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聖痕の聖騎士〜溺愛?狂愛?私に結婚以外の選択肢はありますか?〜  作者: 白雲八鈴


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398 二人の聖女のあり方

「さて、どうだろうね。聖女が二人となると、シェーンの立場が不安定になっちゃうよ?」

「あ……それは駄目。私は世界の穴を封じる聖女」

「そうだね」


 私は『世界の再構築』という言葉は横において、私が聖女であった場合のシェーンの立場を言う。


 それはシェーンが望む立場は得られない。


 玉藻が太陽の聖女を模したときと同じだ。太陽の聖女がいれば、月の聖女に貴族共は価値を見出さないだろう。


「今は色々不便だろうけど、その麒麟を上手く使って、周りの人との関係を築いていって欲しい。多分、私がシェーンにしてあげられることは、これが最後だと思うから」

「え?どうして?」

「私も監視されていると言ったよね?私がシェーンに会えるのはルディ……王弟が居ないときを狙っているからなんだよ」

「あ……銀髪」

「そういうこと。これから玉藻対策で忙しくなるし、王弟が次の王に指名されるからね。そのうち私もここを離れるんだよ。だからあとはシェーン自身で頑張って」


 嫌だけど、私は王城に行かないといけないらしいからね。聖騎士(パラディン)たちを巻き込んで。

 だから、周りの騎士(シュヴァリエ)たちと良好な関係を築くために、シェーンは色々苦心しなければならなくなる。


 そのための麒麟だったのだけど……未だにシェーンのベッドの上で白目を向いている。これ本当に大丈夫なの?


 私はその麒麟の頬をバシバシと叩いて起こす。


『はっ!』

「馬鹿にされたくないのなら、ここにいるシェーンが他の人たちと上手くやっていけるように、その頭脳を使ってよね。それが私が麒麟である貴方に頼むこと。あと、シェーンが聖女としてやりきったら、好きなことをしていい。それは貴方の自由」

『神帝の(めい)を承りました』


 私に頭を下げる麒麟をジト目で見ながら、ため息をはいた。

 いや、私を神格化しないでよ。


「聖女シェーン。私は貴女が望む未来を歩めることを願っているよ」

「アンジュは違うの?」

「ふふふっ。私は既に誓約でがんじがらめだよ。私にできるのはこうやってこっそり抜け出すぐらいだね。さようなら、シェーン」

「さようなら。アンジュ」


 私は朧に視線を向けた。頷いた朧は私に再び隠蔽の術をかけてくれる。


「あ、消えた」


 シェーンからは見えなくなったようだ。そして偽物の団長(コマンドール)と偽物の侍従(シャンベラン)の背中を叩く。


 茨木が部屋の扉を開けたときに、ふと言い忘れていたことがあるのを思い出した。まぁいいか。


 お披露目パーティーの時に私が護衛につくけど、初対面の対応でよろしくって言おうと思っていたのに、すっかり忘れていた。


 ここで声をかけると扉の見張りに聞こえてしまうから、止めておこう。


 あの麒麟が使えるかは心配だけど、私としてはやれることはやった。



 さて、このあとは神父様のところによろうかな。ルディはここ五日ほど王城から帰ってくるのが遅かったから、今日も遅いはず! 







「シスターマリア!順調?」


 広い訓練場の中でランスを地面に突き立てて一人立っているシスターマリアに声をかけた。

 その周りには死屍累々が転がっている。


「アンジュ。これが順調にみえるのですか?」

「全然」


 酒吞と茨木には戻っていいよと言ったのだけど、面白そうだからといって私の背後に朧と共についてきている。


「まだ、そこの狂犬のような気配をまとっている者のほうが使えますね」


 シスターマリアは酒吞を指して言う。まぁ、人じゃないからね。


「それで神父様はどこ?」

「リュミエール神父はサイガーザインがきて、共にどこかに行ってしまいましたね。私にここを押し付けて」


 副音声が聞こえてきそうな言葉だ。でもシスターマリアと神父様の関係性って、ルディの母親繋がりでしか繋がらないよね。


 なぜ、シスターマリアは神父様と共にキルクスにいたのだろう。公爵家の令嬢だったのであれば、別の道もあっただろうに。


「ねぇ、シスターマリアはなぜ、神父様が左遷されたキルクスの地にいたの?シスターマリアは、別にあの地にいる必要はなかったのではないの?」


 ここはズバっと聞いてみる。シスターマリアって神父様と仲が良いようで悪いよね。


「……」


 凄く無言で睨まれている。何か機嫌をそこねるような言葉が混じっていたかな?


 すると、シスターマリアは私の腕を引っ張って行き、訓練場の端まで連れてこられた。

 そこには休憩できる屋根付きのベンチ席がある。


「アンジュの護衛はそこにいなさい」


 酒吞たちは一定の距離から近づかないようにシスターマリアがいう。えっと、確かに離れてはいるけど、彼らの耳だと聞こえてしまうと思う。


 そして、シスターマリアは私にベンチ席に座るように促し、シスターマリアも隣に座ってきた。


「リュミエール様が私の姉の婚約者だったことは知っていますよね」

「はい」

「私はね。あの二人が幸せそうにしている姿を見ているのか好きだったのです」


 シスターマリアは、まるで少女のような笑みを浮かべて語りだしたのだった。



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