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聖痕の聖騎士〜溺愛?狂愛?私に結婚以外の選択肢はありますか?〜  作者: 白雲八鈴


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429 ロゼの聖痕

「つい二年前まで対アンジュ作戦を練ってきたのだからね!幻術ぐらいの対応策ぐらいある!」


 ロゼは何か気に食わなかったのか、私にそう言って、神父様が張った結界の外に出てしまった。

 あと、私対策って何かな?


将校(オフィシエ)ロゼ!」

「幻影が実体化しようが、要は術者を狙えばいいってこと」


 リザ姉が引き止めるのを無視してロゼは言葉を放つ。


「『エレ・クヮドラ・シルールレーラ!』」


 ん?おかしな言葉だ。『我は求むシルール解放』

 シルールという言葉は意味がない音の言葉だ。いや、私が知らないだけかな?


 緑の蛇に回復薬をぶっかけながら、リザ姉を見る。するとリザ姉には珍しく引きつった笑みを浮かべていた。


 どうしたのだろう?


 ロゼを再び視界に収めると、ロゼの影が盛り上がっているような気がする……気の所為じゃない。ボコボコと影が気泡が湧き出るように盛り上がっている。

 そしてそれが徐々に横に広がって行っていた。


 その間に廊下の天井に頭がつきそうなほど大きなおっさんが顕れている。弥生時代の服……なんていう名前だったかなぁ。白っぽい服び、腰を紐で留めるのはわかるのだけど、謎に腕とか膝のところを紐で縛っている。

 そんな神話に出てきそうな服をまとったおっさんは、黒髪にどこからが髭なのかわからない厳つい顔つきをしていた。


 そのおっさんが腰にある剣を抜こうとしたところで、悲鳴が上がる。


『きゃぁぁぁぁ!ねずみ――――!!』


 ねずみ?

 悲鳴が聞こえた方に視線を向けると、ねずみまみれになっている紅梅と黄梅がいた。

 正確には森の掃除屋と言われる雑食の魔鼠だ。灰色の手のひらほどの大きさだけど、鋭い牙で死肉に食らいつき、鞭のような強靭な尾で攻撃してくるのだ。


「え?なにこれ?」


 意味がわからなさ過ぎて、念話を使うのを忘れて話してしまう。


「(はぁ、ロゼの聖痕の力よ)」


 リザ姉が凄く嫌そうな顔をして教えてくれた。

 ロゼの聖痕って魔鼠だったの?え?これってあり?生き物を生み出すってこと?

 それも足の踏み場もないぐらいにみっちりと魔鼠がいるのだ。


 それも気になるけど、術者が動揺したことで、スサノオっぽいおっさんの姿が消えいた。

 紅梅と黄梅は、身体にまとわりついている灰色の魔鼠を取り払おうとわたわたしている。


 これはしてやられるとパニックになるだろう。

 私はその隙を使って、動き出す。


 神父様の結界を通り抜けて、重力の聖痕をつかって跳躍した。そして、右手に氷の剣を出現させ、まずは黄梅の首を狙う。


『黒龍の主よ!そのモノたちは!』


 私が氷剣を引いて首を切ろうとするのと、緑の蛇の叫び声が響き渡った。


『本体ではありませぬ!』

「それを先に言ってよ!」


 私は氷剣を振り切りながら叫ぶ。

 切った感覚がまったくない氷剣を消し去り、黄梅がいた場所を見ると、灰色の魔鼠共が落下しているところだった。


 先程いたモノも実体化した幻影だったと?


『バレてしもうた』


 紅梅はクスクスと笑いながら、魔鼠にまみれた姿を消し去った。


「本体はどこ!」

『庭に』


 庭?ここは建物の中なのだけど!

近くの引き戸を思いっきり開く。


 そこは二十帖はありそうな板間が二間続きになった空間だ。その先には簾で仕切られ、縁側に続き濡れ縁があり、玉砂利の庭が続いていた。


「アンジュ!」


 私はその部屋に入ろうとしたけど……激怒の魔王様の声が聞こえたので、踏みとどまる。


「(ロゼ。その便利そうな魔鼠を一匹、部屋の中に入れてみて)」

「(はぁ。アンジュもこれを見て、驚くかと思ったのに、全然平気どころか利用しようとするなんて……)」


 いや。私対策でこの魔鼠の量だと、使い道はなんとなくわかってしまった。ロゼが敵に回ると私の行動がよく阻害されるなと思ったことがあったのだよ。

 まぁ、私は力のゴリ押しで振り切ったけどね。


「(偵察。情報収集。仕掛けの確認だよね。その数で情報収集されると、された側はたまったものじゃないよね)」


 私の念話の言葉に項垂れるロゼ。さっきの勢いはどこに行ってしまったのか。


 そして、一匹の魔鼠が部屋に入った瞬間に消えた。この感じだと別の空間に連れて行かれたようだ。

 これは部屋に侵入していたら、バラバラの場所に連れて行かれていた可能性があった。

 うん、足を止めておいて良かったよ。


「『風刃(ヴィンルート)』」


 私が出した風の刃は板間の部屋を通り抜け、上から仕切りと言わんばかりの簾を切り落としていった。


 これは床に何か仕掛けがあると言うことだね。


「(ねぇ、ロゼ)」

「(嫌な予感がするから聞きたくない)」


 私は宙に浮いたままロゼのところまで行って、両肩を掴んだ。そして耳を塞いでいるロゼに向かって念話で話す。


「(聖痕ってことは無尽蔵に魔鼠を出せるよね?)」


 念話だと、耳を塞いでも意味がないからね。


「(出せないから)」

「(言い方を変えるよ。二年前の西の森全体を使っての訓練のとき、ピンポイントで私の場所を狙ってきていたのって、ロゼよね。あんな広い森を網羅できるほど出せるってことだよね?)」


 絶対に見つけられないと思っていたらピンポイントで攻撃さてた。西の森って広いから隠れるところはいっぱいあるんだよ。そこを探り当てられるほどの敵策力。


「(ロゼはやればできる子だよ?だから、出せるよね?)」


 私と同じロゼのピンクの目を覗き見て、聞いたのだった。


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