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聖痕の聖騎士〜溺愛?狂愛?私に結婚以外の選択肢はありますか?〜  作者: 白雲八鈴


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115 白銀の男(王城 Side)


 時は少し遡り王城 Side


「ご機嫌ナナメですね。兄上」


 水色の長髪を背中に流し、冬の空のような色の瞳を持った青年が銀色のきらびやか衣装を身にまとい兄上と呼んだ男に声をかけた。

 兄上と呼ばれた男は黒髪に闇を映したような瞳を晴れ渡った青空を不機嫌そうに窓枠に身を預け眺めていた。


「ふん。俺が式典に出るわけではないのに、呼び出さなくても良かったはずだが?フリーデンハイド」


「それもまた、王族の務めですよ。私が聖騎士団の代表としているようにですね」


 不機嫌な男とは対象的に、冬の空のような色の瞳を晴れ渡った空へと向けてフリーデンハイドは微笑んだ。


「空がキレイですね。まるで今日の事を神が祝福をしているようですね」


「別にいつもと変わらない。お前の目がアンジュのおかげでよく見えるようになったからだろう?」


 不機嫌な男の言葉にフリーデンハイドは『おや?』っと首を傾げる。


「コワイコワイ。兄上、嫉妬ですか?私はあんな攻撃的な女性はお断りですよ。昨晩は本当に死んだかと思いましたから」


 フリーデンハイドのその言葉に不機嫌な男は睨みつけるだけで、言葉は紡ぐことはなかった。

 そこに『クスクス』という笑い声が室内に響き渡った。


 白銀の髪が室内の中でも煌めいているように輝き、晴れ渡った空のような青い瞳を細め、黒と水色の兄弟の言葉のやり取りがおかしいと言わんばかりに笑っている人物が立っていた。

 その衣装は金を基調としてきらびやか感じだが、目が痛くなる下品さはなく、その人物を引き立てる一要素であり、その場に神が降臨したかと思わせるような神々しさがあった。


「お前たちはいつの間にか仲が良くなったのだね」


 黒髪の不機嫌な男と水色の髪の青年のやり取りを見て、どこが仲が良さそうにみえたのだろう。


「義務的な事以外話すことなどなかったというのに」


「「陛下」」


 声を掛けられた二人は白銀の中性的な人物の足元で跪いた。陛下。この者こそこの国を治める王である。


「今は誰もいないのだから、兄と呼んでほしいものだね」


 そう言って、白銀の王は二人に向って微笑んだ。


「今日は兄上(・・)が式典に出られるのですか?それともあの者(・・・)の方ですか」


 フリーデンハイドが白銀の王に向って尋ねる。あの者の方とはどういうことだろうか。


「ああ、きっとあの者が出るだろうね」


 なんだか他人事のように話している。


「一部の者達の中では私は死んだ事になっているだろう?当分の間はこのままでよい」


 そう言って白銀の王はクスクスと笑っている。己を死んだことにされているのに、この状態が面白いと言わんばかりだ。


「ああ、本当にシュレインには感謝をする。生ける屍だった私をこの様に治してくれたのだからね」


「お礼ならアンジュに」


 シュレインと呼ばれた黒髪の男は白銀の王を治したのは己ではないと言葉にするが


「しかし、アンジュと会わせることはありませんが」


 礼を言うのは己ではないと言いつつ、言うべき相手には会わせないとは、これは如何に。


「それで、兄上がご顕在になられたのであれば、私は王族から退いてもよろしいでしょうか?」


「それは、駄目だね。ああ、フリーデンハイド。君はそろそろ式典が始まるのから玉座の間に向かうといいよ。私はシュレインと奥の隠し部屋でその様子を見ていることにするからね」


「はい。御前失礼いたします」


 フリーデンハイドは部屋を退出し、白銀の王とシュレインと呼ばれた男だけがこの場に残った。


「シュレイン。聖女が現れた時代は混沌を極める。私になにかあれば、次に王位につくのはお前だ。覚えておきなさい」


 白銀の王はシュレインに言葉を告げる。まるで遺言のようだ。いや、この王は言っていた。『生ける屍』だったと。ならばこそ出てきた言葉だったのだろう。


 その時、大きな咆哮がこの王都に降り注いた。窓の外を見た白銀の王は苦笑いを浮かべる。


「クス。言った早々にドラゴンが飛来してきたね」


 赤いドラゴンが悠々と大空を旋回している。まるで、何かを物色しているようだ。


「兄上がいらないことを言ったからでは?」


「くすくす。まいったね。どうしようか」


 まいったと言いながらも、白銀の王は全く困った様子はない。


「では、兄上が責任持って、叩き潰してきますか?」


「一応、この国の王はアレだからね。今の私が動くわけにはいかないだろう?シュレイン、私の代わりに行ってきてくれ」


 白銀の王は今にも口から炎を吹き出しそうなドラゴンを遠目に見ながらシュレインに命じた。


 その命じられたシュレインが了承の言葉を口にしようとしたとき、ドラゴンの大きな口から炎が爆ぜた。炎が吐き出されたわけではなく、まさに爆ぜたのだ。


「アンジュ!!」


 シュレインがドラゴンを見て叫んだ。いや、正確には持ち主と同じぐらいの斧を武器として持った者を見て言ったのだった。


 その者は手に持った巨大な斧をドラゴンに振り上げるかと思いきや、ドラゴンに向って体当たりをした····ように見えた。その直後巨大な火の雨が空を覆い、ドラゴンと斧を持った者を覆い隠してしまった。


 シュレインは窓の縁を壊さんばかりに掴み、空をにらみ付けていた。


「ああ、あれがシュレインのお気に入りか。クスッ。あれだけ大きな武器を持って使わないなんて、面白いね」


「面白くありません。御前を失礼してもよろしいでしょうか?」


 シュレインが白銀の王に退出の許可を得ようとしたとき、別の部屋らしきところから大きな歓声が聞こえてきた。


「何か、玉座の間であったみたいだね。それを確認してからでも遅くはないよね」


 そう言って、白銀の王はシュレインに背を向け、今いる部屋の壁側に行き、壁の一角を押し開けたのだった。




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