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コント『ヤキイモ屋のおじさん』

作者: 天月 火馬人

A:ヤキイモ屋のおじさん、40才

B:JK、18才



Bの部屋。

セーラー服のBが、机で勉強している。

Bは背伸びをしながら言う。

B「ああ~、深夜まで受験勉強したら、いいかげん、小腹すいたな~」


外から、Aの声が聞こえてくる。

A「ヤ~キイモ~!、おいしいおイモ~!」


B「あ! ちょうど良かった。買ってこよっと!」


Bは財布を取って、外に出て、走ってヤキイモ屋を追いかける。

B「はあはあ……待って~、ヤキイモ屋さ~ん!」


A「は~い!」

ヤキイモ屋の屋台が止まり、Aが振り返る。

Aは、なぜか寿司職人の格好をしている。


B「え……あの、ヤキイモ屋さん……ですよね?」

A「はい、もちろん! これだけ『おいしいヤキイモ~』って言ってて、屋台にも『ヤキイモ』って書いてて、それで、他の食べ物が出てきたらおかしいじゃないですか~」

笑いながら言うA。


B「で、でも……」

Bは、Aの格好をジロジロと見まわす。


A「あ、これですか! すみません。わたしうっかり、ヤキイモ屋の作業着を全部、洗濯に出しちゃって、今日だけ、弟の作業着をかりてるんですよ!」


B「ああ、なあんだ、良かった。じゃあ、おいしいヤキイモ、ひとつください!」

Bは500円をわたす。


A「まいど~!」

Aは、屋台の中に手をつっこんで、なにかゴソゴソとしている。

Bはワクワクして待っている。

Aの行動は、なんかあやしげで、手ぶりはまるでお寿司を握ってるような感じ。


A「へい、お待ち!」

Bは、カールを一個だけ、わたされる。

B「え! いや……あの……」


A「ヤ~キイモ~!、おいしいおイモ~!」

Aは行こうとする。


B「ちょっ! 待って! 待ってください!」

Bは慌てて、Aの手をひっぱる。


A「はい?」

B「あのう……これだけ『おいしいヤキイモ~』って言ってて、屋台にも『ヤキイモ』って書いてて、それで、他の食べ物が出てきたらおかしいじゃないですか~、って言ってましたよね」

A「はい」


B「それから、今日、ヤキイモ屋の作業着じゃないのも、うっかり全部、洗濯しちゃって、弟のをかりてるからなんですよ!、って言ってましたよね」

A「はい」


Bはカールをつまんで、Aの顔の近くまで持っていって見せる。

B「カール!!!」


A「カール? あの、カールおじさんの?」

B「そう、あのカール!!! 『それにつけても、おやつはカーアール!』っていう、あのカール!!!」


Aは、ハッとなにかに気づいて、ポン! と手をたたく。

A「ああ、お客様、すみませんでした~」


Aは屋台の中に手をつっこんで、なにかゴソゴソとしている。

Bはそれを見て、ホッとして、満足そうにウンウンとうなずく。


A「全然、焼けてなかったですよね~」

Aはバーナーで、カールを焼こうとする。

B「焼かないで! なくなっちゃう! カール焼いたら、もうなくなっちゃう!」

あわてて、カールを守ろうとするB。


Aは急に、大声で笑い出す。

A「って、全部、冗談ですよ~、お客さん!」

B「はい?」


A「学生さんは受験勉強とか大変でしょ? だから、ちょっとドッキリにかけて、笑ってもらおうって思って! いやあ、ごめんなさいね!」

B「な~んだ、そうだったんですか~。こちらこそごめんなさい、ちょっと怒っちゃったりして……」

A「いえいえ! じゃあ、おいしいヤキイモはちゃんとありますから! ちょっと待っててくださいね!」

B「はい! なーんだ、この人、めっちゃいい人じゃん……」


Aは屋台の中に手をつっこんで、なにかゴソゴソとしている。

Bはそれを見て、満足そうにウンウンとうなずく。


A「へい、お待ち!」

Bはちゃんと、おいしそうなヤキイモをわたされる。

B「……」


A「ヤ~キイモ~!、おいしいおイモ~!」

Aは行こうとする。


B「ちょっ! 待って! 待ってください!」

Bは慌てて、Aの手をひっぱる。


A「はい?」

B「いや、その……」

Bは、Aの恰好をジロジロと見まわす。


A「あのう、まだ、なにか……?」

B「すみません、あたしがおかしな事を言ってるのは、じゅうぶんにわかってるんですけど、でも……」

A「はい?……」

B「全部、洗濯に出しちゃったからとか、無理なウソまでついて……夜中にわざわざ、そんな寿司職人の恰好をして……前フリを、こんなにガッツリやったのに……」


Bはカールをつまんで、Aの顔の近くまで持っていって見せる。

B「なぜカール?!!! えらい、とがったネタしてきよるのう、素人が!!!」

A「はあ……?」

B「ああ! なんかモヤモヤする~! もう勉強に集中できない~!」


A「だから、この服は、わたしがうっかり、作業着を全部、洗濯しちゃたから……」

B「それ、実話なんかい!!! そんなややこしい状況の時に、カールドッキリすな! カールがもう、ブッレブレやないか!」

A「わ、わたしはいったい、なにをそんなに怒られてるの?……」

A「あたしも、よくわかんないよ!」


遠くから、Cの声がする。

C「あれ、お兄ちゃん?」


Aはハッとして、振り返る。

A「あ、弟!」

B「弟?」


C「お兄ちゃ~ん」

手を振り返しながら、近づいて来るC。


やがてCの姿がハッキリ見えてくる。Cはカールおじさんの恰好。

B「なんで、これをかりない!!!」


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