表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
聖痕の聖騎士〜溺愛?狂愛?私に結婚以外の選択肢はありますか?〜  作者: 白雲八鈴


この作品ページにはなろうチアーズプログラム参加に伴う広告が設置されています。詳細はこちら

351/505

348 思い込みは危険

「私も戦いたい」


 王都の外壁を登る手前で、ルディに捕まってしまった。


「皆ばっかり戦ってズルい」


 ルディに抱えられた私は王都の外側の北の森を連行されていた。その後ろからは無言でついてくる第十二部隊長さんがいる。


「最近、全然戦ってない!幻狼(ラクルム)が、どんな魔物か戦ってみたい!」


 私が訴えているというのに、無言のまま進んでいくルディ。


「いっぱいいるのなら、手分けして討伐した方が絶対にいいと思う!」


 幻狼(ラクルム)っていうと、物語では……

 霧深い森の中で、突然視界がひらけたと思えば、花畑だった。あまりにもの綺麗な花畑だったので、聖女が進もうとすると、聖騎士の一人が花畑を燃やした。燃やされた花畑は一瞬に消え去り、そこから巨大な魔狼が牙をむき出しにして待ち構えていた。だが、魔狼の方も突然の火に驚き、その姿は霧のように消え去った。

 という話の(くだり)がある。


 ヴィオとミレーの話はここからきているのだろうけど、聖女の物語は本によって話の内容が微妙に違うんだよね。

 どれが真実なのかわからない。


 だから、私は実物を見て、戦ってみたいのだ。


 霧を纏うモノなのか。風景に同化するモノなのか、幻術を使うモノなのか。


「アンジュ。ファルークスに言ったように、すべて討伐する必要はない」

「いや、私は見たことがない幻狼(ラクルム)と戦いたい」


 わかっているよ。結局、常闇にすべて呑み込ませるってことだよね。しかし、私は幻狼(ラクルム)に興味津々なのだ。


「アンジュもおかしいと言っていただろう?今はそれを調べるために来ている。もしかしたら、アンジュが王都に来た頃から異変は起こっていたのかもしれない」


 ん?異変?

 あれかな?北の森では小物しか居ないと言われていたのに、キマイラがいたことかな?


「キマイラのこと?」

「そうだ」

「キマイラがこの森にいたのか?それは上にあげたのか?」


 キマイラが居たということに驚いた第十二部隊長さんが、後ろを歩いていたのに、ルディの隣まで出てきて聞いてきた。


 そういうのは、ルディかファルに聞いて欲しい。


「……いや、そのときは常闇があると認識していなかったから、討伐したことで終わったこととしたな」


 私の太刀の試し切りになったからね。そう言えば、その頃と比べたらルディの胡散臭い笑顔はあまり出なくなったね。


「だが、今思えば、普段はゴブリンしかいない北の森にキマイラがいた時点で、森の異変を上げておけば良かったと」

「それは聖女様がいてこそ、常闇がここにあると気がついたのだ。そうでなかったら、王都のすぐ外に常闇があることを認めたくなかっただろう」

「そうだな。認めたくなかった……無意識の排除だ」


 二人の言いたいこともわかる。

 キルクスのすぐ側の森には、常闇があることは常識だった。だから、森に管理者を置いて常闇から出てくる魔物の監視をしていた。そして、キルクスの街に魔物の被害が及ばないようにしていた。


 これが王都となると別だろう。今まで存在しなかった常闇が直ぐ側に現れたのだ。これを公表すればパニックになる。

 だから、無意識で王都には常闇は存在しないと思い込み、情報の共有を怠った。


 ん? パニック?

 もしかして、あの見張り台にいる騎士は知っているけど、公表すると王都に住む者たちがパニックを起こすから、言っていなかったりするんじゃないのかな?


 ん?あれ?


「ルディ。止まって」


 私は気になることがあって、ルディの足を止めた。そして油断しきっているルディの腕から飛び降りる。そのまま地面を蹴って、ある一点に向って駆け出し、腕を奮った。


「『氷結(グラキ)!』」


 氷の魔術だ。目の前の空間を凍りつかせる。そこはただの森の風景が広がっていただけだ。


「アンジュ!勝手に離れるな!」


 いや、言っても解放してくれないから、自力で逃げるしかない。


 そして、ただの森の風景が広がっていた空間には、氷漬けされた大きな魔狼が存在していた。

 やっぱり、魔物がいた。これが幻狼(ラクルム)なのだろう。


「うーん? 広範囲の幻術というより、景色との同化かな?光の屈折率を調整している?」


 私は氷漬けになった幻狼(ラクルム)の周りをぐるぐる回って観察する。

 面白い!これって新しい魔術が作れそう。


「アンジュ。なぜ、ここに幻狼(ラクルム)がいるとわかった?気配も魔力も感知できなかったのだが」


 周りと同化して姿を隠しているのに、気配がダダ漏れって、それはバカだろうって突っ込んでいるところだね。まぁ、今回は風景の些細な歪みで違和感を感じた。


「それは、もやもやっと歪みが出ているところが、怪しいなと攻撃をしてみた」

「もやもや?」

「ゆらゆら」

「……」


 何?

 ルディと第十二部隊長さんが、私を見てくる目で、そんな説明じゃ全然わからないと、言っているようだった。



評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ