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171 黒狼の監視者

 ルディが怒っている理由は、一番はやっぱり白銀の王様の事を言われたからだろう。それは一番問題に上げなければならないことだ。


「シュレイン。アンジュを殺したことを言われても、アンジュは死んでなかっただろう?今は陛下の意見を尊重すべきじゃないのか?」


 王様大好きファルがルディを諌めているけど、私?私のことを言われたからと言って、私は王様程重要人物ではない。


 しかし、聖女の彼女は何をしたいのだろう。彼女には彼女しか見えない何かがあるのかもしれない。だけど、言っていいことと悪いことがあるはずだ。


「死すべきだ」


 ルディから、聖女の彼女の死が提案されたが、それはさっき王様が否定していたよね。その王様がルディに尋ねる。


「シュレイン。そう言えば、プルエルト公爵から、何か手紙をもらったそうだね。それには何が書かれていたのかな?」


 確かに、トーリ経由でブタ貴族の手紙を渡されていた。それの所為でルディの機嫌が悪化したけれども、ルディがブタ貴族の孫と対戦するというきっかけになったものだった。


「陛下が気にされる程のものではないですよ」


 ルディは王様に報告することではないと、手紙の内容を口にすることを拒否した。

 しかし、そんな言葉で諦める王様ではない。


「ほら、お兄ちゃんに見せてくれるかな?」


 王様はルディに手を差し出して、手紙を出すように促した。それも先程物騒なことを口にしたとは思えない程、朗らかな笑顔で言っている。


 兄貴風を吹かせた王様にルディは渋々という感じで、白い封筒を差し出す。その白い封筒を受け取る王様。封筒から一枚の紙を取り出し、書かている文字を目で追い、私に残念そうな子を見る視線を向けてきた。何故に!


「そういうことか。やっぱりプルエルト公爵を始末しようか」


 だから、ここで殺害宣言をしないで欲しいよ、王様。


騎士(シュヴァリエ)ユーリスデイカー・プルエルトに制裁を加えたあとで、公爵もとなると些か問題になりますので、公爵は保留の方がいいのではないのですか?」


 侍従(シャンベラン)が王様の意見を保留とした方がいいと言った。そうだよね。その方がいいよね。


「仕方がないなぁ」


 そう言って、王様は苦笑いを浮かべながら立ち上がる。どうやら、事情聴取は終わったようだ。しかし、王様本人が来る必要があったのだろうか。


「でもね。シュレイン」


 王様がルディを見て言った。


「僕の後を継ぐのはシュレインであることには変わりないからね。それに【黒狼(ガルム)の笛】を受け取ったみたいだしね。本当にアレに気に入られるなんて、君も災難だね」


 王様は最後に私を再び可哀想な子を見るような目を向け、問題発言を残して去っていった。

 私は怪しい笛を受け取ったわけではなく、首に掛けられて押し付けられただけだからね。それから、災難って何!あの血の海に何かあるわけ!


「ああ、そうだった」


 王様と侍従(シャンベラン)が去っていった室内にルディの低い声が響いた。


「アンジュ。何故、アレから贈り物を受け取ったのだ?」


 いや、不可抗力だからね。ちらりと横を見ると、ファルが座っていた椅子はもぬけの殻だった。ただでさえ機嫌の悪いルディなのに更に何か怒っている感じになったルディと二人きりにしないで欲しい。


「受け取ったわけじゃなくて、首に掛けられただけだからね」


 私は不可抗力だったと言ってみる。その私の視線は前方である王様が座っていた椅子の後方の窓枠に固定されたままだ。

 しかし、身体をくるりと回転させられ、横抱きにされてしまった。くっ!魔王様と視線を合わせる勇気は持ち合わせていない。


「コレがどういう意味があるかわかって受け取ったのか?」


 ルディは私の首元から鎖を引っ張り、冒険者ギルド発行のタグに絡まった鎖の先についてある黒い筒状の笛を取り出した。


「え?そもそも王家の事は神父さまに聞いた話しか知らない。だけど、聞くとヤバそうだから聞きたくない」


 視線を反らしながら私は答える。


「コレを受け取ったということは、黒狼の監視者が付くということだ」


「は?」


 監視者?更に私を監視する者が増えるってこと?この聖騎士団の敷地内で?

 よし、それは私が始末しよう。これ以上監視が増えるのは勘弁だ。


 実は気になっていたことがある。王様が来ると姿を見せない人がこの第13部隊の詰め所に侵入してくるのはわかっていた。それは、王様の護衛なのだろうと、黙認していたけれど、先程から、王様に付いてきた中で、そのまま居座っている者がいるのだ。


 私は右手を上げ天井に手のひらを向ける。そして、私の幻影を作り出した。天井に向かって宙に飛ぶ私だ。次いで、呪を言葉にする。


「『置換』」


 すると、私と幻影の場所が入れ代わった。私は幻影が作り出した勢いのまま天井を拳で叩き割り、天井の板の上に滑り込み、近くに居た者を見た。突然の私の行動に驚いているのか、私を見たまま固まっている。


「『茨の鎖(カテアンカーティ)』」


 私の聖痕の茨はその者を行動不能にするほど、雁字搦めに巻き付いていったのだった。



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