表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
聖痕の聖騎士〜溺愛?狂愛?私に結婚以外の選択肢はありますか?〜  作者: 白雲八鈴


この作品ページにはなろうチアーズプログラム参加に伴う広告が設置されています。詳細はこちら

348/505

345 また羞恥心だって?

「ごめん。ルディ、何のフエなのかわからないのだけど?私が吹くの?」


 口笛?指笛?よくわからないけど、何かを呼び寄せるっていう意味だよね。


「『黒狼(ガルム)の笛』だ。それで、オボロを呼び寄せろ。それに、笛の音が聞こえたら、シュテンとイバラキも来るだろう?」


 え?鬼は犬とは違うよ。まぁ、朧も犬ではなくて、狐だけどね。


 しかし、『黒狼(ガルム)の笛』の存在をすっかり忘れていた。

 偽物の王様からもらったけど、使うことなんてないと思って、冒険者ギルドのタグと一緒に鎖にくっつけていた。だって、ジャラジャラと首飾りをつけるのは、あまり好きではないからね。


 冒険者ギルドの身分証であるタグを取り出すのに、隊服の上着の上部三つのボタンを外す。


「アンジュ!」

「え?何?」


 その下に着ているシャツのボタンも上の二つを外して、服の中に手を突っ込んで、赤銅色の鎖を引っ張り出す。鎖と同じ色の冒険者ギルドのタグの横には黒く細い筒状の物が鎖にくっついていた。


「これだよね?」


 ルディに確認するように見せると、なんだか魔王様が降臨一歩手前の感じがビリビリしてくる。え?何、機嫌が悪くなることがあった?


 これは何が起こったのかとファルを見ると、額に手を当ててため息を盛大に吐き出しながら横を向いている。


 振り返って見ると、リザ姉とロゼは何も変わりないけれど、第十二部隊長さんは完璧に後ろを向いている。


 そしてミレーはティオの目を両手で塞いているし、シャールは何やら顔が赤いし、ヴィオはアワアワとしている。


 どうしたのだろう?


「アンジュ。いつも言っているが、羞恥心を持てと言っているだろう!」


 いきなりファルが叫びだした。だけど、意味がわからない。どこに羞恥心が必要なのだろうか?

 別に寝ていてよだれが垂れているわけじゃないのに。


「ファルークス第十三副部隊長。アンジュにそういうことを言ってもムダです」


 ファルの言葉に、ロゼが返す。いや、今のどこに羞恥心が必要なところがあったわけ?


「そうよね。アンジュちゃん、よく女子棟の中を下着でウロウロしていたもの」

「リザ姉、暑いからキャミソールと短パンを着ているって説明したし」


 はっきり言って、キルクスの夏は暑い。南の海から湿った風が吹き付ける。それが北の山脈にぶつかって、太陽の熱でムシムシと暑い。どこかの島国を思わせるムシムシ具合だ。


 しかし教会の子飼いが着る服は決められている。女の子は夏も冬も灰色のダボッとした長袖で、裾が長いワンピースだ。生地も年中一緒の綿の生地だ。


 訓練のときもその服。貴族の子のように好きな服は着れない。ならば、下着という名の服を着ればいい。


「だって、部屋の中を冷やすと神父様に怒られたし」


 お貴族様は、室内を冷やす魔道具があるらしいけど、下民共はそんなものは使用できない。だから、魔術で部屋の中を冷やしたら、10人部屋に神父様が乗り込んできて、室内での魔術は使用禁止だと、拳骨をくらった。


「いや、あれは怒られるでしょ。魔術の陣を天井に描いていたもの」

「ロゼ。冷気は上から下に流れるから、床に陣を描いても足が冷えるだけ」

「そうやって、よくわからないことをアンジュは言って、シスター・マリアを困惑させていたよね」

「そんなことないよ」

「あら?下着でウロウロしていることを怒られたときも、おかしなことを言って、シスター・マリアを困らせていたわよ?」

「別におかしなことなんて言ってない。夏服を用意してくれない教会が悪い」


 まぁ、今ではその教会の教育方針にも理解はしている。


 聖騎士となる者には身体のどこかに聖痕が現れる。その聖痕と他者の聖痕とを接触を避けるために、皮膚を覆う衣服を着る必要があったのだと。

 だから、幼い頃から皮膚を覆う衣服を着ることが常識だと教えられていたのだ。


 だけど当時の私はそんなことは知りもしない。だから、私は働いたお金で、キャミソールと短パンを古着屋で買って着ていたのだ。


「それでルディ。これを吹けばいいのかな?」

「わかった。きちんとした夏服を用意する」


 ……いや、その話はもういいのだけど?それにルディに服を用意してもらわなくてもいいよ。今月からお給料が入るから、私は自分の物は買えるからね。


「ルディに選ばすと、ゴスロリになるから遠慮しておくよ。でも思ったのだけど、三人を呼び戻すのなら、『響声(レトノ)』を使えばいいんじゃない?」

「ゴスロリが何かは知らないが、アンジュの似合う服がいい。それから、人前で上着を脱ごうとするな」

「脱いでないし」

「手を服の中に入れるな」

「え?それだと冒険者ギルドのタグが取り出せない」

「あと、宿舎内では下着でうろつくことは絶対にするな」

「服ならいい?」

「……俺が渡した服ならいい」

「ちっ!」


 服という名のキャミソールと短パンは却下なのか?


「彼らを呼び寄せるのに『響声(レトノ)』だと、周りに聞こえるから、『黒狼(ガルム)の笛』の方がいい」


 ん?戻ってくるように言うだけなのに、『響声(レトノ)』を使っては駄目なの?



評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ