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聖痕の聖騎士〜溺愛?狂愛?私に結婚以外の選択肢はありますか?〜  作者: 白雲八鈴


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220 雨の日の朝


 ふと、意識が浮上した。シトシトという心地よい雨の音が耳に響いてくる。


 ああ、今日は雨が降っているのか。雨の日はとてもいい。あのウキョー鳥が鳴かないのだ。


 昨日は結局あれから色々あり、夜中に王都に戻ってきて、疲れているので今日は雨が降っていた良かった。ウキョー鳥に襲撃されるような起こし方で目覚めたくなかったから。雨の日は朝の訓練が免除されるらしく、他の部隊の人たちも雨の日はゆっくりできると、ロゼが言っていた。


 そう言えば、あれからロゼに文句を言われた。お腹にアザが出来てしまったと。確かに思いっきり殴ったのでアザぐらいはできるかもしれない。そんなことで文句を言われても、それは避けられなかったロゼが悪いと思う。

 しかし、リザ姉にワイバーンで飛んで帰るのに、お腹が痛いと集中できないから治して欲しいと言われたので、薄めれば回復薬を渡したら、ロゼは何も思わずに口に含む姿に、リザ姉は『あっ!』と声を上げ、第12部隊長さんは顔をしかめていた。恐らくルディに脅される第1部隊長さんの現場を見たのだろう。二人して若干顔色が悪かったのだけど、何も知らないロゼに言わなかったのは賢明だと思う。



 はぁ、強制的に起こされる朝より、やっぱり自然に覚醒する朝の方がいい。


「あのウキョー鳥絞め殺す」


「アンジュ。魔鳥が鳴いていても鳴いていなくても、同じことを言っているな」


 ルディがクスクスと笑いながら、額に口づけをしてきた。いや、あれは鳴いていたら苛つくし、鳴いていないと鳴いている日を思い出して苛つく……結局私は苛ついている?!


「おはよう。アンジュ」


「おはよう。ルディ」


 おはようと言いながらもギュウギュウに締め付けてくる。これは私がウキョー鳥に対して絞め殺すと言っているから私もシメられているのだろうか。


 ぐっ!肺から空気が抜けていく……。


「ルディ。苦しい」


 日に日に力が強くなっているのは気の所為ではないと思う。

 私が、身を捩って抵抗すると、力を緩めてくれた。これは私がウキョー鳥を絞め殺すのが先か、私がルディに絞め殺されるのか先かの話になるのだろうか。


「アンジュ。今日は部屋から出なくていいからな」


 え?ぽつんと一軒家すら行かなくていいと?


「何故に?」


「午前中に団長への報告と昼からは陛下が詳細を聞きに来られるからだ」


 あれ?一昨日も聖騎士団にあの白銀の王様って来ていたよね。もしかしなくても暇人!


「王様って暇人?」


 私が聞くと黒目を大きく見開いて、ルディはクスクスと笑いだし、笑いが止まらないのか私の首元に顔を埋める。少しこそばゆいのだけど。


「今まで自由に行動が出来なかったから、その分自由にされているようだ」


 ああ、そうか王様の周りは全て敵だったから、常に行動が監視されていたのか。でも今は、偽物の王様が王様として立っているため本物の白銀の王様は自由を満喫しているということだね。


「アンジュぐらいだ。そう言って兄上に対しても普通に意見を言うのは」


 まぁ、言いたいことは言うからね。……今日はルディが今回の事を報告するのに時間がかかるから、第13部隊の詰め所に行かなくていいと言っている。ということは、散歩に行けるということ!


「ルディ。散歩に行きたい」


「駄目だ」


「散歩」


「駄目だ」


「ルディ。アンジュ、散歩に行きたいなぁ」


 私はヘラリと笑って、散歩に行きたいとゴリ押しをする。


「そう言って、約束した時間を守らなかったよな」


 くっ。やはり、聖女の彼女の尾行したことが、響いているのか。でも、あれも役に立ったはず……はず。

 しかし、このままだと私は今日一日部屋に閉じこもることになってしまう。


「それに雨が降っているのに、散歩を許すはずないだろう?」


 雨が降っていれば、人が居なくていいじゃない。雨の日の散歩もいいものだと思う。


「雨の日の散歩もいつもと違う景色が見れていい」


「駄目だ。段々と寒くなってきたのに、雨に濡れてアンジュが風邪を引いたら、治っても1週間はベッドにくくりつけるからな」


 なんて恐ろしいことを言うのだ。それは私は退屈過ぎて死にそうになってしまう。


「じゃ、ぽつんと一軒家の詰め所に出勤するでいい」


「だから、雨が降っているから部屋にいるように言っているんだ」


 ……これはこれで過保護過ぎるのではないのだろうか。雨が降っているから外に出なくないというのは、会社員であれば認められない休む理由だ。それをルディから出勤しなくていいと言われる私って何?あ、婚約者だった。


 しかし、今日一日部屋に引きこもりかぁ……ん?確かロゼが言っていた。翌日はロゼとリザ姉は休みをもらったと……ということは、リザ姉のところに遊びに行こう!


「だったら、リザ姉のところに遊びに行っていい?今日はお休みだって言っていたから」


「……アンジュ。堂々と俺に浮気宣言をするというとは、わかっているだろうな」


 え?どこが浮気という話になったのだろう?私は同じ4階に住むリザ姉のところに遊びに行きたいと言っただけなのに、瞳孔が開いた目で私を見ないで欲しい。


「ルディ。リザ姉だよ?浮気じゃないよ?」


「そう言ってヴァルトルクスと一緒に夕食を食べていたよな」


 何故に第12部隊長さん限定になっているの!あれは元々リザ姉とロゼが誘ってくれて、荷物を持ってきてくれた第12部隊長さんも一緒にどうかと誘っただけで、その場にはリザ姉もロゼもいたんだからね!

 ぐっ!ルディの魔力が溢れ室内に満ち満ちている。


 ルディの圧迫感に呼吸もままならない私は、私の命を守る為に第四の要望を口にした。


「ルディについていきたいなぁ」


 こうしてウキョー鳥に起こされない朝は、ルディの機嫌を取ることで終わりを告げた。

 いや、朝からとても疲れた私に笑顔で口づけをしてくるルディによって、ファルが呼びにくるまで、ベッドの上に引き止められるのだった。




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