222 計画
「ふーん。常闇ごと封じたのか。で?その後問題があったんだって?」
にこにこと笑顔で王様がその後のことを聞いてきた。
「大したことはありませんよ。何かを行ったのはリュミエール神父ですから」
ルディはしれっと神父様の所為にした。これには神父様も反論する。
「シュレイン。それは正確ではないですね。アンジュの空からの第9部隊の駐屯地への襲撃。アンジュによる第9部隊と第4部隊の壊滅」
ぎゃー!全部私が悪いことになってる!!それも正確じゃない!
私が文句を言おうと口を開こうとすれば、神父様から視線が送られてしまったので、口を開くことはやめた。
「はっきり言って、聖騎士と名乗っていながら、弱すぎることが問題でしょうね。本当に何の為の聖騎士なのでしょうかね」
神父様の言葉の中にはきっと“聖女より弱い聖騎士など意味があるのか”という意味が込められているのだろう。聖騎士とは聖女の剣であり、盾であるにも関わらず私に負けている時点で駄目ではないかと。
すると白銀の王様からクスクスと笑い声が聞こえてきた。
「一人の将校に負ける聖騎士たちね。私は聖騎士という者たちに関わりがないから何とも言えないけれど、そんなことで、200年周期の“宴”を戦い抜けるのか疑問になるね」
「難しいでしょう。現在でも常闇から溢れ出てくる異形に第1部隊と第7部隊からの報告で、戦況は芳しくないと報告がありましたからね」
侍従が何かの紙を見ながら報告をしている。各地で常闇から魔物や異形が現れているのだろう。
「脳みそが腐り切っている貴族共はお気楽でいいよね。こんな時に聖女のお披露目のパーティーを開くって忙しそうにしているよ。本当に彼らが最前線で戦えばいいのに」
侍従から報告を聞いた王様がにこにこ笑顔を浮かべながら、毒を吐いた。
国を上げての聖女お披露目パーティーを計画しているらしい。
この王都に居ると、他の地域で何が起こっているか直ぐには耳に入ってこない。精々行商人の噂話や、吟遊詩人の歌で他の地域の事を知ることができるぐらいだ。
一応新聞という情報誌はあるけれど、それは王都のことを王都中や地方に発信する物であるため、地方の情報は届きにくいのが現状だ。
だから、貴族の人たちは異形がこの世界で暴れ回っているだなんて知らないのだろう。なので、パーティーをしようという話になっているのだろうけど、私には関係ないことなので、聞き流しておく。相変わらず王様は物騒なことを口にする。
「こんな時にパーティーですか」
神父様も呆れた様子でため息を吐いている。
「しかし、聖女シェーンをそのまま出席させていいものか、迷いますね」
侍従が困ったように首を傾げているけれど、貴族の前にそのまま出していいのかということなのだろうか。
「こちらで影の者を付けておきますよ」
偽物の王様が護衛の者をつけると言っている。パーティーで何か事が起こるという意味?
「プルエルト公爵が動くかもしれないね。あ!良いことを思いついた」
王様が豚貴族の名前を出して、良いことを思いついたと言っているけれど、ろくなことではない気がするのは私だけなのだろうか。
「聖女の子を囮にしよう!それでプルエルト公爵の首を落とすっていうのはどうかな?」
やっぱりろくなことではなかった。聖女の彼女を一人の状態を作って、誘拐しようとしたところで、現行犯逮捕しようとしているのだろうけど、未遂では公爵の座から引きずり下ろすには、少々罪名が低いと思う。
「兄上それはいいですね。誘拐してもらって2、3日後に救出しようとして、そのまま事故に巻き込まれたということにして、あの女を消せばいい」
「ルディ!」
ルディは誘拐の有耶無耶によって聖女の彼女を亡き者にしようと提案しているけど、だから彼女に何かあったら、対の聖痕をもっている私に何か影響があったら困ると言っているのに!
この兄弟は人殺しの相談を良くしている。本当に止めて欲しいのだけど。
「王城で誘拐となれば、王城の警備はどうなっているのかと責を問われかねません」
侍従が紙にメモを書きながら言ってきた。そうだよ。誘拐することに誘導するのはだめだと思うよ。
「では夏の離宮にしますか?今の時期ですと凍てつく湖に囲まれた離宮です。警備は離宮に渡る唯一の橋のみ。聖女の安全を考え周りを水に囲まれた場所にしたと言えばいいでしょう」
神父様が人の良さそうな顔をして、他の三人の意見をまとめる言葉を言った。誘拐してもらう為に警備を薄くする状況を作り、誘拐されたことを責められぬように、外部からの侵入が難しい場所を選んだと、理由をつければいいのだと。




