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聖痕の聖騎士〜溺愛?狂愛?私に結婚以外の選択肢はありますか?〜  作者: 白雲八鈴


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273 不機嫌な二人

 私の中では、ドナドナが流れている。ガラガラという車輪の音とそれに合わせたように響く振動が、私の心境に拍車をかけている。


 あの後、聖騎士団の正門前に豪華な馬車がやってきて、乗せられて移動中なのはいい。元から王城に行く手段は馬車移動だと聞いていたから、そこは問題ない。


 この王様が用意したと思われる馬車は、八人乗りという私が今までお目にかかったことがないほど、広く豪華な馬車だ。

 石畳の振動がガタガタ響くかといえば、腰に響くこともなく、カタンカタンという軽い振動だ。実に貴族仕様と言って良い馬車だ。


 そんな八人乗りという豪華仕様なのだから、余裕をもって座れるのだけど、私の右側にはルディが、左側には神父様が陣取ってる。

 それも二人共何故か機嫌が悪い。いや、ルディは起きたときから機嫌が悪かった。そして神父様は剣の名が気に入らなかったのか、ヒシヒシと機嫌の悪さが伝わってくる。


 そんな私達の向かい側には、四人がけの座席に一人悠々と座っているファル。まるで自分は関係ないと言わんばかりに、何か本を読んでいる。

 酒吞と茨木はというと、荷物があるからというよくわからない理由で、屋根の上の荷台に登ってしまって、馬車の中には居ない。


 わかってくれるだろうか。この連行されている気分になっている私の状況が。


 しかし、いい加減この空気を入れ替えたい。というか、私はファルの横でもいいと思う。

 そう!私がファルの隣に移動すればいいのだ。この両隣の二人を出し抜くにはどうすればいいだろう。


 そうだね。先ずは幻術で私の分身を作ってから、それと入れ替わるように、私自身を……


「アンジュ。いらないことを考えているだろう」


 ふぉ!魔王様から冷たい視線と共に、低い声が私に突き刺さってきた。

 何故にバレた。ちらりと横目で仰ぎ見ると、めっちゃ睨まれている。あれか。魔王様には心を読む能力があるのか!


「考えているだけだし」


 まだ、考えているだけ。実行には移していない。


「何を考えていたか言ってみろ」


「秘密」


 私はそう言ってへろりと笑う。


「アンジュ!」


 はぁ、本当に今日のルディは機嫌が悪い。いったいどうしたって言うのだろう。私が何かした?いや、特にこれと言ってした記憶はない。

 そうだね。

 私は幻術で今の状態の私を作って、そのまま影に潜るように、身を沈める。そして、ふっと浮上してファルの隣の席に、出現した。


「おまっ!」


 突然、隣に現れた私に驚いたファルは読んでいた本を床に落とし、窓際まで移動する。

 そこまで、驚かなくてもいいのに。


 私は目の前で座っている、幻術の私を消して、ぽっかりと空いた空間を指して言った。


「二人して機嫌悪いし、その席居心地が悪すぎるのだけど?」


「だからって、俺の横に来るな!俺がとばっちりを受けるだろう!」


 一人、俺関係ないしという雰囲気を出していれば、巻き込みたいと思うのは人の心理というものじゃないかな?


「だってさぁ。ルディは朝から機嫌が悪いし、神父様は剣の名前が気に入らないのか機嫌が悪いし。今からダンジョンに行くっていうのに、機嫌が悪い二人が一緒なんだったら、一人でダンジョンに潜るよ」


 どんなダンジョンかは、わからないけど、ギスギスした感じでダンジョンに行ったら、命取りになる可能性もある。足を引っ張る人がいるのなら、ダンジョンに行く前に切り捨てるべきだ。

 私はそんなことで、命を落としたくはない。


「はぁ。すみませんね。これから行くダンジョンにはあまり行きたくはなかったので、それが出てしまったようです」


 神父様が、ため息を吐きながら答えてくれたけど、神父様が行きたくないって、何か天変地異でも起こるのだろうか。チートな神父様に弱点があったなんて!


「あと、おざなりに剣の名を与えられたことも、腹立たしかったですね」


「適当なのは認めるけど、剣の形状が勇者の聖剣と言って良いぐらいに、厳つい感じになったからいいじゃない」


 適当に剣の名を付けたことに、文句を言われたけれど、私が意図しない形に変化したのだから、よしとして欲しい。

 何故か。剣の刃だけでなく、柄も鞘も金色に光り輝いて、大きさも大剣と言って良い感じになった。それも常に金色のエフェクトをまとっている。


 これこそ伝説の勇者の剣と言っても過言ではない。


「それで、神父様は何が苦手なの?」


「苦手というよりも、ダンジョンに過去を見せつけられるのが嫌なのですよ」


 あ、これはふれたらいけないやつだ。神父様は例の公爵令嬢との過去をみせつけられるのだろうね。『ダンジョンに』ってところが、よくわからないけれど。


 神父様の話から強制的に変えるべく、ルディの方に視線を向けた。


「じゃぁ、ルディは何に怒っているわけ?」


 私は向かい側で視線を合わせているルディに問いかけた。すると、フッと視界が揺れ、何故かルディが私を上から見下ろす位置に。

 あれ?向かい側にファルがいるってことは、私が移動させられた?


「アンジュ。マロとは誰のことだ?」

「ん?マロ?」


 なに?マロって?


「寝言で『マロ大好き』って言っていたよな」


 ルディ、悪いけど寝言は記憶してないよ。そもそも、何の夢を見ていたのかも覚えていないから、そんなことでピリピリ怒らないで欲しい。



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