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聖痕の聖騎士〜溺愛?狂愛?私に結婚以外の選択肢はありますか?〜  作者: 白雲八鈴


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327 常闇は本物だった

『ユルシマセヌユルシマセヌユルシマセヌ……』


 怨嗟の声が青い空に響き渡る中、突如として黒い穴が口を開け、そこから飛龍が出てきた。

 大きさとしては十メル(メートル)ほどの空飛ぶトカゲだ。赤い鱗をまとっているので、火竜だろう。


「あのお肉食べたいなぁ」


 先程のアースドラゴンは硬そうだからいらなかったけど、あの飛龍は美味しそうだ。


「だから、なぜアンジュはドラゴンを食い物としたか見れないんだ」

「ファル様。ドラゴンを超える肉に出会っていないからだね」


 今のところ最上級の肉はドラゴン種だ。

そして私はそっとルディの肩から手を離す。


 黒狐の王妃の声が聞こえた時点でルディも神父様もファルも剣を抜いたのだ。いやファルは木の杖をずっと持っているから、剣じゃなかったね。


「アンジュ。俺から離れるな。アンジュは攻撃せずに皆の目になって欲しい」

「わかっているよ。ルディ」


 私はみんなが見えない黒い鎖を見る目だ。私は私の役目はわかっているよ。警戒は怠らない。


「居ましたよ。黒狐です」


 茨木が空に穴が空いた場所を指し示してくれたけれど、私の目には何も映らない。これは常闇の闇とモヤが同化している?


「ごめん。私はモヤとしか見えないから、闇と同化している」


 私は常闇に目を凝らして見る。うーん?やっぱり見えない。

 このとき、獅子王は飛龍に攻撃し、太陽(ソール)の聖痕の男性は慌てて、(ルーナ)の聖痕の女性を木の根元に移動させている。


 だから、誰も黒狐の王妃の存在に気がついていない。いや、そもそもアレがよくわからない。


「やっぱり、飛龍に苦戦しているね。魔術を使えないと厳しいかな?」


 そもそも獅子王は飛龍が低空飛行して直接攻撃してくる瞬間に攻撃をしなければならない。だが、あの飛龍は火竜だ。


 もちろん炎を吐いてくる。


 獅子王の分が悪い。勝つには低空飛行攻撃してくる一瞬で、翼を切り落とさないといけないが、十メル(メートル)の大きさだと、刃が届くかどうか。


『πφΜχν!』


 獅子王が何かを叫ぶと、太陽(ソール)の聖痕を掲げた男性が、手から金色の鎖を出した。


「え?何、アレ?」


 その金色の鎖が飛龍を絡め取り、地面に叩きつけた。


「金色の鎖って何の聖痕?」

「見た感じ太陽(ソール)の聖痕じゃないのか? 他に聖痕を持っているように見えない」


 ルディの目からもあの金色の鎖は、太陽の聖痕の力に見えるらしい。だけど、私の|太陽の聖痕は鎖なんて出てこない。もしそんな物が出てくるのなら、もっと実用的に使っていた。肉の捕獲とか。


 飛龍など地面に落とされれば、ただのトカゲだ。獅子王の一撃で胴と首が離れていき、飛龍は動かなくなった。


 そして(ルーナ)の聖女は天に祈るように手を組み、視線を黒い穴が空いている空に向けている。


 徐々に黒い穴が小さくなっていく。これは(ルーナ)の聖女が常闇を閉じて行っているのだろう。


「やっぱり(ルーナ)の聖女は祈るのか。面倒な力の使い方だね」

「いや、願いを叶える祈りだろう?」


 願いを叶える祈りか。ファル。それが面倒だと言っているんだよ。


「黒狐の視線がこっちを向いたぞ」


 酒吞の言葉に緊張感が走る。常闇の穴はほぼ閉じている。ひと一人が通れるかどうかの穴が空いているのみだ。

 いや、その隙間から触手のようなモヤが私の目に確認できた。


「鎖が出てきた!どうする!(ルーナ)の聖女の足元に次の階層の穴が開いているけど!」


 この階層は獅子王と銀髪の男の出会いを見せたかったのだろう。常闇が完全に閉じる前に次の階層への入口が開いていた。


「無駄な戦闘は避けましょう」


 神父様の言葉に皆が一斉に(ルーナ)の聖女にめがけて走り出した。

 ルディの左腕に抱えられ、移動している私の目は空から一時も離さない。


 黒いモヤが動いた。先頭を走っている神父様に向かって叫ぶ。


「前方に向けて鎖のモヤが伸びていっている!獅子王の方に進路を変えて!ファル様もう少し左!」


 見えない敵を相手にしなければならないのは、困るなぁ。……ん?魔力が半分戻っているのであれば、できるか。


 私は何もない空間に向かって手を伸ばす。


「『黒白(こくびゃく)微塵!』」


 これは何もかも区別なく壊す言葉だ。それをこの空間に向かって魔術を発動する。


 すると映像が一瞬乱れ、全てが消え去った。

 獅子王も太陽(ソール)の聖痕の男性も空に祈りを捧げていた(ルーナ)の聖女も巨大樹も黒いモヤも消え去り、ただの石の床と壁と天井……いや、石の天井に黒い穴が開いていた。


「常闇は本物ってこと!」


 私の叫びとともに、ひと一人が通れそうな隙間の常闇から黒い鎖が放たれたのだった。


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