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聖痕の聖騎士〜溺愛?狂愛?私に結婚以外の選択肢はありますか?〜  作者: 白雲八鈴


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197 死者を操る死

 上空から見える光景に私は唖然としてしまった。日が落ちて半月の光が届く暗闇の中を篝火や魔術でともした明かりを手がかりに、鈍色の鎧をまとった者たちが、同じような鎧を着たモノや一般人と言っていいモノたちを相手にしているのだ。


 正確には死したモノが動き出し、聖騎士たちに向かって行っているのだ。これでは切りが無い。死者と戦うほど恐ろしい戦場はない。

 そして、視界不良にも程がある。何処ともなくモヤがかかっているように薄ぼんやりとしているのだ。


「これはどういうことでしょうかね」


 神父様がこの眼下に広がる光景を見て、言葉にしてきた。だけど、答える者は誰もいない。私にもわからない。言うなれば、死者を操るモノがいるということだ。


「怨霊は面倒だなぁ」

「あの者たちは聞く耳を持ちませんからね」


 何か知っている鬼がいた!


「酒吞、茨木。怨霊ってどういうこと?」


 今現在、上空から様子を伺うためワイバーンで上空を旋回しているのだ。だから私は『響声(レトノ)』を使って二人に尋ねる。


 すると二人はとある一点を差した。その方向を見ると、なにやら濃いモヤがかかって見通しが悪い。


 しかし、『遠見』を使って見てみる。するとぼんやりと、四足の獣?のようなモノがうっすらと見え、その背中に丸いボールのようなモノが見える。


 ん?何か動いている。視覚が駄目なら聴覚で探るか。『拡音(メギストンウース)』を使って詳細な動きを探ろうとすると、思わず肌が粟立った。


『我の身体はどこだ!戦おう!我はまだまだ戦えるぞ!』


 身体を探していらっしゃるようだ。ということは、ボールのような影は首だと思われる。そして、四足の獣は馬だろうか。


「酒吞、茨木。怨霊は首だけで合っている?あと四足の獣は馬?」


「怨霊は戦を望む者のようですね。それから、馬ではなく恐らく(みずち)でしょう」


 ミズチ?蛟?水神かなぁ?


(みずち)は大した害はねぇんだが、幻覚を見せるのがやっかいだ。姿は蛟竜だな」


 おお!竜ね。竜が幻覚を見せているのか。では、先にミズチという竜を倒せばいい?


「あ、言っておくが(みずち)は霊獣の一種だぞ」


「霊獣って倒せるの?」


「さぁ、戦おうと思ったことがありませんね。青龍が怒ったときは川が氾濫して、京の都が何度か水に沈みましたからね」


 青龍って恐ろしい。格が違うってことだね。ということは、丁重にお帰りを願うしかないのか。


 で、問題の怨霊は誰かということだね。しかし、私にはさっぱりわからない。首の姿になっても戦いたいだなんて、どれだけ戦闘狂なのだろう。


「で、問題の幻覚を封じるのにはどうすればいいわけ?」


(みずち)から吐き出される気を封じればいいらしい、ということしか知らねぇな」


 そうか、取り敢えず陰陽師が必要なことがわかった。


 私が考えていると神父様から声を掛けられる。


「アンジュ。それでどうしますか?」


 だから、私に指揮権があるように言わないで欲しい。私は将校(オフィシエ)でも新参者でしかない。


 ただ、私の考えとしては。


「取り敢えず、死んだ方々には申し訳ないのですが、全て灰にしてしまった方がいいでしょう。若しくは操れない状況ですね。ミズチはぐるぐる巻に封じて常闇からお還り願う感じで……問題は怨りょ……幽霊の首だけの存在ですが、そのまま浄化した方がいいと思います。ただ、ここだとひと目が複数あるので困ったことになりそうでイヤです」


 恐らく聖女の彼女が言っていた活躍というのはこの事だったのだろう。天使の聖痕の力によって霊魂の浄化を行なう。

 そう豪語した彼女は今現在リゼ姉のワイバーンの上で半死人となってぐったりとしている。彼女が操られそうな勢いだ。


 私は私のできることを提示した。しかし、これは私の天使の聖痕の力を思いっきり使うことになるので、彼女に力を譲渡する状況を作ることに等しいのだ。


 そして、聖女に祀り上げられる危険性が高くなってしまう。これ以上私のことを知る人物を増やしたくない。


「では、浄化は私が行いましょう」


 神父様からとんでもない言葉が出てきた。いや、神父様ならなんでもありだと思ってしまう。浄化をしてくれるのであれば、私は常闇を封じるためだけに天使の聖痕を使えばいい。


「私とリザ姉はわがまま娘を第9部隊の駐屯地に連れていくよ。それから、今いる部隊を一旦引かせる命令を出してもらうよ」


 ロゼはそう言って、リザ姉と共にワイバーンを反転させて、暗闇の中に消えていった。


「ではあとは各個人で全てを灰燼に帰してくださいね」


 神父様がまたしても恐ろしい言葉を口にした。いや、私の言葉を言い換えればそういうことなのだけど、もうちょっと言い方というものがあったと思うのは私だけなのだろうか。


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