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聖痕の聖騎士〜溺愛?狂愛?私に結婚以外の選択肢はありますか?〜  作者: 白雲八鈴


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126 『宴』は始まっている


「はぁ。ここはもう、アンジュちゃんの家ではないのよ?」


 確かに家ではない。だけど、本当の実家も私の家ではない。


「3歳から16歳まで過ごしたことに変わりはないよ?シスターたちが私の家族であることも変わらないよ?」


「アンジュちゃん!!」


 あ、泣き虫シスターが私に抱きついてきた。


「お金と食べ物しか興味ないと思っていたアンジュちゃんからそんな言葉が聞けるなんて!!」


「シスター。それは今も変わりないです。それで」


 私はにこにこと人のいい笑顔で私とシスターたちのやり取りを見ている神父様を振り返る。


「神父様。ウキョー鳥を絞め殺していいですか?」


「いきなりアンジュちゃんから物騒な発言がー!」


 泣き虫シスターが叫びながら慌てて私から距離を取った。


「アンジュ!その話は後だろう!」


 ファルが話す順番が違うと言いたげだが、言いたいことは一番に言っておかないと、神父様ははぐらかしにかかるから、たちが悪いのだ。


「ウキョードリとはなんですかね?」


 名前なんて覚えられないよ。


「宿舎で毎朝奇声を上げている魔鳥のこと!あれの所為で目覚めが悪いのだけど?」


「いいですよ」


 何だって!まさか神父様から普通に許可が出るだなんて!


「その魔鳥の名前を呼べたら、煮るなり焼くなり好きにしていいですよ」


 ぐふっ!そうきたか!絶対にわざとだ!私が名前を覚えられないと知って、言えないだろうと。


「あんなマルクなんたらかんたらっていうどこぞの皇帝かっていうほどの長ったらしい名前なんて覚えられない!!」


「残念でしたね」


 全く残念そうではない顔で言わないでほしい。しかし、諦めてなるものか!私はポケットから紙とペンを取り出し神父様に突きつける。


「その魔鳥の名前を書いて!文字なら読める!」


「今はアンジュの我儘を聞いている暇はないのですよ」


「我儘じゃない!絶対に皆あの毎朝の奇声をうるさいって思っているって!」


「おかしいですね。今まで文句を言われたことはありませんよ?ですからこれはアンジュの我儘ですね」


 言わないんじゃなくって、言えなかっただけだって!何で、誰も文句を言わなかったんだ!一人ぐらい文句を言う人がいても良かったんじゃない?


「ああ、そうですね。暇ならちょっと森の掃除をして帰ってください」


 暇!暇は暇だけど、ついでみたいな言い方をしないでほしい。


「それって神父様が今の現状を作ってしまったと認めるってこと?」


「何を言っているのですかアンジュは、掃除ですよ掃除」


「神父様自身が行けばさっさとお掃除が終わると思います」


「若者に頑張ってもらわないとねぇ」


 そこで年寄りアピールをしてもらっても、恐らくこの教会メンバーで一番強いのが神父様で次にシスターマリアだ。はっきり言えば二人が出れば殆ど解決すると思うけれど?


「それに第13部隊はこのためにいるのですから、行ってくれますよね。シュレイン部隊長」


「はっ!」


 え?私を飛び越えてルディの方に行ってしまった。私は素早く神父様の腕を掴もうとするが、するりと抜けられ私の手は空を切る。


 一歩踏み出し距離を詰めるも、その分距離を開けられる。


「名前!書いてください!」


 更に詰め寄る。


「アンジュの我儘に付き合っている暇は無いのですけどねぇー」


 人の良さそうなその顔がムカつく!くー!絶対に一泡吹かせてやる!私は一歩踏み出し、空間に滑り込み神父様の背後に出現する。


 捕獲!···!!!


 ゾワリという得も言われぬ悪寒に教会の天井まで飛び張り付いた。ヤバかった。さっきのは流石にあれ以上踏み込むと胴と首が離れていた。クー!!まだ神父様の背後は取れないのか!


「さっきは何をしたのですかね?アンジュ?」


 私を見上げた神父様は笑ってはいなかった。何かが神父様の琴線に触れたようだ。怖い怖い。


「秘密です」


 私は天井を足場に逆さになって立ち上がって、へらりと笑う。


「神父様。『宴』は始まっているようですよ。力の出し惜しみは後悔を生みます。異形なる魔の物はもうこの世界に出現していますよ」


「『うたげ』ですか。アンジュは勤勉ですね。その言葉が残された資料はほんの一部ですのに」


 え?そんな資料があるの?私は妹の言葉を言っただけだからね。


「そういうことなら話が変わって来ますね。私が出ることにしましょう」


「「「ひっ!」」」


 神父様がせっかくやる気を出してくれたというのに、何で冒険者風の人達は引きつった悲鳴を出すのか。


 はっ!

 私は天井から床に降り立ち、神父様に紙を突きつける。


「マルクのフルネームを書いてください!」


 神父様は私から紙を受け取り、さらさらと書き出してくれた。そして、その紙を私の方に向ける『マルクス・アウ·····』縦半分にビリビリと線が!!まだ全部読んでない!


 縦半分に破られた紙を神父様から取り上げる為に手を出すも、避けられ重ねられた紙がビリビリの紙くずとなり、火が放たれてしまった。


「あ~~~~!!ウキョー鳥を絞め殺す権利が!!」



 悪魔神父が!まさか書いたものを破り捨てるなんて!

 くー!これは『書いたのですから、読めなかったアンジュが悪いですよね』と言われるパターンじゃない!



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