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聖痕の聖騎士〜溺愛?狂愛?私に結婚以外の選択肢はありますか?〜  作者: 白雲八鈴


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166 ルディ、帰るよ

 私は漆黒の空の上に漂って、眼下を見下ろす。なんと言い表していいのだろうか。


 魔王対13人の勇者と言えばいいのだろうか。中央に確固たる存在感を確立しているルディに対して、満身創痍の13人。その13人の中にはファルも含まれている。


 だけど、その13人は果敢にも魔王様に立ち向かっている。普段は連携などしない隊長同士が協力しあってルディに立ち向かっているのだ。


「はぁ」


 思わずため息がこぼれてしまった。その隊長同士の戦いが繰り広げられているため、観客は全て避難しているというのに、聖女の彼女はただ一人、天に向かって祈りを捧げている。

 彼女は何に向かって祈りを捧げているのだろう。


 無神論者の私には理解出来ない行動だ。幼い私が神に祈っても、私の境遇は何一つ変わらなかった。教会で奉仕という作業をしても、私は自由を手に入れることはできなかった。

 私が信じるのは私の力とお金のみ。


 ああ、本当に神というものが存在しているのであれば、聖女という世界の安定装置という役目を無くすように脅していただろう。


 私は私自身をあざ笑う笑みが溢れる。本当に何故、こんな私に固執をするのだろうか。

 かわいそうなルディ。世界が変わらなければ、ルディは心の闇を抱えて生きていくことになるのだろう。

 世界が変わるかといえば、これもまた変わることはない。この世界の闇もまた深いものだ。


「『狂瀾(きょうらん)既倒(きとう)に廻らす』」


 私はこぶし大の紫色の怪しい液体を作り出す。


「土砂降りの雨をあの丸い建物の中心に降らせて、その中にこの毒物をまんべんなく混ぜて降らせてくれる?」


『·····』

『·····』


 私と同じ様に隣を浮遊している二匹から無言の圧力を感じる。何か?


「これ、薄めると回復薬になる毒」


『主様。それは毒物なのか?それとも薬なのか?』


 青蛇がジト目で私を見てきた。何?その目は。


「だから、薄めると回復薬だって言ったし、ほら、下の人達傷だらけだからね。回復してあげようかと思ったのだけど、いらない気遣いだったね」


 私が紫の怪しい液体を始末しようとする行動を見せると、二匹の蛇は慌てだした。


『いやいやいや、主様。毒を撒いてトドメを差すつもりなのかと確認したかっただけであって、我らは主様を疑ったわけではない』


 黒蛇が言い訳がましい事を口にする横で、青蛇がコクコクと頷いている。いや、さっきどう見ても、そこの青蛇は私をジト目で見てきたよね。


「まぁ、いいけど。そこまで言うなら、雨と雷撃も追加して降らせて、そして、二匹はここで待機。わかった?」


 私がそう言うと、鱗で顔色なんて分からないが、若干引きつった青い顔でコクコクと頷く二匹の蛇。


 その直後、二匹の蛇の躰が膨れ上がり、輝き出す。そして、間近で光り、下界に落ちていく雷光に局所的に降る癒やしの雨。


 天罰と救済が一度に来たような状況だ。それも闘技場のみに降り注ぐ雨。その異様さに12人の隊長は危機感を感じ、闘技場と観客を隔てる壁まで下がっていった。それを確認した私は重力の聖痕を使って急降下する。


 上空4000メル(メートル)からの急降下。それも重力倍増。五重の結界を張り衝撃への対策も忘れない。

 遠くに見えたコロッセオが近づいて来た。その中央で空を見上げているルディに、近くで頭を抱えているファル。どうしたのだろう?


 地面が近づいて来たので頭から落ちていたところを反転し、足から着地をする。

 流石に反動が大きかったようで結界が深く地面を削り、私はその結界と共にスライドしていく。


 10メル(メートル)程滑ったところでやっと止まった。雨によって湿っていた地面だったが、私が掘削するように滑っていったので、土煙が闘技場内に満ちている。

 そして、転移の腕輪の力を使ってルディの側に転移をする。


「ルディ。帰るよ」


 私の派手な登場にあっけにとられたのか、ルディとファルがぽかんとした顔をしている。


「ほら、早く戻るよ。せっかく土煙を立てたのに消えてしまうじゃない」


 私はそう言って、ルディに右手を差し出す。私はワザと土煙が立つようにこの場に降り立った。何故なら、貴族がいるかも知れないこの場所に姿を晒したくなかったからだ。


「その前にあの聖女を始末しておかないと」


 ルディが帰るよりもあの聖女を殺すと言っている。それは、12隊長対ルディになるわけだ。そして、そんなルディをファルは諌めようとしていたのだろう。


「でも、王様は無視していいって言っていたよ?だから、無視。はい、帰るよ。私、呼び出されて、お昼ごはんがまだだから、帰ったらお昼ごはん食べよう」


 そう言って、私はルディに向かってニコリと笑った。面倒なここからさっさと立ち去りたいというのが本音であることは、私は頑張って口から出すのを耐えたのだった。



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