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聖痕の聖騎士〜溺愛?狂愛?私に結婚以外の選択肢はありますか?〜  作者: 白雲八鈴


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353 肉好き

 私達はポツンと一軒家に戻った頃は既に日が落ちて、星が空に瞬いていた。


「ほ……ほこここここくしましゅ!」


 ぽつんと一軒家に戻れば、既に四人の騎士(シュヴァリエ)たちは戻ってきており、ファルとリザ姉とロゼも戻ってきていた。


 そして、戻ってきたところで、ヴィオがカミカミで報告する発言をしたのだった。


「ここ団長(コマンドール)幻狼(ラクルム)ががががが北の森に出現とほほ報告。…………ぞぞぞぞぞ続報を求むとめめめ命じられました!」


 それは団長(コマンドール)からすれば、北の森に幻狼(ラクルム)がいるとわかれば、気になるだろうね。何せ、物語にしか存在しない魔物だからね。


「ご苦労だった。その後の報告はこちらからする。今日はもう上がっていい」

「「「「はっ!」」」」


 ルディの言葉に四人は敬礼して、ぽつんと一軒家を出て行った。ここから先は彼らには聞かせられないことだから、席を外してもらったのだ。


「それで、ファルークスの方はどうだった?」


 ルディはいつもの定位置の一人用のソファーに腰をおろしながらファルに尋ねる。

 王都の外壁の内側に魔物が入り込んでいるとなれば、大騒ぎどころではないからね。


「その前に何か食べましょう?」

「わざわざ宿舎の食堂から運んできたんだよ」


 するとリザ姉とロゼが食事にしようと言ってきた。私は神父様からもらったお菓子を食べたから、小腹は満たされたけど、皆は森の中をウロウロしていたから、お腹は減っているよね。


「食事をしながら、話した方がいいだろう?この後も一仕事あるのだろう?」


 ファルの言う通り、大きな仕事があることには間違いはない。


「そうですね。英気は養わないといけませんね」


 神父様はそう言って、奥の食堂のほうに足を進める。


「酒はあるのだろうな?」

「今から戦うのですから、程々にですよ」

「うるせぇ!酔うほど強ぇ酒なんて出されたことねぇぞ」


 鬼の二人も神父様に続くように奥に行く。私はお酒を飲んだことないけど、蒸留酒ってないのかな。

 ……今思えば、ワインぐらいしか見てないなぁ。お貴族様ぐらいならワイン以外のお酒も飲んでいるかもしれないけどね。




 そして、食堂に用意されていたのは、私が苦手なゴムのような食感の肉の塊だった。それはススっと横に避けて、スープに手をつける。

 野菜の出汁がたっぷり出た塩味のスープ。


 不味くはない。ただ味が薄い。


 そして野菜のサラダの代わりに芋を茹でて潰したもの。いわゆる、マッシュポテトだ。一口食べる。

 自然の味だね。


 私はスッと立ち上がる。


「アンジュ?」


 隣に座っているルディに呼ばれた。作ってくれた人には悪いけど、今から戦うってときにこれはない。


「情報交換はしておいてくれていい。調味料を作ってくる。あと、私はこれを肉とは認めない」


 私はそう言葉を吐き捨てて、キッチンに向っていった。今のうちに好きなだけ、情報交換しておいて欲しい。


 スープには香辛料と塩と胡椒を混ぜてパンチの効いた物を、後足しできるように作ろう。

 マッシュポテトには乾燥ハーブと塩を混ぜた、ハーブソルトを作ろう。


 そうと決まれば、まずは肉を焼こう。まだまだドラゴンの肉は残っているからね。


「あ……お肉追加で欲しい人いる?」


 私はキッチンに入る手前で振り返って聞いてみる。

 自分の分だけ焼いて、後でグチグチ言われて焼くことになると二度手間だからね。


 すると全員の手が上がった。え?第十二部隊長さんもリザ姉もロゼもなの?まぁいいけど。


「アマテラス。肉は多めに頼む。今から戦うんだからな」


 酒吞は珍しく肉を多めにと注文をしてきた。夕食は殆ど酒ばかりで、食事はおつまみ程度なのにね。気合でも入っているのかな?


「わかったよ」


 そう言って、私はキッチンの中に入っていったのだった。



________


食堂 Side


「だから、宿舎の料理はアンジュは気に入らないって言っただろう?」


 ファルークスは塩味しかしないスープをスプーンでかき回しながら、向かい側に座っているリザネイエに声をかけた。


「でもねぇ。料理なんて作れないわ。作れても簡単な遠征食よ」


 リザネイエは困ったという感じで首を横に傾げている。遠征食が料理かと言われたら、アンジュからすれば、あんなものは料理と言わないと言い返されそうだ。


「昔からよね。アンジュがうるさいのって、これは絶対にリュミエール神父様の所為だと思う」


 ロゼはアンジュの食事へのこだわりが高いのは神父の所為だと言い切った。その原因だと罪を押し付けられた神父はと言えば、ニコニコとした人の良さそうな笑顔を浮かべて、硬そうな肉をナイフで切っている。


「アンジュに甘い物を渡したことは認めますが、アンジュの肉へのこだわりは私の所為ではありませんよ」


 神父の言葉に、彼が育てた聖騎士たちは一様に納得したように頷く。


「干し肉は絶対に自分の分はきちんと確保していたものね」

「最初はわからなかったけど、あの硬い干し肉を砕くって、どんなバカ力だって引いたね」

「でも、あの食べ方が一番美味いんだよなぁ。うっすいスープに入った干し肉」

「アンジュは天才だからな」


 それぞれがそれぞれに、アンジュの遠征用のスープの食べ方を言っているなかで、一人だけ、わかっていない顔をしている者がいる。


 神父の元で教育を受けなかったヴァルトルクスだ。


「干し肉がどうしたのだ?」


 ここには出されていない干し肉の話をされても、ヴァルトルクスには理解不能なことだった。



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