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聖痕の聖騎士〜溺愛?狂愛?私に結婚以外の選択肢はありますか?〜  作者: 白雲八鈴


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203 ん?やりすぎた?


 結局ルディと交渉したものの、殿(しんがり)を神父様に押し付け、私はワイバーンの背に乗って上空を旋回している。

 第12部隊長さんはこの場には誰も近づかないように命じるために第9部隊の詰め所に行って貰っている。あ、違うな。ルディが命令したことを伝えに行って貰っている。

 ルディの権限は団長(コマンドール)と同等だからね。


 そして、ファルは私達と同じ様にワイバーンに乗って上空を旋回しており、酒吞は茨の塊を片手で鷲掴みしたままワイバーンの背の上に立っており、茨木がワイバーンを制御しているけれど、重量オーバーなのか少しワイバーンが苦しそうだ。

 しかし、酒吞が片手で霊獣入りの茨の檻を持っているけれど、あの霊獣って片手で持ち上げられるほどの大きさには見えなかった。流石は鬼だということなのだろう。


『撤収完了した』


 ルディの方から第12部隊長さんの声が聞こえた。本当にこの通信機便利だよね。


「ヴァルトルクス第12部隊長。報告が終わったのなら、何が起こっても対応できるように、こちらに戻って来てください」


『了解した』


 私としては何も起こらないと思うのだけど、ルディは何かを懸念しているみたい。まぁ、常闇がどういうものかは解明されていないので、不安なのは理解できる。人為的常闇を広げるなんて考えられないことだからだ。


「で、始めていいかな?」


「ヴァルトルクスを待て」


「うーん。この規模になると人が一人増えようが、減ろうがあまり変わらないと思うけど?」


 そう、上空から見えるここの常闇は2キロメル()先にある。ということは最低全長4キロメル()は広げないといけない。


 その距離になると人なんてちっぽけな存在であり、大した影響は与えることはできないだろう。


 ルディの大きなため息が聞こえてきた。

 そのため息を背後で聞きながら私はフルフェイスを取る。私の銀の髪が上空の風に煽られてしまった。結っていた紐がいつの間にが外れてしまったみたい。


 そして、私は右目に手の平を置き、天使の聖痕を取り出すと、定位置の如く王冠のように頭上で輝き始めた。

 なんか私だけスポットライトを浴びているようになっていない?目立つことはしたくないのだけど、仕方がない。


 私は視線を下に向ける。そこには鎧武者と神父様が刀と剣を交えていた。常闇が開けばファルが神父様を救出する予定にはなっているけれど、恐らく神父様一人でも脱出できると、私個人は思ってしまうことだ。しかし、それは黙っておこう。


 ファルにも何かしらの仕事をやってもらわないといけない。



 そして、私は世界をこじ開けるようなイメージで力を使っていく。今ある常闇を切り口にして押し広げる感じだ。


 すると唸り声のような低い音が聞こえてきた。なんだろう?次いで、軋む音が重なってくる。

 何かが弾けたように突如として眼下に月の光もとどかない暗闇が広がり、下から生暖かい風が吹き上がってくると同時に世界が悲鳴を上げた。耳に突き刺さるような甲高い音だ。


「うるさい。少しぐらい黙って欲しい」


 私が文句を言っている最中、神父様は空間を駆け上がるように登ってきて、ファルと合流した。思っていた通り、神父様に助けは必要なかった。そして、怨霊と言えば徐々に暗闇に沈み込みながら何か文句を言っているが、聞き取れない。

 聞き取れないけど、世界の悲鳴に混じって何か別の高い音が聞こえる。……まさか!


「一気に上昇!今すぐに!」


 私は『響声(レトノ)』を使いながら、ルディが持っているワイバーンの手綱を思いっきり引く。そして、踵で硬い鱗を叩く。するとワイバーンも何かを感じ取ったのか、蛇行しながら垂直に上昇していく。


「アンジュ。これは!」


「鎖!死の鎖が四方八方に向けて、投じられたの!」


 恐らく世界が開けられた巨大な穴の修復のために力を得ようとしているのだろう。捕まらなければ大丈夫のはず。

 そして、私の目には常闇の中から無尽蔵に黒い鎖が世界に伸びているのだ。


「見ればわかる」


 見ればわかると言ったルディにワイバーンの操縦権を奪われてしまった。


「え?見えるの?」


 死の鎖が普通に見えるようになっているのは尋常ではない。もしかして私はやりすぎたのだろうか。しかし、この世界に首だけの怨霊を野放しにしておくことはできない。

 一番いいのは元のところに還ってもらうことだ。


「見えるが、これがアンジュの見えている世界だというなら、なんとおぞましい姿だ」


 いや、普通はこんな縦横無尽に鎖は伸びていかないからね。

 そう思いながらも私はこの世界にとって異物である異形のモノを常闇の奥底に落とすべく、巨大な渦を作っていく。


 眼下にはどんな光でも届かないほどの深い闇をたたえた穴に黒いモヤが渦を巻きながら、軋むような音がどこからともなく鳴り響き、その穴と空を繋ぐかのような太く黒い鎖が空間を満たしている。


 なんとカオスな世界なのだろう。


 まぁ、そのきっかけを作ったのは私だけどね。



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