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454 食料の高騰

「高かったわ」

「パンなんて、いつもの倍していたのだけど?高すぎ」


 町の方に買い出しに言っていたリザ姉とロゼが戻ってきた。


 やはり、龍神の女将さんと玄武の雪の影響が出ているらしい。そして物価の高騰が始まっていると。


「こればかりは領主の采配ですからね。こちらが口を出すことではありません」


 神父様は仕方がないという風に答える。でも、これだと冬を越せない人も出てくるんじゃないのかな。

 やはり早急に解決することが求められる。


「ワインなんて三倍。これは一般人は買えないよ」


 そしてロゼはワインの瓶を酒吞に渡す。

 ずっと酒が飲みたいと言っていたから鬱陶しいかったのだろう。


「おぅ!ぶどう酒か!」


 それを当然のように受け取る酒吞。

 すでに赤い毛並みのクマの解体は終わっており、串刺しした肉を直火で焼いているところだ。


「野菜も売っていなかったわ。あってもいたんだ冬野菜。高くて売れなかったというものね」

「王都じゃここまで酷くなかったのに」


 王都は、王都の民を養っていく分を何処からか調達しているのだと思う。

 王都で暴動とか起こると対処に厳しいだろうからね。


 そう言いながらも、新鮮な野菜を私に差し出してくれるリザ姉。


「アンジュちゃんの言ったとおり、裏通りというところかしら?そこでは売っていたわ」


 いわゆる闇市だ。そういうのは、キルクスにもあった。不正規ルートで物を取引きする市場。

 ただ、正規の値段じゃないのでぼったくり覚悟で買わないといけない。


「ありがとう。やっぱり野菜も食べないとね」


 硬い肉ばかりでは嫌になる。神父様考案の塩スープに乾燥した野菜でもいいのだけど、ビタミンCは必要だ。

 そして、ファルは野菜は出してくれなかった。

 たぶん種の豆類や木の実は出せるのだろう。しかし、果実や野菜となると、緑の手を持つ女性がやっていたように、植物の成長過程を行わないといけないことがわかった。

 使えない。


 私はワイバーンにくくりつけてあった鍋を手にして、火の側までいく。本当は今まで使っていた鍋を持ってきたのだけど、天神の雨の所為で溶けて無くなってしまったのだ。


 本当に天神、許せない。



「それで、やっぱり雨が止みそうにないから、防水加工……水を弾くようにするついでに、防御特化の魔術をかけることになったんだよ」


 今までいなかったリザ姉とロゼに説明しながら、干し肉と野菜のスープをつくる。え?クマの肉を使わないのかって?

 ちょっと私には臭うかな?下処理が必要と思ったから止めたのだ。


「え?なんか酷いことになりそうだから……遠慮したいな」

「ロゼ。ヴァルト様にはしているよ。隊長がしているのに、部下のロゼがしないって駄目だよね?」

「隊長はアンジュの魔術の酷さを知らないから受け入れられたんだよ」


 私の魔術が酷いってどういうこと?


将校(オフィシエ)ロゼ。防具がない状況で戦うのです。だからと言って一人だけ後方支援とかいうのは許されませんよ」

「はい!ネズミで索敵。私とリザネイエ副部隊長とで雑魚は排除します」


 ロゼ。それは水の神と戦いたくないと言っているよね?


「もう一度聖騎士とはと、尋ねなければなりませんか?」

「リュミエール神父。神だろうがなんだろうが戦います!」


 神父様がいるんだから、何を言われるかわかっているよね?ロゼは馬鹿だなぁ。


 でも、それはありかも?


「ロゼのネズミ。あれ便利だよね。どこに『けいもう』っていうのが、いるのかわかるんじゃない?」

「え?私はそもそもそれが、何なのか知らないけど」


 言われてみればそうだ。私も知らないよ。


 やはり、作戦は臨機応変が一番いいような気がしてきた。


「取り敢えず、食事にしよう。第十一部隊がいるところでは、もっと食料が枯渇しているかもしれないし、食べれるときにたべないと」


 北は雪が降り積もるというのは聞いたことがある。まだ王都に近いところでこの状況だ。

 更に北に行ってもこれより良くなっているとは思えない。


 腹が減っては戦は出来ぬ。昔の人は偉い。





「これは……流石におかしいと思ってきたな」


 ファルは青く晴れた空を見ながら言う。

 食事をとって出発しようかというところだ。


 神父様の結界を伝う雨の量が滝のようになっている。


 食事を作っている途中で雨の勢いがましてきたので、神父様にお願いして結界を張ってもらったのだ。


 この冬場に雪ではなく雨。いや、凍え死ぬような寒さではないので、まだ雨になる気温なのかもしれない。


 にしては青い空から滝のように降る雨が異常だ。


「これだとワイバーンの飛行にも影響が出る勢いだ」


 ルディが言うように、空を自由に飛ぶワイバーンでもこの雨は流石に飛ぶのを躊躇しているのか、大きなワイバーンが身を寄せて固まっていた。


 しかし私達にはチートな神父様がいる。何も問題はない。


「流石に、この雨の飛行は見送るべきですね」


 え?そうなの?


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