411 やばいシンデレラストーリールート解禁の兆しだ
「アンジュが言っていることはある意味正論だ」
夕食を私の部屋に食べに来るファルに説明した。すると、私の意見を認めてくれると言ってくれる。
そして魔王様は私を捕獲し続けた所為か、少し落ち着いてきていた。
「ファルークスも俺が弱いと言うのか?」
その魔王様の怒りのほこ先はファルに向けられた。だから、それは違うって言っているじゃない。
「シュレイン。俺たちの功績は聖騎士団では評価されているが、それを表立って言ことはない。先日の北の森の件がいい例だろう?人に知られないように、動かなければならなかった」
北の森での夜叉との戦いだ。森が燃えるという事態に陥ったけど、ファルのおかげでそんな痕跡は無いことにされた。
ファル凄いよ!
「ということはだ。アンジュは次の戦いを王弟として動けと言っているってことだ」
「いや、そこまでは言っていないよ」
ファルの言葉に否定の言葉を乗せる。組織のことには口は出さないよ。
「団長が自ら動く事態だ。王弟として動くっていうのもありだろう。その功績もあって、陛下から次期王に指名されるという流れがいいんじゃないのか?」
これは王様大好きファルとして、王様に好感度を持たせたまま退位させたいという流れってことかな?
しかしそっちの方がいいだろうね。
「そうすれば、部下のアンジュをそのまま王妃として引き上げる流れになっても、おかしいとはならないだろう」
「そっち!」
あまり良くない噂がある王弟が、身内で周りを固めてしまうという流れにしようと?
くっ!これは民衆としては受ける流れだけど、貴族としては面白くない話だ。
平民が聖騎士団に入って王弟の部下として働いていたら、王妃になったというシンデレラストーリー!
しかし貴族としては身内で周りを固められてしまったら王家に入りこむ余地がなくなる。
「シンデレラストーリーは受けるだろうけど、貴族の反発が起こりそうな流れ」
私は食べている手を止めて頭を抱える。物語受けしそうな流れにするのはやめて欲しい。
「アンジュ。シンデレラストーリーとはなんだ?」
「ルディ。聞かなかったことにして」
「そう言う言い方をするアンジュは、大概自分が不利になるときだよな。大人しく話しておけよ」
「ファル様。言わないよ」
これは絶対に言わない。凄く小っ恥ずかしい状況になるのが目に見えているから。
「シュレイン。この方針で行こう。貴族の反発は恐らく起こらない。公爵家の四家が王家側についているからな。国民の件はアンジュが頭をかかえているぐらい、いい作戦らしい」
「いやぁ!本当に無理!それは駄目!ルディ。考え直そう」
「⋯⋯わかった」
ルディの言葉にホッと安堵のため息が出る。
「王弟として動く。そうすれば、ヴァルトルクスを優遇することはなくなるのだろう?」
「ヴァルト様を優遇なんてしてないよ!」
その後説得したものの、第十三部隊としてではなく、ルディは王弟として出撃することを決めてしまった。
そして翌朝、私は真っ黒い甲冑の横に黒い毛皮のコートを着て立っていた。何故に黒!
威圧感が半端ない。
それよりも、そんな物を用意してあったことに驚きだ。
「いや、俺もアイレイーリス公爵の甲冑はあるぞ」
ファルがアイレイ公爵として甲冑を作っていると教えてくれたことから、王族として作ってあったらしい。
こういうことがなかったら、きっと日の目をみなかった甲冑だ。
「今回は私は王都に待機しなければなりませんから、気を付けて行くのですよ」
そして残念なことに今回はチートな神父様がついて来てくれないのだ。
「神父様。着いてきてくれないのですか?神父様がいてくれたら百人力なんですけど?」
「アンジュ。そろそろ親離れはしなければなりませんよ」
「いや、違うし。チート結界の神父様って重宝するって話」
「アンジュ」
はっ!既に異様な雰囲気をまとっている黒い甲冑が、さらに不穏な空気をまとい出した。
「お待たせして申し訳ない」
そこに第十二部隊長さんが⋯⋯第十二部隊のサーコートを身に着けた甲冑が三体やってきた。
恐らく第十二部隊長さんとリザ姉とロゼだと思われる三人だ。
「本当にな」
ルディ。第十二部隊長さんには、個人的に第十二部隊を動かしてってお願いしたのだよ。だから、そっちの指示も出さないといけない。それに集合時間には間に合っている。
これは急遽ルディが夕食後に連絡していた。翌朝には出発すると。
その第十二部隊長さんだと思われる甲冑が私の元にやってきて、跪いてきた。
え?なに?
「第十二部隊はギルフォード副部隊長に一任し、バルドール地方とガラヴァーニル地方に向かうように命じました。戦況は将校ロゼに随時報告することになっておりますので、何か不測の事態が起これば指示をお願い致します」
あれ?これって私の指示で第十二部隊が動くって言っていない?




