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聖痕の聖騎士〜溺愛?狂愛?私に結婚以外の選択肢はありますか?〜  作者: 白雲八鈴


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290 異様なのどの渇き

「違いますよ」


 直ぐに神父様から否定された。え?こんなに広いのに違う?


「これは幻影ですか?」

「ニセモンくせーな」


 鬼の二人は神父様作、収納拡張袋から荷物を出しながら言ってきた。これが幻影?でも言われてみれば、草木の匂いがしない。


「じゃ、ここは何?」


「何でしょうね?」


 一度来たことがある神父様がわからないのだから、私がわかるはずないよね。


「以前来たときも、ただの風景だったんだ。別の方向に進めるのかと何度か試したが、壁にぶつかってしまったから、元は上の階層と変わらない通路なんだろうと結論づけた」


 ファルは以前来た時に何度か試したものの、進める方向は決まっていたと言う。それは果てしなく続く(わだち)の道ということだろう。


「ふーん。で、この風景がどこの風景かぐらいは調べているんだよね」


 神父様とファルの言葉の端からは、あと十階層もこのような風景だけの通路が続くと予想ができる。しかし、ただ風景を見せつけるためだけに、十階層も使うだろうか。


 まぁいい。今は喉が乾いたから、お茶が飲みたい。ん?さっきまで、何も思わなかったのに、異様に喉の乾きを感じる。


 暑い?別に暑いわけじゃない。では、空気が乾燥している。これはダンジョン内なので、あり得ないことはない。

 あとは緊張……プレッシャー。何か術が発動している?


 そもそも、使えないという魔力はどういう状況なのだろう。


「ここは国の最東端の場所ですよ」


 東……第9部隊の管轄地だね。うーん?あの時はかなり国境近くだったけれど、この風景に全く見覚えがない。


「神話時代のといえばいいでしょうか?」


「どっから神話時代が出てきたわけ?そんな資料は残ってないと思うけど?」


 この国の歴史は千年前の初代国王から始まっている。それ以前が神話時代とされているけれど、神々が人という神に似せた存在を創ったという、ありきたりな話しか存在しない。

 そこには太陽の聖王も月の王妃の話も出てくることはない。


「残ってはいませんが、進めばわかりますよ」


 進めばわかる。この轍の道をということなのだろう。


「まぁいいけど、喉が渇いたから冷たいお茶が飲みたい」


 さっきから異様に喉が渇く。もしかして最近、何かと甘い物を食べていたから、糖尿病に……私、ヤバいかもしれない。


「どうぞ、アンジュ様」


 茨木が立ったままの私に、ひんやりと冷えたカップを渡してくれた。あ……入れ物ごと冷やしたっていう感じね。


 因みに私が背負っているリュックの中にも、水は入っている。だけど残念ながら常温の水なので、今はぐぐっと冷たい水を飲みたい気分なのだ。


 私は茨木の妖力でカップごと冷やされたお茶を飲む。ひんやりと冷えたお茶が、体に染み渡る……今思ったけど、妖力で冷やされているって言うことは、茨木の妖力が混じっているって事無いよね。


「ん?あれ?」


「どうした?アンジュ?」


 ルディが何かあったのかと、私の顔を覗き込んできたのだけど、私は気がついてしまった。


「魔力。使えないということではなくて、奪い取られているってこと?」


 私は天使の聖痕を出現させる度に、魔力を奪い取られ、聖痕を仕舞うと意識を失う状態になってしまうので、魔力を維持するために、ちょっと自分の中に仕掛けを施していた。

 魔力は魔脈を伝って流れるのなら、流れないほど強固に固めて蓄積しておけはいいのではないのかと。


 これは体の中で魔石を作ることと同意義で、危険なのは変わりない。しかし、魔力の枯渇をするか、体の中に魔石を作るかという選択肢をするのであれば、魔石を作るほうがいいと私は考えた。


 先程、私の中に茨木の妖力が込められた異物が入って気がついた。私の中の魔石から徐々に魔力が体に流れていき、霧のようにふわりと消えていくのだ。

 これは魔力が使えないように封じられているわけではなく、魔力が奪い取られているということだ。


 ならば、この風景の幻影が作られた原理がわかるというものだ。


「奪い取られている?そうなのか?」

「アンジュ。魔力を奪い取ったからといっても、この先なんて魔物は全く出ないぞ」

「何故、そう思ったのですかね?」


 私の言葉に三人がそれぞれに反応を返してきた。


「魔力を奪い取られることが多いからね。ちょっと工夫をしてみたの。ある程度までは奪い取られるけど、それ以上は普通では奪い取られないようにね」


 するとファルから呆れた視線を向けられ、神父様からは胡散臭い笑顔を向けられた。


「アンジュ。それはどうやっているんだ?」


「それは秘密」


 これがバレたら絶対に怒られると思うんだよね。魔物じゃないんだぞみたいな感じで。


「さっきまで、すごく喉が渇いていてね。意味がわからなかったのだけど、外部干渉を受けているからかなって思ったんだよね」


 ルディ。私を抱き上げて、締め上げても、その干渉から逃れることはできないと思う。


「それは第一階層のことですか?」


「違う違う。今もってこと。この幻影を構成している魔力は、皆から集めた魔力で作られている。魔力を奪い取るために、干渉し続けられている。まぁ、これは私の魔力が全て奪われていないからだと思うけどね」


 そもそも、こんなに大規模な幻影を作り出すことが、無理な話なのだ。どこにそんな魔力を投じて維持し続けられる人物がいるというのだろう。はっきり言っていない。

 ならば、複数人の魔力を投じれば、可能ということになるのだが、どうやって魔力を奪いとったかという話になるのだった。



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