412 暗闇を照らす光輝の聖騎士
「うん。私にわかればいいのだけどね。わからないこともあるからね」
私は全てを知っているわけではなくて、状況的に判断しているだけで、それは現地にいる人の方が判断しやすいと思うのだよ。
だから、よっぽどのことではない限り頼ってほしくないなぁ。間違っていても責任取れないし。
「はい、それはギルバートの報告内容が悪いということになりますので、わからないことを確認していただければと思います」
いや、そういうことじゃないのだけど。
「それから私はただの将校なので、ヴァルト様から頭を下げられるのを、誰かに見られると困るので止めてくださいね」
「承知いたしました」
そう言って深々と頭を下げる第十二部隊長さん。わかってくれていない。
「それでは今から、ダラニースエル地方に向かえば夕刻につくことになる。報告では昼夜問わず海が出現しているようだが、船団の出現に規則性はないらしい」
そして、ルディが仕切るように話しだした。いつもは神父様が仕切るのだけど、きてくれないというのは仕方がない……あれ?夕刻?
「夕刻なの?もっと早くつきそうなのに?」
私は疑問を口にする。
おかしいなぁ。国境沿いだけど別のところではもっと早くついた気がする。
「リュミエール神父が参加しないから仕方がない」
はっ!チート神父様がいないことがここにも影響していた。確か、ワイバーンの飛行高度を上げることによって到着時間を早められるのだけど、上空過ぎてチート結界がないから無理って話か!
「神父様。やっぱりついてきてよ。神父様がいない影響が酷い」
神父様のところに行って、ニコニコと胡散臭い笑顔を浮かべている神父様の両手を取る。
チート神父様の離脱は影響が大きすぎる。
はっ!存在したかもしれないキルクス壊滅時に神父様がいなくなった影響と同じ。神父様一人で戦況が大きく動くのだ。
「困りましたね。王都の守りも必要なのですけどねぇ」
神父様が珍しく困った顔をしている。これは、このまま押せば、いけるかもしれない。
「わかったよ。今から直ぐに強力な守り石を作るから、それを王都の周りにある外壁に置けばいいよ」
「それは内側の敵には無意味ですよね」
「王様は空から隕石が降ってきても、一人生き残れる守り石があるから大丈夫だよ」
「アンジュ!リュミエール神父は王都の守護に回ると決められたのだ」
ルディに神父様の説得を邪魔されてしまった。押せばいけたと思うのに!
って黒い甲冑で捕獲しないでよ。なんだか、今から何処かに連行されそうな気分になる。
くっ!こうなったら!
私はくるりと身体をねじって、ルディの腕の上へと逃れる。そしてそのまま重力の聖痕を使って飛んで、神父様の前で空中に留まった。
「私の聖騎士というなら、私の行く先に随行すべきではないの?暗闇を眩く照らす光輝の聖騎士」
聖女を守るのが聖騎士の役目だと私達に教えたのは神父様だ。その神父様が来ないってどういうことなの!
「熱っ!」
怒っている所為か右目の聖痕が熱を持ち出した。あまりにもの熱さに、外に出す。すると頭上の聖痕から火の粉が……え?これはもしかして。
神父様の右手を見ると手袋が焦げている!まさか!
「もしかして神父様も聖痕が焼き付いた?」
「おや?」
そういって神父様は右手の手袋を外した。するとそこには太陽の聖痕を模した跡がついてしまっている。
「これは、これは、聖女様からのご命令とあらば、私も行かねばなりませんねぇ。マリア。後のことを頼めますか?」
「また、私に面倒なことを押し付けようとしているのですか?リュミエール神父」
「違いますよ。聖騎士のクセに聖女の護衛をしないとは怠慢が過ぎると言われてしまえば、仕方がありません」
「いや、そんなことは言っていないし」
神父様が斜めに意訳して解釈したのを否定する。私は普通に聖騎士なら聖女とともに行動をするべきだと言っただけで、怠慢だなんて一言も言ってはいない。
「アーンージュー!」
はっ!黒い甲冑から怪しいオーラが立ち上っているような錯覚が見える。
「簡単には名付けられないと言って、リュミエール神父には付けているじゃないか!」
「シュレイン。日頃の行いですよ」
神父様はルディに見せつけるように右手の甲に付けられた太陽の聖痕の後を見せる。
止めてよ神父様。それ絶対にワザとだよね。
「ときにアンジュ。光輝とはどういう意味ですか?」
「え?光り輝くとか、栄光とかそんな感じ」
「そのように、太陽の聖女様に思って頂いているとは光栄の至りです」
そう言って、神父様は空中に浮かぶ私に向かって敬礼をしたのだった。その敬礼をされた私の目が死んでいたことは付け加えておく。
まさか、こうも簡単に聖痕の焼付き現象が起こるとは……これはルディに名を与えないと、今度は空間から何かが出てくるかもしれない。
いつも読んでいただきありがとうございます。
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【最凶の鬼を使役するJKって、美味しいですか?】
今回は異世界ではなく現代なのですが、現代感があまり無いないです。
鬼と陰陽師の話になります。しかし、その関係は少しおかしい。そんな二人の話です。
(あらすじ)
依頼を受けて一週間。怪奇現象を解決してほしいという依頼をとある高校から受けて、私、鬼頭真白は原因を探して追い詰めた。
しかし私の役目は術を使って罠を張りめぐらし結界で閉じ込めること。とどめを刺すための式神がいない!
もうどこに行ったのよ!
陰陽師を生業とする者たちが集まる山奥の集落。そこには陰陽庁が存在し、全国各地で起こる怪奇現象の解決に奔走しいた。
そんな陰陽師を育てる学校に通う鬼頭真白と式神という名の鬼頭との変わった関係の物語である。
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