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聖痕の聖騎士〜溺愛?狂愛?私に結婚以外の選択肢はありますか?〜  作者: 白雲八鈴


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419 結界じゃない?

 昼食をとってから、再びワイバーンで空を飛ぶ。私は黒い甲冑に捕獲されながらワイバーンに乗っていた。


 もう、海か湖か確認したから飛び降りないよ……たぶん。


 遠くの方には山が見え、葉が落ちた木や冬でも青々と茂っている木々が立ち並んでいるのが見える。だが、他に何かの姿が確認できるかといえば、水しかない。


 水の中に何か生物がいるかと言えば、透き通った水が越しに、本来の地面が見える。生物が住めない水だ。


 そして常闇の発生源も見られない。大きな常闇があれば、その一帯が黒いモヤに覆われているので、遠くからでも見えるはず。


 そもそも龍神と巨大な玄武が通ってきた穴が見当たらない自体がおかしい。特に玄武。人が蟻かと言わんばかりの大きさだった。


 普通なら上空から一目瞭然のはず。なぜ、存在しないのか。


「アマテラス!境界があるぞ!」


 酒吞がある方向を指していった。相変わらずワイバーンの上で仁王立ちだけど。


「境界って何の?」


 すると茨木がワイバーンを操縦して近くまで寄ってきた。


「力あるものは闇に紛れずとも、己で領域を作ってその内側に住まうのです」

「結界ってこと?」

「術者のような結界ではありませんが、そういうものですね」


 何が違うのだろう?


「結界じゃない?」

「結界は侵入者を拒みますが、あやかしは招き入れて外に出すことを拒みます」


 ふーん。これは行方不明者がいる原因と言っていい。

 領域を作るほど強い異形であり、酒吞の低い笑い声が聞こえてくるほどの強者がいるようだ。


「知り合い?」

「恐らくは……というぐらいでしょうか?ただ……」

「ただ?」

「力技でどうこうなるか」


 ……いったい何が隠れ潜んでいるの!


「どうする?茨木がいうには入ると敵を倒すまで出られないみたいだよ」


 今回指揮をとっているのはルディだ。どう動くか確認をとる。


「引くという選択肢はないのだろう?」


 ……それは私が団長(コマンドール)に言ったことを揶揄っている?

 しかし、何か準備が必要かと言われても現状では何もできない。ならば、まだ日が昇っている内に対処したほうがいい。夜戦は前回のことで思ったけど、視界の確保が重要だ。


 だからこのまま行くしかない。


「そうだね」

「だったら……『北に進路変更!敵のテリトリーに入り次第散開!』」


 ルディは『響声(レトノ)』を使って、周りに命令した。散開を指示したのは固まっているとそこに攻撃を当たてられたら全滅だからね。


「「「了解!」」」


 そうして進路を酒吞が指し示した北に方向転換した。だけど、私には酒吞の言っている境界というのがわからない。どこから、敵のテリトリーに入るのか。入った瞬間はわかるものなのか。神経を研ぎ澄ませ、辺りに注意を払う。



 その時、身体が浮いた。いや、重力が上にかかっている。


「『重力反転!(ヴァリティキルク)』」


 上空を飛んでいるワイバーンに重力を元の方向からかかるように重力聖痕を使う。これは空を飛んでいる者たちからすれば、理解ができず、バランスを崩し落ちるしかない。そう、突然上に引っ張られたら、支えが手綱しかない騎士(シュヴァリエ)たちは、身体がワイバーンから離れ、空に落ちるしかない。


 そして今、重力がかかっている上空を見ると……


「お屋敷?」


 なんだか時代劇にでも出てきそうな敷地が広い場所にある平屋の家が建ち並んでいる。


 逆に下を見ると青い水が漂っている。まるで水でできた空だ。


「変わったところに入ってしまいましたね」


 神父様がいつの間にか近くに来ていた。


「リュミエール神父。私は散開と命じましたが?」

「おや?アンジュのお陰で命拾いしたと思ったのですけどね。アンジュ。この力の範囲はどの程度ですか?離れていても持続可能ですか?」


 重力の聖痕のことだろうか。

 できれば、近くの方が私の負担が少なくていいのだけど?


「ダンジョンのときのように上限が制限されたのならキツいけど、できないこともない。でも、敵は上にいるから、ワイバーンを反転させて降下したほうがいいと思う」

「上空?」

「あれは金色の雲じゃなかったのか?」


 金色の雲……ああ言われてみればそうか。私の中では古い絵巻にモコモコと描かれている金色の雲の奥にある屋敷が見えたから、金色の雲は背景としか思っていなかったよ。


「金色の雲の奥に建物がある。あそこ」


 私は上を指しながら言った。誰の屋敷かはわからないけど、金持ちなんだろうなって……妖怪があんな家に住むのだろうか。


 玉藻だと言うのであれば、百歩譲って納得できるけど、玉藻は王都の貴族の令嬢に扮しているので違う。


 だったら、何があそこにいる?


 私が上空の屋敷を見ながら考えていると、突然稲光が辺りを走った。


「きゃ!」

「っ!」


 その稲光の直撃をリゼ姉とロゼが受ける。やばかった、重力の聖痕を使っていなければ、ワイバーンごと上空に落ちてしまうところだった。


「ヴァルト様!回復薬を!」


 リザ姉の近くにいた第十二部隊長さんに治療をお願いする。世界の反転に雷っていったいこの上の屋敷には何がいるの?



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