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聖痕の聖騎士〜溺愛?狂愛?私に結婚以外の選択肢はありますか?〜  作者: 白雲八鈴


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303 極夜の世界

 不快感を覚えながら私達は二十一階層へと降りていった。


「あれ?また夜?」


 二十階層も夜だったのに、二十一階層も夜だ。これは何を意味している?


「もう太陽が昇らなくなったようですね」


 神父様が星が輝く空を見上げて言った。美しい星が輝く空であるけど、その星が願いと共に降ってくる。ある意味恐ろしい空だった。


 そして、世界の崩壊は止まることなく、太陽が昇らなくなってしまったようだ。


「おい、なんかヤバくないか?」


 酒吞が何かを指していった。だけど、私の目には暗闇しか映っていないので、何がヤバいのかわからない。


「死の大地ですね。これでは生き物は生きてはいけないでしょう」


 茨木も見えているらしい。鬼の二人の目には、酷い光景が映っているようだけど、私達が持つ魔道ランプは私達しか照らすことができずに、目の前には闇が広がっているばかり。

 闇?もしかしてと思いもう一度空を見上げる。


「月も昇らなくなったの?」


 太陽の光を反射し、夜の大地を照らす月の光さえ無かった。

 なにこれ?これってあり得る?


 私の持つ概念では、太陽を中心に星星が回っているのだから、そもそも太陽が昇らないことがおかしい。


「極夜が続いていると考えるべき?そうすると、自転が止まっていると考えれば、アル意味なっとく。なら月は?うーん?あれか?未だに楽園の結界を張り続けているから月が投影されず、落ちてくる星だけが映し出されている?強引な辻褄なら合うかな?」


 私は強引ではあるものの、このようになった状況は予想できた。私は右目から天使の聖痕を取り出し、頭上に掲げる。


 そして、私の……私達の目に映ったものは……。


「これは……流石に生き物は住めない大地ですね」

「酷いな。地面がひび割れているばかりかドス黒い」

「アンジュ。ジテンとはなんだ?」


 ルディだけ別のことを言っている。私の独り言は無視してくれていい。


 私の聖痕によって照らされた大地はファルが言っているように、雨が降らないためか、ひび割れていた。そして、焼け野原になってしまったかのように、黒ずんだ大地だった。

 所々にある窪んだ大地に水らしきものは残っているものの、土留色(どどめいろ)と言うのだろうか、黒ずんだ紫の水が溜まっている。なんて毒々しいのだろう。


「うわぁー。これでどうやって人は生き残れたわけ?」


 私達の祖が生き残った意味がわからないほど、大地は病んでいた。


「恐らく答えはあそこにあるのでしょうね」


 神父様は暗闇に浮かぶ何かを指し示した。形から察するに王城がある高台に見えなくもない。


「あれ?もしかして、ここ王都だった?」


 高台の位置から言えば、今は王都内になる場所に私達は留まっている。


「ここは多分、西の離宮の辺りか?」


 ファルには思い当たるところがあるようだけど、未だに私は自由に王都内の散策ができないので、どこかさっぱりわからない。


「西の離宮ってなに?」

「聖女のお披露目パーティーの会場になる夏の離宮ですよ。この窪地の形が同じなので、そうでしょうね」


 怪しい色の水が溜まった窪地はほどほどに大きい。そして何故か中心に島があるように見える。これが自然にできたのなら、奇跡的な景観だっただろう。しかし、真実を知った今では、願いを叶えようとした者を中心に星が落ちたのだと予想できる。そう、運がよければ助かったであろう形だ。


「はぁ、パーティー会場に行ったら、きっとこの光景が思い出されるんだろうなぁ」

「嫌なことをいいますね。アンジュ」

「やめろ。アンジュ」

「ジテンとは何だ?アンジュ」


 ルディ。しつこいよ。私の独り言はスルーして欲しい。


「はぁ、考え方の問題。この世界を中心に太陽と月がまわっているのか、この世界が太陽の周りを回転しながら周回しているのか。この世界自身が回転していることを自転と言ったの」


 私は自分の手を使って、世界と太陽を現して説明した。この世界の考えは残念ながら、世界中心の考え方が一般的だった。世界を中心に太陽と月が巡っていると。だから太陽の聖女と月の聖女という言葉が生まれたのかもしれない。


「流石、太陽(ソール)聖女(サント)ですね。納得の行く説明です」

「神父様。それ馬鹿はにしている?」


 太陽の聖女って言われて神父様から敬礼されるの、凄く腹が立つ。


「そんなことはないですよ。何故、太陽が昇らなくなるのか不思議だったのですが、世界が回転しながら、太陽の周りを巡っている。その世界の回転が止まればいくら太陽の周りを巡ろうが、太陽は昇らない。それほど世界が壊れていたということなのでしょう」


 相変わらず私の適当な説明で神父様は理解した。チートな神父様はこういうところが凄い。


「流石、リュミエール神父。アンジュのおかしな考え方も、長年教育していれば、理解できるようになるんだな」

「ファル様。失礼だね」


 一般的な考えでなくても、柔軟に物事を考えていると言ってほしいね。


「はぁ、またアンジュが遠く感じる」


 ルディ。ため息を吐きながら、締め付けないで欲しい。遠くって言うよりも、ずっとくっついて離れないのはルディの方だからね!



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