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聖痕の聖騎士〜溺愛?狂愛?私に結婚以外の選択肢はありますか?〜  作者: 白雲八鈴


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236 何を心配しているのだろう

 私達は狼型の騎獣に乗って移動している。先頭は頬を赤く腫らした第1部隊長だ。あの後答えられず、思いっきり神父様に殴られていた。

 その第1部隊長に案内される形で移動している。しかし、妹よアレのどこが良かったのか未だにお姉ちゃんは理解できない。


 第1部隊長の後ろには双子が続き、その後にルディに抱えられた私が騎獣に乗っており、並走するようにファルがいる。その後ろには第12部隊長さんとリザ姉とロゼがいる。そして、鬼たちの二人はここには居ない。


「ところどころによくわからない生き物の死骸があるな」


 ルディが雪の中にあるモノに視線を向けて言っているけれど、私には黒い鎖にぐるぐる巻にされている物体としかわからないので、ルディの言葉に答えることはできない。


「アンジュ。シュテンとイバラキを先行させているが大丈夫なのか?」


 人の声よりも雨の音の方が大きく聞こえる状況でファルは『響声(レトノ)』を使って話しかけてきた。


 そう、酒吞と茨木には先に行って、今回の討伐対象である龍神と玄武の場所を探してもらっている。


 彼らも私と同じく集団行動は無理な鬼たちだ。だから、先に行ってもらっているのだけど、どうやら、その辺りにいる異形の露払いもしてくれているらしい。私にはわからないけれどね。


「ファル様。大丈夫だから。酒吞は退屈しなければいいと言っていたし」


「いや、その大丈夫じゃない。二人だけ先に行かせても問題がないのかという意味だ」


 ファルは何を心配しているのだろう。二人は言うなれば、将校(オフィシエ)と遜色ないほどの力を持っている。いや、まだ私は彼らの本気を見ていないのでそれ以上だろう。


「アンジュ。ファルークスは誓約で縛らない者たちを自由にさせていいのかと言っているのですよ」


 ファルの反対側から神父様の声が聞こえてきた。いい笑顔で第1部隊長を殴った神父様が。そして何故か私はルディにフードを深くかぶらされ、神父様の方を見ないようにされていた。


 誓約ね。多分彼らをそんな物で縛ろうものなら、その信頼関係は破綻すると思う。彼らは私と一緒だ。何もかも自由なのだ。だから、今の関係性が一番いい。


「神父様。私でわかっていると思ったのですけど?」


 すると神父様はクスクスと笑い始めた。そして、私のお腹がギリギリと締め付けられていく。

 ルディ。ただ神父様と話しているだけなのに絞め殺さないで欲しい。


「だそうですよ。ファルークス」


「はぁ。あの二人が俺には未だによくわからない」


 ファルが項垂れながら言っている。一応上官として彼らを管理する側だから、彼らの扱いに困っているのかもしれない。だけど、比較対象が側にいる。王家で管理されている黒狐の者たちだ。

 彼らに掛けられた誓約は歪みに歪み、その呪は彼ら自身を苦しめている。彼らの自由への渇望と王家への忠誠。あの偽物の王様の本物の王様への異常な忠誠もそう在らなければならないと思わされている可能性がる。そう在らなければ、呪いのように変質した血の海に苦しめられると。


 だから、私は酒吞も茨木も朧にも基本的に自由に過ごしてもらっている。特に私からは何も言わない。


「ファル様。深く考えすぎ。それからルディ、力を緩めて欲しい」


 まぁ、遠くの方で爆音が聞こえているけど、気にするほどのことじゃない。

 そして、目的地に近づいてきたからか、前方にいる第1部隊長とヒューとアストが魔術を使い出した。雨で視界が悪いのと三人の影で何が起こっているのか私には確認できない。


「ヴァルトルクス第12部隊長。リザネイエ、ロゼ。散開して来る敵を始末しなさい」


 神父様の命令で、後ろにいた三人が、騎獣を促して左右に別れていった。しかし、私達の進む速度は変わらない。

 私達のすべきことは雨を一刻も早く止ませること。騎獣だからこの様に進めているけれど、人はこの雪と雨の混じった地面を思うように進めないだろう。そして、その雪混じりの水が街を襲わないようにしなければならない。


『キャハハハハ』


 突然、笑い声が聞こえてきた。それも甲高い子供のような声だ。


『当たれ。当たれ。当たれ。アハハハハ』


『ほら、ほら、逃げ惑え』


 ん?何が起こっているのだろう。前方三人が攻撃をしているから、攻撃してくるモノを倒しているものと思っていたけど、何か違う?

 どちらかと言えば、狩られている側が私達のような言葉だ。


「貴方達は見た目で敵を判断するのですか?女子供の姿をしていようと、そのモノたちは異形ですよ!」


 神父様から怒声が響き渡った。

 黒狐たちを間近で見ている神父様からの言葉だ。異形の姿が本来の姿では無いことを理解しているのだった。


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