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聖痕の聖騎士〜溺愛?狂愛?私に結婚以外の選択肢はありますか?〜  作者: 白雲八鈴


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438 闇に浮かぶ太陽

「闇の聖痕は、忌避されていましたからね。詳しくは記録に残っていないというのが、答えです。ただ……」


 ただ?


「空間に干渉できるという能力は、世界の裏側にある常闇を表に出すことが可能だと推測もできますね」


 神父様は否定もしないけど、肯定もしなかった。可能性があるとだけを言葉にする。


 だけど、私の推察はここは常闇の中だ。だったら私のすべきことは決まっている。


「神父様。ファル様。私の意見はここは常闇の中。だからさっさとルディと合流して、常闇を封じる」


 天神もろともだ。


太陽(ソール)の聖女の仰せのままに」


 神父様が身をかがめて、敬礼を私にしてきた。

 うっ……神父様から敬礼されると拒否反応が出てきてしまう。

 そして、身をかがめたことで神父様の表情が光に浮かび上がった。


 楽しそうな笑みを浮かべないで欲しいなぁ。


「そうと決まれば!」


 ファルの腕を掴む。そして、手を伸ばして神父様の腕も掴んだ。


「おい……アンジュ!何を」

「神父様、結界を!このまま飛ぶ!」

「ちょっと待て!嫌な予感しかしないぞ!」

「飛ぶのですか。まぁその方が最短でしょう」


 ファルは私が何をしようとしているのかわからないみたいだけど、神父様は理解してくれたらしい。


「ちょっと待て!アンジュ!もしかしてダンジョンのときと同じか!」


 床から足が離れ、無重力状態になったことで慌てだしたファル。


「私から離れると、ぐちゃぐちゃのミンチになっても知らないよ」

「恐ろしいことを言うな!」


 はっきり言って、これは賭けだ。施行者は私だ。私一人なら大丈夫なことは確認できている。

 だけど今回は三人。


 だから神父様の結界で空間ごと移動するようにする。


「アンジュ!腕輪に魔力を通しているってことは……俺を置いて行け!」


 もう遅いよ。ファル。


「『転移!』」


 私達は暗闇の中、激しい戦闘が繰り広げられている場所に転移をしたのだった。




 暗闇に走る閃光。大きな物が瓦解する音。結界越しにでも感じる膨大な魔力の嵐。


 戦闘区域の転移は危険だと予想したため、転移軸を意図的にズラしてみた。


 その結果、戦闘区域よりも上空に転移をしたみたい。


「転移場所を意図的に変更できて良かった」


 腕輪の力に引っ張られるまま転移していたら、絶対に結界から外に出られなかったと思う。


「何が良かっただ!その腕輪、複数人を転移させる物じゃないだろうが!」

「ファル様。緊急事態なので、文句は暴走しているルディに言ってよね。取り敢えず、光る木でも出してよ」

「そんなもの存在するか!木が光ってみえるのは大抵が虫だ」

「フュメーリアという木の葉が発光しますね」

「リュミエール神父ほど俺は博識じゃないです」


 別にヒカリゴケを地面にと思われる場所に生やしてくれてもいいのだけど……あれ?ここって天地が逆になっているよね。

 これって、常闇を閉じるのに、どこに向って落とし込めばいいのだろう?


 いや、ルディの暴走を止めるのが先か。


「ファル様ならやればできるよ。まぁ、それは冗談で……」

「おい!」

「私はルディをぶん殴ってくるから、神父様は天神の相手をして欲しいな。ファル様は私がルディをぶん殴った後、回復薬を飲ませておいて」


 流石にヴァルト様一人で天神の相手をするのはキツイだろうから。


「アンジュ。俺よりもアンジュがシュレインの側にいろ」

「私はやることがある。この状況で最優先しなければならないことぐらい、ファル様はわかるよね」

「言われなくてもわかっているが、後でシュレインに何があっても、俺の所為にするなよ」


 しないよ。そんなこと。


 聖騎士ならば、敵に背を向けることはならず、どれ程の仲間を失おうとも、引き下がることは許されない。

 なぜなら、聖騎士の背後には民の姿があるからだ。


「それじゃ行こうか。神父様、結界を解いて」

太陽(ソール)の聖女の仰せの通りに」

「それ、止めて欲しいです……っ!」


 神父様が結界を解いたために、暴風の中に放り出されたように風に煽られた。それもただの風ではない。

 神気と魔力のぶつかって出来た風だ。


「私の能力も解除するから、あとは自力で着地してね」

「それは聞いてないぞ!俺を殺す気か〜ってマジで解除しやがった!」


 いや、だから光る木でも出してって言ったのに。

 それならファルだけは木の上に置いていくことも出来たのにね。


 私が放つ光から暗闇に消えていったファルと神父様。私はただ一人暗闇の中に佇む。


 私は両手を前に突き出した。


「『光炎万丈(フランティース)』」


 光輝く炎が上空に広がる。炎は高く燃え盛り、闇を照らす光となる。


 そう、空高く輝く太陽のようにこの場を明るく照らした。

 しかし、そう保つものではない。ここは常闇。闇が支配する世界。強いて言うなれば、宇宙の闇に浮かぶ太陽。


 別に世界を照らす必要はない。

 こちらに気を引かせればいい。


 そして私は腕輪の力を使って転移をしたのだった。




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