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聖痕の聖騎士〜溺愛?狂愛?私に結婚以外の選択肢はありますか?〜  作者: 白雲八鈴


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219 モブ騎士と鬼と黒狐(酒吞&茨木Side)

酒吞&茨木 Side


「それは手間が増えるので面倒ですよ。あの聖職者の者から死体は回収するようにと言われているので、自力で動けるのであれば、歩いて帰ってもらいたいものです」


 茨木が黒狐の選択肢を面倒だという理由で止めたが、その考えも如何なものかと思わざる得ない。


「そうですか。リュミエール様の命令であれば、放置することはできません」


 黒狐はそう言いながら、手を素早く上に向かって振るうと、逆さまに鎧を引っ掛けていた枝がバキリと音を立てながら折れ、逆さまの鎧と共に地面に向かって落ちてきた。


「うわわぁぁぁぁーー」


 真っ逆さまに落ちてくる鎧から悲鳴が上がっている。どうやら、生きてはいたようだ。しかし、このままだと甲を被っていない頭部から地面に激突し、死に至るだろう。


 落ちてきた鎧の下には勿論、黒狐がいるのだが、彼はそこから逃げようとはぜず、振るった腕を下ろさず、腕を上げたままだった。このままだと鎧に潰されるしかない。だが、黒狐は落ちてきた鎧に対し、首元を掴み、地面に激突するしか無い勢いを押し殺すように鎧の身体を引き上げ、鎧の足から地面に着くようにした。


「死ぬかと思った」


 鎧をまとった人物からすれば、生きた心地はしなかったであろう、頭からの地面へのダイブは腰を抜かしたのか、地面にへたり込んでいる。


「ありがとう。助かった」


 何とか絞り出すように感謝の言葉を告げて、顔を上げる鎧の男性は、己を見下ろす者たちを見て不可解な者を見る視線を向けてきた。


「お前たちは何処の所属だ?」


 助けてもらったにも関わらず、偉そうな口調で、三人の所属を確認する。


「はん?その前にテメーが名乗れ」


 感謝の言葉を告げた次なる言葉がどこの所属に属しているのかというのは、普通であれば階級が低い者から言うべきであって、所属が違えども、それは変わりはなかった。


「いや、お前ら見習い騎士だろう?言っておくが俺は騎士(シュヴァリエ)だぞ」


「だから何だって言うんだ?」

「別に我々がどこに属しているかなんて貴方には関係がないでしょうに」

「……」


 酒吞も茨木も相手が騎士(シュヴァリエ)だと言っても態度を改めることはなく、答えることもしない。そして、黒狐は話すことはないと言う感じで、言葉すらなかった。


「はぁ。その感じは第13部隊の者か。常識が通じない第13部隊。……そう言えば、お前さっき『アンジュ』って名前を出していたよな」


 鎧を着た者は黒狐に視線を向けて尋ねたが、黒狐は眉間にシワを寄せて嫌そうな表情をしたのみで、返事をすることはない。


「もしかして、さっきの銀髪の彼女は第13部隊に所属しているのか?あんな問題を抱えた集団の中に聖女の様な彼女を配属させるなんて、上はどういう判断をしたのか」


 鎧の者の思考はどうなっているのだろうか。先程この者は銀髪の彼女という者の力によって吹き飛ばされたにも関わらず、第13部隊に所属していることを嘆いている。逸脱した力の鱗片に触れたことに気がついていないのだろうか。いや、きっと銀髪の彼女の外見が起因する考えなのだろう。


「ん?もしかして死神聖騎士に脅されて第13部隊にいるのか?」


 微妙に核心を突いた言葉が鎧の男性から出てきた。


「なら、彼女を死神聖騎士から引き剥がせば、第4部隊に配属されるかも……うっ!」


 鎧の者が下心ありありの本心を口から漏らしてしまった瞬間。なんとも表現し難い圧迫感に襲われてしまった。


「それはツクヨミの旦那を怒らすことだから、やめろよ」

「いいですか。そのようなことは実行しないでくださいね。いいえ、実行する前に消されることになるでしょうね」

「やっぱり、殺そう」


 己は騎士(シュヴァリエ)の階級にいるものだと言った男性は、階級が下である見習い騎士の三人から異様な圧迫感を感じて、地面にへたり込んでしまった身体を引きずって、三人から距離を取ろうとする。


「別にお前がツクヨミの旦那に殺されようが関係ないが、とばっちりがこっちに来るのだけは勘弁だ。だから、そんな考えをもたねぇように、シバいておかねぇとな」


 酒吞がそう言うと、ガタイのいい身体が一回り大きくなったかのように膨らんだ。


「そうですね。アンジュ様の力に抗うことができなかったクズが、シュレイン殿に勝てると思っている自体が愚かだと気づかないのであれば、必要ないでしょう」


 茨木は無価値なモノを見るような視線を鎧を着た者に向ける。ただ、その視線は凍えるように寒かった。いや、物理的に凍えるように温度が低下したように感じる。


「シュレイン様からアンジュ様を離すなど天変地異が起こっても無理なこと。いいえ、天変地異が起こるので、そうなる前に阻止するのも我々(・・)の使命」


 黒狐は世界の平穏を護るためなら、人一人の命など、軽いものと言わんばかりに、剣にしては少々短いダガーを鞘から抜いた。


「ちょっと待て!話し合おう!物理行使は駄目だ!」


 階級が下の者に対して、鎧を着た男性は完全に逃げ腰で、地面に座り込んだままズリズリと後方に下がっていた。


「部隊長!助けてくださーいー!!」


 誰も味方がいない鎧の男性の声は青い空に吸い込まれていったのだった。


(次回)

アンジュ視点に戻ります。

長くてすみませんでした。アンジュがモブからどの様に見られているか書きたかったのです。

あと、あまり出てこない酒吞と茨木のことですね。



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