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聖痕の聖騎士〜溺愛?狂愛?私に結婚以外の選択肢はありますか?〜  作者: 白雲八鈴


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211 激おこ

「さて、部外者である私が口を出すことではないのは重々承知していますが、元大将校(グラントフィシエ)という地位にいた者として言わせていただきましょう」


 その言葉に私を含め十数人の者たちがその場に起立した。悲しいかな。神父様がこうして笑顔で皆を前にして説教するときは、話を聞く態度を示さなければならないのが、身に染み付いてしまっている。

 え?さっきは聞いていなかったじゃないかって?あれは、私個人に向けて怒られていることなので、他の人には迷惑をかけてはいない。


 もしこのように大勢の前で一人だけ違う行動をとろうものなら、集団行動のなんたるかを一時間ぐらい追加で言われるのだ。


「人の話を聞く態度ではないですね」


 にこにこと人の良さそうな笑顔でそう言った神父様の横にいるファルの肩がビクッと揺れた。別にファルが怒られているわけではないのに、こうして反応していることから、教会を出て10年経ったとしても、神父様の影響力は残ってしまっているという恐ろしい現実を私は見てしまった。

 流石、悪魔神父ということだね。


 そして、神父様がパンと両手を叩くと、未だに椅子に座っている者たちが姿を消した。正確には座っている椅子が瓦解して壊れたのだ。先程の私が座っていた椅子が無くなっていたように。


「貴方たちは大将校(グラントフィシエ)という地位が何を示すかわかっていないのですかね。本当に私が聖騎士団を去ってから、生ぬるくなったものです」


 神父様はカツカツと踵を鳴らしながら、食堂内を歩いている。はっきり言って神父様はいち教会の神父であり、聖騎士に成る者たちを見出し育て上げるのが今の立場であって、聖騎士に成った者たちに対して何かを言う立場にないはず。

 いや……だから、元大将校(グラントフィシエ)という今は空席の名を挙げたのか。


「そこの者、聖騎士とは何かを答えなさい」


 神父様は未だに床に座り込んでいる人物に質問をしているようだけど、私からどのような人物かは食堂のテーブルが邪魔で見ることはできない。


 しかし、答えられないようで、別の者を神父様は指名をした。


「クオーレ。答えなさい」


「はっ!我々聖騎士は天の日を掲げる聖女様の剣であり、盾であります。しかし、我々の背後には多くの民がおり、民の命を脅かす脅威を討ち滅ぼす為にその力を奮う者であります」


 クオーレという男性が神父様の質問に答えているけれど、それはいつも聞き慣れた文言だった。その後に続く神父様の言葉もわかっている。


「そうです。我々の力は聖女という存在を護ることも大切ですが、この国の民を護る為にその力を奮わなければならないのです」


 そして、立ち止まって多くの者たちを見渡せる食堂の一番前に陣取った神父様の笑顔に深みが増した。

 ヤバい来る!


「その民を護れず、敵に命おろかその死した肉体を奪われた民に剣を振るうとは聖騎士にあるまじき行為!!敵の幻覚などに惑わされ、真の敵を見誤るなど言語道断!!」


 神父様から重苦しい程の威圧が放たれた。

 あー、これ私まで怒られる意味があるのだろうか。私はしれっと抜け出してもいいのではないのだろうか。


 周りを見渡すと直立不動で立っているのは怒られ慣れた十数人のみで、後は床に伏してしまっている。ただ、このような状況でも酒吞はテーブルに腰掛けて食事を続けているし、茨木は神父様の威圧にもどこ吹く風という感じで、にこにこといつも通り笑顔を浮かべていた。まぁ、彼らにはこの話は関係のないことだ。


 しかし、妖怪はこの世界の魔物とは違う。確かに幻覚を見せる魔物もいるけれど、それは事前情報があったりする。どこどこの洞窟には幻術を使う魔物が住み着いていると。

 本来であれば、この時点で後手後手に回り多くの者たちの命が奪われていたはずなのだ。神父様の言い分もわかるけど、事前情報がないという状態では、あの霊獣と好戦的な首を相手にすることはかなり困難だったと思われる。


 これは擁護する立場の者が必要だと思う。私はスッと右手を上げた。


「なんですか。アンジュ」


 何故、手を上げたのかという、呆れた感じの声で神父様から名前が呼ばれたので、私は発言する。


「過去の異形に関する情報開示を求めます。我々は通常の魔物の情報は持ち合わせていますが、異形というモノたちの情報が足りません」


「それは王族が管理しているものですので、おいそれとは開示はできません」


 神父様は王族のはずなのに、何故開示が出来ないのだろう?


「おいそれの部分を説明して欲しいです」


「アンジュならわかると思いますが?」


 そう言って神父様が酒吞と茨木の方に視線を向けた。

 ああ、異形という存在が人の生活の中に混じってしまうことがわかれば、疑心暗鬼にとらわれてしまうというか。



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