407 ヴァルト様!凄い!
「では第十二部隊はバルドール地方とガラヴァーニル地方の救援に行ってもらいましょう」
なるべく早急に解決するために、第十二部隊から近い地域になる山脈を越えた場所。
第二部隊と第三部隊の管轄しているバルドール地方。そして第十部隊が管轄しているガラヴァーニル地方に行くように侍従が命じた。
「了解した。ギルフォード副部隊長に命じておく。あとで詳しい情報をいただきたい。聖女アンジュ様」
「聖女呼びしないでくださいね」
第十二部隊長さんが私に頭を下げてきたけど、私の情報は神父様からの情報と茨木の予想でしかない。
それから、私を聖女呼びしないで欲しい。
ずっと無言のルディの機嫌が、そこで悪くなる理由もわからないのだけど?空間が軋む音が酷い。
だけど皆、見て見ぬ振りをしている。これはきっと触らぬ神に祟りなし状態だね。
「それじゃ、私は西側の第七部隊の管轄と北の第十一部隊の管轄に行くよ。第七部隊が瀕死だって情報あるし」
私は自ら行く場所を提案した。
ダラニースエル地方。謎の海が出現しているところだ。そして北側のジャンエース地方。
聖女シェーンが情報を持っていれば聞き出したいところだけど、バッドエンドに向かうメインストーリーの主軸はお披露目パーティーになるだろうから、期待はできなさそう。
玉藻の情報すらなかったからね。
「何故ですか?」
「ん?」
「何故そちらに行くと言われたのか気になりましてね」
何故と言われても、少数精鋭で直ぐに動けるからだね。先の龍神の女将さんのときの戦いで、戦力を減らした第七部隊は既に三割の戦力を失っているという。もう敗戦と言っていい状態だ。
早めに救援に行った方がいいよね。
「わかっているのは、謎の船団だね。海を凍らせれば、海は地上と変わらないよね?瀬戸内水軍か村上水軍か知らないけど、海だから強いのであって、船を動かなくすれば頭をぶっ叩けばいい」
「アンジュちゃんが非道なことを行っているわ」
「セトウチスイグンとムラカミスイグンってなに?どっちにしろ、動けなくしてボコ殴りにしようって魂胆だよね」
リザ姉、ロゼ。うるさいよ。時間がないなら、敵の足を無くすのが一番いい。
「それから第十一部隊のところは、あちらこちらに糸がばら撒かれて色々被害が起きているって。報告書を読んだとき、蜘蛛かと思ったんだよね。でも巣を作って待ち構えている感じではなさそうだから、蜘蛛じゃなさそうという意見までは一致したんだよね」
勿論、茨木との意見交換でということだ。報告書では他のザコの異形の姿は見られるものの、肝心の糸を出すようなモノが見つけられなかったという結論だった。
その糸がザコ異形との戦いで被害を大きくしているらしい。その糸は目に見えず、触れるとくっついて動きを阻害され、戦っている異形にやられることで、被害が大きくなっていると。
「これは行き当たりばったりで行くしかなさそうだから、私が行ったほうがいいのかなって思っただけ」
「そうですか。では団長にはアラカンダール地方とケイザディール地方に行ってもらいましょう」
あ、これは侍従はついていかないということか。まぁ、王都の守りも必要ということだね。
ということは、侍従に頼めばいけるか?
「侍従に頼みたいことがあるんだけど」
「何ですか?」
「貴族の養女の異形のことを探ってほしい」
「それぐらい貴女の影に任せればいいことでしょう」
「ダメダメ。九尾に黒狐をぶつけてもプチッと潰されるだけ」
すると侍従は納得したように頷いているということは、既に黒狼の者を差し向けていたのだろう。
「ロゼ。何か魔石を持ってない?クズ魔石でいいのだけど」
「これではどうだ?」
すると第十二部隊長さんが青い魔石をテーブルの上に置いた。こぶし大の魔石を置かれても困るよ。クズでいいって言ったのに。
「ちょっと大きすぎるかな?本当に爪ぐらいの大きさでいいのだけど」
第十二部隊長さんは、そのこぶし大の魔石にそっと触れた。その途端、魔石の形が壊れ、テーブルの上に細かくなった魔石が散らばっていく。
おお!これは第十二部隊長さんの聖痕の力!
砂塵のようにしかできないのかと思っていたら、大きさを決めれるんだ!
「凄い!ヴァルト様これ凄いよ!」
私は細かくなった魔石の一つを手にとって叫んだ。形が綺麗に整えられている。四角く整えられている。凄く使い勝手がいい!
「アンジュ。これを目の前で見せられて引くかと思えば、逆に喜んでいるって⋯⋯」
「流石アンジュちゃん。斜め上を行くわ」
ロゼ。リザ姉。これが凄いってわからないの?
そして私は手に持った一つに魔力を込める。
「侍従。これに魅了阻害をかけたから、聖騎士団の代表として接触してみて?」
すると侍従は額に手を当てて項垂れている。どうしたのだろう?気分でも悪いのかな?




