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聖痕の聖騎士〜溺愛?狂愛?私に結婚以外の選択肢はありますか?〜  作者: 白雲八鈴


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242 雨天に伏す神獣

 天を覆っていた膜がガラスが壊れるようヒビが入り、双子の結界が破壊された。そう、世界の力が介入したため、結界が壊され地面にパラパラと結界の欠片が落ちてきている。ルディが壊したときと似た現象だ。


 いつの間にか止んでいた雨が再び頬に落ちだす。恐らく水蛇を出した時点で雨が止んでいたのだろう。


「アンジュ!他の者たちは騎獣に乗って離れて行った。アンジュもここから離れるぞ」


 ルディに腕を引っ張られるけど、私はまだやることがある。


「ルディは先に皆のところに行ってくれていいよ。私は今開こうとしている常闇をこじ開けるから、多分第9部隊の駐屯地のところと同じ様になると思うから皆にはもう少し離れていてって伝えて欲しい」


 龍神の女将さんぐらいなら側に発生した常闇でも飲み込まれると思う。だけど、私の足元にいる玄武は小さな常闇では世界の闇を通ることはできない。


 あ、玄武の蛇の首がこちらに向いた。私は右手を突きだすように前に出し結界を張ろうとした。

 が、蛇の巨大な首が体液を撒き散らしながら飛んでいく。それと同時に地面のような巨体が暴れ、亀の頭から頭が割れるような叫声が吐き出された。

 余りにもの暴れ具合だったからだろうか。巨大な身体を押さえていた巨木の根が引き抜かれ、玄武を押さえているものが無くなってしまった。


「おや?首を斬れば大人しくなるかと思ったのですが、違いましたね」


 右手に剣を下げた神父様が暴れる巨体を見下ろすように、空中に立っていた。そして、私は同じく空間に立っているルディに抱えられている。私、自分で立てるよ。


 しかし、流石神獣と言うべきなのだろうか。蛇の首は既に元通りに戻っていた。そう、切られたはずの蛇の頭が復活していた。そして、とても睨まれている。


 当然、まずはこの巨体を黙らすことが優先すべきことだ。それはこのまま移動されては困るからだ。


 私はルディから飛び降りる。


「アンジュ!」


 ルディの声を背中で聞きながら、重力の聖痕を使って蛇の頭に踵落としをし、そのまま落ちながら亀の頭に向かって方向を調整していく。そして、下から蹴り上げるように全身を使ってバク転しながら顎に重力がかかった一撃を浴びせた。

 そうするとどうなるか。後方にある蛇の頭な地面に撃沈し、前方にある亀の頭は雨空を見上げる。その反動により若干前足が浮いた隙を狙って、背中の甲羅の前方に手を掛け、亀の頭に作用点を持っていき、そのまま地面に叩きつけるように聖痕の力を強めた。


 小山のような甲羅を地面に付け、4本の太い足を雨空に向け、二つの頭は泡を吹きながら地面に項垂れている。

 よし。これで、少しは時間稼ぎができただろう。


 ふと風が頬を撫でる。首を右に傾ける私の頭部を突き刺すように指が揃えられた白い手が横目で捉えた。


 玄武が暴れ回ったお陰で龍神の女将さんが解放されたのだろう。そして、振り向くと二本の腕以外が黒い鎖に覆われた、呪われた何か的なモノがいた。その鎖の隙間から黒い瞳が除き見ているのだ。

 魔王様も怖いけど、怒れる神の怖い。


 呪われた風貌の龍神はそのまま私の首を狙うように、右手を横にスライドさせてくる。その右手の爪はまるで獣のように尖った爪が生えており、私の首など簡単に掻き切ってしまうだろうということはありありとわかった。


「アンジュ!無茶をするな!」

「神とは何とも恐ろしい存在ですね」


 その言葉と同時に黒い鎖から木の枝が突き出てきた。その枝からは赤い体液が滴っている。

 そして、呪われた龍神の背後から光が漏れたと思えば、力を失ったように地面に落ちていった。

 ルディと神父様はいったい何をしたのだろう。


「アンジュ。一人で突っ走るな」

「あの龍神の姿。変化していましたね」


 激おこ魔王様とにこにこ神父様が私の目の前にいた。そして、二人共剣ではなく、その辺に落ちているような木の枝を持っている。あ、うん。頭ではそれが必要だと理解しているけれど、絵面的におかしい。まるでゲームの主人公が“ヒノキの棒”で魔王戦を挑んでいるかのようだ。


「姿が変化していた?」


 神父様がおかしなことを言っている。龍神の女将さんの姿が変化していたようだけど、私には呪われた風貌にしか……まさか、神父様も黒い鎖が見えていたってこと!


「黒い鎖にぐるぐる巻にされた呪われた龍神ってことだよね」

「違います」


 え?違う?私には神父様が見ている世界は観ることができないらしい。私の視界は黒く染まってきている。

 いや、徐々に黒いモヤが辺りを支配しているのだ。今はもうモヤが吹き出ていた場所にいた存在は目視することができなくなっている。もしかしたら、既に常闇に呑まれてしまったのかもしれない。



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