ビッグイベント
初めての投稿です。
よろしくお願いいたします。
ストーリーは3人の目線から繋がれていきます。
目線が代わる時は冒頭に書くつもりですが、忘れてしまったらスミマセン。
10歳の時、私の人生は大きく動いた。
最初のビッグイベントは1週間程熱にうなされ寝ついていた時のこと。
ある記憶が蘇った。
記憶の私は14歳。母子家庭の日本人JC。母に愛された覚えはない。むしろいつも疎まれていた。
その日、体調不良で動けなくなった私はもう何日も帰って来ない母を待っていた。母がいないのはいつものこと。それでも待っていた。いつもならテーブルの上に置かれているお金も、今回はなかった。食料はとっくに尽きていた。
寒い、苦しい、喉が乾いた。「水…水…」
もはや水を飲みに起き上がる力さえない。
「お母さん…」
そこで私の記憶は途切れた。
「ネフィ!ネフィ!」
大きな声に目を開けるとそこには間違いなく今の私の両親がいた。そして起き上がらなくても水を差し出してくれる侍女がいた。
私は大声で母にすがりついて泣いた。記憶の私の分も泣いた。
今の私。ネフェリアーナ・バルドメオ。我が家はここエドマンド王国でも3強と言われる公爵家。
隣国であり大国のプルデンシオ王国の王族と縁戚関係にあるため、この国での父の力は王族にも劣らないものだ。
そんな父に愛され母に慈しまれ、私は何不自由なく育っていた。
底なしに愛してくれる両親。お姫様のように可愛がってくれる侍女や使用人達。
記憶の中の私が欲しかった全て、いやそれ以上のものが与えられた今はまるでご褒美のような人生だ。
熱も下がり、蘇った記憶とも共存し始めた私は日々の幸せに感謝でいっぱいだった。
そんなある日、次のビッグイベントがやってきた。
「ネフィ、座りなさい。体調はもう大丈夫かい?」
この国で大きな力を持つとはいえ一人娘の前ではどこまでも優しい父が微笑んだ。
「ええ、お父様。お母様までなんだか今日は…どうしたの?」
2人は顔を見合わせると言いにくそうにした。
「ネフィ、落ち着いて聞きなさい」父が口火を切った。
「ネフィ、今までお前には黙っていたんだが…実はお前には魔力がある」
ーーーーーーーーえ?突然それ?いきなり?なに?どっきり?ハリー○ッターなの?ここってあの世界だったの?は?は?はぁぁ???
「ま、ま、まりょ…く?」
「そうだ。小さい時からお前はよく熱を出した。それも魔力のせいだ。そして先日のひどい熱病はお前の中の魔力が完全に成長したという証だったのだよ」
「……えーと、それはなに?魔法使いの学校に行くとかそういう話?」
「魔法使いの学校?」母が首を傾げた。
「ほら、なんというか杖とか呪文とか」
ーーーなんとかパトローナム!とかいうやつあったよね
「ネフィ、呪文は必要ないわ。私達の家系は念じるだけで魔力が使えるのよ」
ーーーは?念じるだけ?なにそれ最強!
「だから魔法ではなく魔力なの」
「それが…私に…使えると。念じれば魔力が?」
「そうね、私の娘だもの、使えるわ」
大混乱中の私に母が穏やかに笑いかけた。
「え?待って、それって…それって…ものすご〜くまずくない?今、ものすご〜くまずい話してない?」
父がすかさず答えた。
「そう、そうなんだ。まずいんだよ、非常にまずい。
………この国で魔力や魔法が使えるのは…そして使うことが許されているのは国王陛下と王位継承権を持つ王太子2人のみだ。」
我が国ではその2人以外が魔法や魔力の類いを使用することはもちろん、手を出すことも禁じられている。見つかれば即拘束、即処刑だ。
この国には魔法使いや魔力使いはいない。普通の人間しかいない。したがって、魔法や魔力を使えることこそが国王を国王たらしめるものであるのだ。それを揺るがすものは決して許されない。
「……どうしたら?…いや、そうじゃない、お母様さっき『私達の家系』て言った?」
「そうね。私も魔力があるわ」
いやいやいや、微笑んでる場合じゃないでしょ、お母様!!
母の家系、レオデオール家は代々魔力を持つ人間が生まれる家系らしい。しかも子どもが何人生まれても魔力を持つのは1人だけと決まっている。
魔力を持つ親から魔力を持つ子どもが1人生まれる…いつ途切れてもおかしくないようなその歴史は、それでも決して途絶えることなく時には息子へ時には娘へ脈々と引き継がれ、今私がいる。
「で、どうすれば?身を隠す的な?」
「いやいやいや」
父は笑った。
ーーー今、笑える?
「お母様もこうして普通に暮らしているだろう」
「あ、たしかに…でも…」
「まずは念じないこと。魔力を使おうとしないことを約束してほしい。」
???……念じないこと、ということ自体そもそもよくわからないがとにかく今は父の言うことに従うしかない。
魔力も今まで使わずに生きてきたのだ。今さらどうでもいい気がする。
「我が領地内であれば万が一魔力を使ってしまっても多少のことは隠せる。ただ…やはり人目が多くなるのはまずい。そしてそれを防ぐにはたくさんの人との関わりは避けてほしいのだ。」
「というと?」
「ネフィ、残念だがお前には学院に通うことはあきらめてほしい」
「あ!それなら全然平気だわ!今までも家庭教師の先生で十分だし、行きたいと思ったこともないわ!」
この国では学院に通うことは義務ではない。ただ、社交の為また将来の為にほとんどの子息令嬢は通っている。
学院に行きたいと思ったことは特にない。家が好きだし、侍女や使用人、護衛の人までが時間が空くと私と遊んでくれるので私の中の友達枠はそれで十分だったのだ。
「それとネフィももう少し大きくなったら舞踏会やお茶会と言われるものへのお誘いがある。それもお父様やお母様が大丈夫だと判断したものだけに行くことになる。つまりネフィには色々不自由なことも出てくるかもしれん」
「全然構わないわ」
ーーー処刑になるくらないなら!
こんな感じです。
最後までおつきあい頂けると嬉しいです。