
「レクトフェール第十一部隊長。第十一部隊にその撤退する権利があると思っているのか?」
『ええ、ありますよ。あなた達はまだ知らないでしょうが、天意はこれから示されるのです』
やっぱりそうだ。
でも、ここで第十一部隊が撤退というのはできない。そう、できないのだ。
「天意ですか?それは何モノの意志を指しているのでしょうか?」
すぐ近くで神父様の声が聞こえて、思わずビクッと肩が揺れてしまった。さっきまで向かい側の席にいたじゃない。
神父様はルディが通信している銀色のタグに向かって話しかけた。すると、そのタグから、何かが落ちてヒックリ返ったような音が鳴り響いてくる。
たぶんクセで勢いよく立ち上がって、椅子を後ろに倒してしまったのかもしれない。
『リュミエール神父』
「レクトフェール。勘違いしてはなりませんよ。天意がどう示されようが、聖騎士のあり方が変わるものではありません」
そして、神父様は私の方をちらりと見てきた。
私は何も悪いことはしていないよ。
このスープが美味しくないと内心思っているけど、作ろうとはしていない。
「そんなことがわからない者たちにはお仕置きが必要ですね。アンジュ。追撃型の天の矢がありましたよね?」
「あるけど?それがどうしたの?」
それはどこに逃げても追いかけていくお仕置きの矢なのだけど、知らない相手を追撃することはできないよ。
「嫌だわ。アレはどこまでもついてくるもの」
「リュミエール神父。それお仕置きじゃなくて嫌がらせの方です」
『アンジュ!あの強欲な無神論者がそこにいるのですか』
え?私は別に神という存在の否定はしていないよ。八百万の神々がいる国で生きた記憶を持っているからね。
まぁ、ここに来て神をボコっているけれど……。
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