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138 王都で何が?!(ギルフォードSide)


第12部隊 ギルフォード副隊長 Side2


「いくら婚約者に視線がいってしまったからと言って、隊長と違って、あの人が良さそうな第13部隊長がそのような事をするとは思われません」


 ローラの言葉に俺は遠い目をする。確かに我々の隊長は不愛想だ。そこを否定することはない。

 しかし、ローラ。シュレインが『人が良さそう』?シュレインの笑顔の奥底にあるのは怒りと憎しみだ。いや、今はアンジュが側にいるからそうではないか。

 ローラ。人は見た目ではないぞ。


「俺は忠告したからな。選任はローラに任せる。先程言った事をしてくれ、俺は隊長と連絡を取る」


 ローラは釈然としない顔をしならが、俺の執務室を出ていった。ローラが淹れてくれた珈琲を一口飲む。


 情報把握に大分時間を取られてしまった。今の時間なら隊長は食堂で食事をしている時間だろうか。隊長の朝食の時間はとても早い、人より時間をずらして食事を取っているのだ。別にそんなことしなくてもいいと俺もリザもロゼも言っているのに、あの人の心の闇もかなり深いものだ。


 首に掛けてある白銀のタグを取り出す。これは己の身分を証明するものであり、亡骸の名を示すものだ。死人には口がないからな。

 そして、上官同士が連絡を取り合うために使う通信の魔道具でもある。駐屯地と王都では気軽に連絡が取れないために開発されたものだ。


「『起動、通信先は隊長』」


 暫し待つ。


『どうした?』


 隊長の声がタグから聞こえてきた。


将校(オフィシエ)ギルフォード副隊長であります」


『わかっているから、さっさと用件を言え』


 無駄を嫌う隊長らしい言葉が返ってきた。

 俺は報告を受けたこと、それに対して指示をした事柄を隊長に報告をした。


「以上ではあります。しかし、文献では常闇が巨大化すると異形なモノが出てくるとありましたが、今回の見たことのない魔物はそれに当たるのか不明であります。こちらは出来る限りの対処はいたしますが、隊長はどうされますか?」


 できれば来て欲しいという思いを込めて聞いてみた。俺の中では今回はいつもとは違うと感じ始めている。夜勤勤務の者達がライガー以外が全滅した。その時点で危険性を感じているのだ。仮にも彼らは実力を認められ騎士(シュヴァリエ)になったのだ。命からがら逃げてくることは今まであっても全滅はありえなかった。


『それぐらいなら、お前たちで対処可能だろう?』


 残念な言葉が返ってきた。確かに現状では王都以外にいる騎士(シュヴァリエ)が約120人。将校(オフィシエ)が5人。つかえるかどうかわからない従騎士(エスクァイア)が300人。この人数であればドラゴンなら対処可能だ。だが、見たことがない飛行する魔物に、森の外に出ていこうとする魔物の大群。はっきり言って厳しい。冒険者に頼ってもかなり厳しい状況だ。


 しかし、なんだか隊長らしくない言葉だ。いつもであれば、俺たちが厳しい状況に立っているだろうというぐらい見抜いてくれる人のはずだ。


「わかりました。こちらで対処します」


 渋々そう答える。いや、そう答えるしかない。あ、この事も報告しておかなければ。


「それから、今日の正午ぐらいに第13部隊長と副部隊長両名がこちらに来ることを伺っております『ガシャン!』??なるべく穏便に第13部隊長と問題児のアンジュには帰って『ゴホッゴホッ』??」


 なんだ?何かあったのか?


『ギルフォード副隊長。通信に割り込んでごめんなさいね』


 リザが自分のタグから俺と隊長の会話に割り込んできた。


「リザ副隊長。何かあったのか?」


 いつもと感じの違う隊長に心配してしまう。王都で怪しい病でも蔓延しているのだろうか。


『何も無いと言えば何もないのだけど。アンジュちゃんが隊長に押し迫って、隊長が陥落してしまったのよ』


「は?押し迫った?あのアンジュが?」


 なんだかヤバそうな言葉が聞こえてきたぞ。隊長が通信に出られているということは、シュレインからの制裁はうけていないだろうが、アンジュが押し迫ってなんだ?あれか!金を持っていそうなヤツを襲ったのか?隊長は甘いものを好まないからアンジュを餌付けしたわけではなさそうだしな。意味がわからん。


『アンジュちゃん的には私と連絡を取りたくて隊長を捕獲したのだけど、その時の格好が···モゴモゴモゴ』

『いらんことを言うな。リザネイエ副隊長』


 え?なんだかあちらでは楽しそうなことになってないか?アンジュが隊長を捕獲ってどうやったんだ?俺でも未だに隊長に剣が届かないというのに。

 で、陥落ってなんだ?その恐ろしい言葉は?それにあの隊長がリザをこれ以上喋らせないように口を塞いでいる?!


「なんだ?その面白そうな状況。ロゼに王都勤務を代わって貰えばよかった」


 本音がポロリともれてしまった。


『嫌よ』


 ロゼの声が割り込んできた。何だ?何が起こっているんだ?二人はこんな朝早くに食事をしていなかった。それが隊長に合わせて一緒に食事を取っている?


「え?珍しく3人揃って食事を取っているのか?」


『えー。だってギルフォード副隊長。挙動不審の隊長がおもし····いえ、良くも悪くもアンジュが影響を与えてくれたのですよ』


 ロゼ、お前。隊長が面白いと言おうとしただろう。


将校(オフィシエ)ロゼ。口を慎むように。ギルフォード副隊長、今から王都の第12部隊を動かす許可をもらってくる。先発として、我々が向かうから、それまで対処しておきなさい』


 隊長のその言葉を最後に通信が切れてしまった。アンジュ!隊長にいったい何をしでかしたんだ?


 あの隊長が自分の言った意見を変えたぞ。あれはアンジュがここに来ると言ったからか?そんなわけないよな。ありえないよな。


 俺はローラが迎えに来るまで呆然と、冷めてしまった珈琲を眺めていたのだった。



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