表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
聖痕の聖騎士〜溺愛?狂愛?私に結婚以外の選択肢はありますか?〜  作者: 白雲八鈴


この作品ページにはなろうチアーズプログラム参加に伴う広告が設置されています。詳細はこちら

243/503

240 ファル様に任せるよ!

 ルディに握られた手をそっと下ろし、痛いから緩めて欲しいなという視線を、ルディに送ってみる。しかし、ルディは神父様を睨んでおり、私の送っている視線には気がついていない。

 しかも、リザ姉の身体強化が効いている所為かいつもより痛い気がする。


「ルディ。手が痛い」


 私が言葉にすれば、やっと普通に握ってもらえた。離してはくれないんだね。


「どうしましたか?アンジュ」


「たった今、私は失敗したことに気が付きました」


 私はこの選択肢を間違えてしまったことを神父様に言う。


「何がですか?」


 私の言葉に神父様は動揺することもなく、いつも通りニコニコとした笑みを浮かべていた。


「この結界です。これは世界に干渉している結界なので、もしかしたら世界から強制解除の手が入るかもしれません」


「強制解除ですか?確かにヒューゲルボルカとアストヴィエントの二人がかりで維持が難しいということは、考えられることですね。それで、どうしたのです?」


 はぁ。神父様は私の選択したことが失敗するかもしれないことを理解していた。だったら、私が言っているときに指摘してよ!


「神という存在を弱らせることができるのならいいのだけど、私は最悪難しいと考えています。だから、最善は尽くしますが、駄目ならここに常闇を開きます。それもかなり大きなものではないと、ここにいる存在を呑み込めないでしょう。ですから、そうなった場合に皆を更に後方に下げてください」


 私は常闇を開くのにこの場から動けない。そして、常闇を強制的に開くと、第9部隊の管轄地で起きたときのように、黒い鎖が飛び出してくる可能性が高い。あの時はワイバーンが居たため、上空に上りながら避けたけれど、今は狼型の騎獣だ。ワイバーンほど機動力がないので、最悪黒い鎖に捕まってしまう可能性が出てきたから、それは神父様から指揮をとってもらわないといけない。


「そうですね。軟弱な者はそのまま常闇に落ちればいいということには賛成ですね」


 ちょっと待って!そんなこと一言も言っていないから!神父様が最近の騎士団の者たちの質が悪いと言っているだけで、共犯者みたいな扱いはしないでほしい。


「リザ姉とロゼは常闇に落とさないでよね。じゃ、なるべく早く決着をつけるので、全力で行ってきまーす!」


 双子が結界で時間加速をしてくれたけれど、その時間さえもある意味ないと言える。だから、私も出し惜しみはしない。


「アンジュ待て!」


 豪雨と言っていい雨の中に飛び出す私を引き止めるルディの声を背に、私は右目に手を当てて天使の聖痕を取り出して、頭上に掲げる。そして、重力の聖痕で龍神の女将さんを見下ろすように宙に漂う。

 私の存在に気がついた龍神の女将さんはノロノロと顔を上げる動作がみられた。


 その前に私はやるべきことをしよう。


「『苦雨はやがて甘露の雨となり、天の恵みとなろう。降り注ぐ太陽の陽は冬の終わりを告げ、恵みの春を迎え、やがて豊葦原之千秋長五百秋之水穂国に至ることだろう』」


 私の天使の聖痕が太陽の聖痕だというのであれば、雪ぐらい溶かせるのではないのかと安易な考えからの、ぶっつけ本番の聖痕と魔術の併用だ。

 言い換えれば、人々を苦しめる雨は人々に恵みをもたらす雨となり、太陽は雪を解かして春となり、恵みの雨と共に瑞穂の国を創ることだろうという意味。


 私はここでこの大量に積もった雪を解かせばいい。後はファルの仕事だ。


「アンジュ!本当にこれでなんとかなるんだろうな!」


 下で叫んでいるファルにさっさとヤレと視線で促す。

 雪はほどんど溶けてきている。上から見ると龍神の女将さんの足元が薄っすらと見えてきた。

 うん。島だね。そして、女将さんと目が合ってしまった。驚きと困惑の視線だ。


「アンジュ。だから、行動を起こす前に言うようにと言っているだろう」


 背後にいつの間にか魔王様が降臨していた。神父様にお願いをしているときから、黒いモヤのようなモノが出てきていたけれど、それから逃げるべく飛び出して来たものの、私の魔術を模倣することに長けたルディから逃げることは出来なかった。

 魔王様は透明な盾の上に立って私を見下ろしていた。


「ルディ、ファル様が頑張っていてくれているから、水が無くなったら、総攻撃だよ」


 私の行動に対して文句を言っているルディにしれっと話を変えて返事をする。

 ファルには雪解けの水をどうにかして欲しいと頼んだ。結界を張れば結界の内側だけが水に満たされ、水の逃げ場がなく溜まり続けることになる。

 その水をファルの植物に吸い取ってもらっているのだ。水生木(すいしょうもく)

 大量の水を取り除く方法を考えてはみたものの、神が作り出した水を下賤なる者である我々の火で蒸発出来るのか?蒸発しても上空に行けば再び地上に降り注ぐだけなのではないのだろうか。

 ならば、消そうとするのではなく消費しようという考えだ。


 ファルの聖痕によって生み出された植物は中央の女将さんがいる島に根を絡ませるように大きく成長していっている。その成長スピードは早くすでに100メル(メートル)は超えているだろう。私の太陽の聖痕で溶けた雪の水は半分以下まで減っており、残りの水を吸い取るためにか、双子の結界に沿うように紅樹(マングローブ)のような植物が生えて来た。


 さて、舞台は整った。蛇が出るか鬼が出るかと言いたいところだけど、龍神の女将さんと亀が相手だ。

 ここからが本番だ!




評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ