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聖痕の聖騎士〜溺愛?狂愛?私に結婚以外の選択肢はありますか?〜  作者: 白雲八鈴


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300 好きか嫌いか+おまけ話

「死の鎖が見える私としては、それはあり得たと思う。神父様も見えるから、間違いはないと思うよ」


「昔から思っていたが、アンジュのリュミエール神父の信頼度が高くないか?」


 ふぉ!私を睨みながら言わないで欲しい。信頼度って何?私は本当のことを言っているだけだけど?


「信頼度って……そんなことないと思うよ」


「リュミエール神父と他の者との態度は違うし、言うことは素直に聞いているじゃないか」


 これは毎回言っていることなのに、なぜ聞いてくるのだろう。神父様は怒らすと面倒だって誰でもわかるよね。


 うーん。毎回説明してもわかってくれないのってどうすればいいのかなぁ。神父様は神父様だし、ルディとは違う。比べる方がおかしいのだ。


「ルディは何が怖い?私は突如として日常を失うことかなぁ。お金を溜めて、散歩をして、美味しいものを食べて、お金を溜めて、また美味しいものを食べる。そんな日常」


「アンジュ。それは日常とは言わない。好きなことをしているだけだ」


「ははは。そうだね。好きなことができるって幸せだね。自由はないけど、その中でも楽しいことはできる」


 突如として死を迎えれば、そんなこともできなくなる。私は好きなことをして生きたいと思っている。だけど、それだけでは生きていけないことも理解している。


「ルディはどうかな?」


「俺はアンジュが生きていてくれるだけでいい」


 ……相変わらずくっそ重い言葉を言ってくれる。思わずため息が出てしまった。


「はぁ。私はここにいる。それでは駄目なのかな?」


「駄目じゃない。駄目じゃないが、アンジュがヴァルトルクスを褒めればムカつくし、ヒュゲルボルカとアストヴィエントからお菓子をもらったと知ると腹が立つ。目の前で笑顔でリュミエール神父から菓子を受け取っているのを見るのも腹立たしい」


 それは全て私に向けられていると?しかし、しかし……


「お菓子に罪はない」


 美味しいものをもらえるのなら、もらうべきだ。


「アンジュは俺を好きだと言ってくれないし」


 どうやらこの前の棒読みはカウントされなかったようだ。これは私がルディを好きだと言わないといけないのか?

 ルディのことは嫌いではない。好きかと聞かれればどうだろう?


 どちらかと言えば、家族に対する愛情に近いと思う。これは私には前世の記憶があるからだろう……いや、記憶がなくても妹に男前過ぎると言われていたのだから、あまり変わらないかもしれない。


 ただ、問題なのがルディが私という存在を心の拠り所としていることだ。私がルディを否定しようが、受け入れようが、何も変わらないっていうか変わらなかった。

 変わらなすぎた。十年経ってもだ。しかも悪化しているという始末。


 最近は少しマシになってきたように思えてきたけど、今回の事がトドメとなってしまっている気がする。


 はぁ、逃げられないのであれば、ルディと向き合う覚悟が必要なのかも知れない。どうせ、結婚する契約までせさせれているのだ。

 しかし、絞め殺される危険が改善されないということは、避けたいことだ。


「ルディのことを好きか嫌いかと聞かれれば、好きだと思う」

「アンジュ!」


 うっ!絞め殺しにかかってきている。これを改善して欲しい。


「でも」

「……でも?」


 睨まないで欲しい。そして、ギュウギュウに締めないで欲しい。


「教会で一緒に暮らした家族という感じ……いつも頑張っていたのを知っているよ。他の皆から否定されていても、くじけずに前を向いていたのも知っている。だからアンジュはいい子いい子していたんだよ」


 昔のようにルディの黒髪の頭を撫でてあげた。……うっ!何故に更に絞め殺してくる!


「それに、一度はルディと離れなければならなかったのも事実……ルディ流石にこれ以上は死ぬ」


 ヤバイ。背骨が折れるかと思った。


「何度も言ったけど、それは神父様がルディに課したことだからね。どちらにしろ、私は教会でルディは聖騎士団で過ごさなければならなかった。それで、再会したルディの病み具合が酷くて驚いたよ。まともに外に出られないぐらいだったからね。でもさぁ、私はそんなルディに向き合ってきたよ。今では普通に街を歩けるようになったよね。嫌いならそんなことできないよ」


 言葉では伝えなくても、私はルディに家族のような愛情は持っていた。最初は可哀想な子から始まったことだけどね。


「アンジュ……明日このまま上に行って兄上に婚姻の許可をもらいに行こう」

「明日はこのまま下に潜るから、上にはいかないよ」


 っていうか。婚姻は一年後……いや、あの誓約書の書き方だと婚約を一年間としてその後婚姻とあった、一年以内だったらという誓約はなかったということは婚姻を一年以内にすることは可能?一年以上に引き伸ばす事以外なら可能とも解釈される?いやあの回りくどい書きかただと、どうとでも取れるような気がする。 


「では聖女お披露目パーティーを婚姻パーティーにすり替えよう」

「ルディ。ブタ貴族をブヒブヒ言わすぞ作戦ができなくなるから駄目」

「アンジュ。そんな作戦名だったか?」


 そこを真面目に拾い上げなくていいよ。とにかく、ルディの機嫌は良くなったようだ。明日は、世界の崩壊を見せつけられるのだろう。だから、もう休みたい。





300話のおまけ話。


「るでぃ兄。手を繋がれたら、私何もできないよ」


 5歳児ぐらいの幼女が、15歳ぐらいの少年に手を繋がれ、森の中を歩いている。まるで、森の中を散策しているようだ。


「アンジュが迷子になったら困るだろう?」


 黒髪の少年は眩しい物を見るような視線を、銀髪の幼女に向けている。しかし、アンジュと呼ばれた幼女は、呆れた視線をルディと呼んだ少年に向けていた。


「これぐらいの森で迷子にはならないし」


 幼子が虚勢を張っているように見えるが、足取りはしっかりとしているし、行き先も理解しているような感じだ。


「アンジュ。シュレインが構いたいだけだから、手をつなぐぐらいいいだろう?」


 黒髪の少年と銀髪の幼女の後ろには、二人に付き従うように付いてきている金髪の少年がいる。金髪の少年は幼女の味方というよりも、黒髪の少年の意向を優先させるように、幼女に我慢しろと言っている。やはり、幼女が迷子になることを避けたいのだろう。


「ファル様。るでぃ兄に手を繋がれると、私が獲物を取れないからイヤ!」

「アンジュ。俺が代わりに狩ってやるといっているじゃないか。それに、これは俺達が受けた依頼だぞ」

「えー。昨日考えたのを使ってみたい」


 アンジュは何か考案したものを使用したいようだが、所詮5歳児の考えだ。普通なら、二人の少年は二言返事を返すことだろう。


「アンジュ。それはここではやめようか」

「アンジュ。やめろ」


 少年二人からやめるように言われてしまった。アンジュは頬を膨らませて、不服を顕にしている。


「絶対にいいと思うのに!」

「そう言って昨日は何をしたか忘れたとは言わせないぞ」

「ちょこっと森がハゲた」


 アンジュは悪びれることもなく、森を破壊したことを口にした。少しならいいだろうという感覚だ。


「っんなわけ無いだろう!俺の横を掠って行ったよな」


 ファルと呼ばれた金髪の少年は、己の横をかすめたことに文句があるようだ。それはそうだろう。下手すれば、当たっていただろうと。


「ファル様。もう少し大人に成ったほうが良いよ。風の魔術が横をかすめるぐらいあるよね?」

「あれがただの風の魔術だって言うのか?1キロメル()ほど木々をなぎ倒していたよな」


 1キロメル()。言葉では短いが、距離とすれば、それなりの距離だ。その範囲の木々をなぎ倒したということは相当なことだ。


「それはちょっと魔力量の調節を間違っただけだよ」

「それで死にかけた俺はどうなんだ!」

「いや、結局避けたじゃない」


 アンジュとファルの言い合いは止まらないらしい。ファルは攻撃が当たっていたら死んでいたと主張し。アンジュは避けたのだからいいだろうという感じだ。


「るでぃ兄もそう思うよね。ファル様が避ければいいって」


「いや、避けなければ死にそうになるのはいやだ」


 アンジュは手を繋いでいるルディに同意を求め、ファルは当たれば死ぬような魔術を使う奴が悪いという。


「そうだな。アンジュの言う通りファルが避ければいい」


 ルディは先程の態度から一転し、アンジュの言葉に同意を示す。


「シュレイン!直ぐにアンジュの味方をするのをやめろ!俺が死にかけるじゃないか!」


「何を言っているファルークス。アンジュが笑って言っているんだ。それだけでいいだろう」


 違った。アンジュが笑っていることが、全てのようだ。


「アンジュが笑っているのはいつもだ。いいかシュレイン、その手を絶対に離すなよ。今日の獲物はボアだ。絶対に『肉!』っと言ってアンジュが駆け出すのがわかっているからな」


 どうやらルディにアンジュの手を握っておくように言ったのは、ファルだったようだ。それもアンジュが魔物であるボアを見て、駆け出すと言っている。


「えー!肉を狩るための技を使わせてくれないの?」


「じゃぁ。一頭だけ……」

「シュレイン!絶対に駄目だ。因みにどんなヤツを使うつもりだ?アンジュ」


 ルディが許可しようとしたのを阻止し、ファルはアンジュに問いただす。何をしようとしているのかと。


「え?まずは数頭を追い立てて、一気に仕留めるために『響声(レトノ)』の拡大バージョンで脳震盪を起こさせるの!」

「それ、俺達に被害が及ばないか?」

「てへ」


 アンジュは、はにかんだ笑顔でごまかしている。内容を聞く限り被害は周りの者達にも行くだろう。


「そうか。アンジュは凄いことを考えるな」


 ただ一人ルディだけは、アンジュを褒めていた。ここは褒めるのではなく、諌めることが正しい行動だ。


「シュレイン!」

「アンジュが可愛いから良いじゃないか」

「はぁ」

「ファル様、おつかれ?」

「いつもアンジュの所為で疲れるんだ!」


 いつも。これが彼らの日常風景のようだ。そんな彼らは、言い合いしながらも楽しそうに森の奥へと消えていったのだった。






いつも読んでいただきまして、ありがとうございます。


以前、予告していたように300話のおまけ話を書かせてもらいました。

教会に居た頃の冒険者の依頼を受けていたルディとファルとアンジュの話でした。


面白かった。良かったと。評価いただけるのであれば、下↓の☆☆☆☆☆で評価していただけると、嬉しく思います。

ご意見ご感想等があれば、感想欄からお願いします。

300話もお付き合いしていただきまして、ありがとうございます。


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