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計画

遅れました……

「これからまず、俺の『彩りパスタ』の氷を溶かして欲しい。彩りパスタが開けば、食料もあるし、薪もある。更に店内で寒さを凌ぐこともできるぞ。どうだ?」

「賛成です。ここにある食料なんてたかが知れていますし、ガイルさんのお店に頼りたいです」


 ガイルさんの意見にローズさん、その他みんなが賛成し、私はガイルさんのお店の氷を溶かすことにしました。


「こっからならすぐそこだ。ついてこい」


 と言って歩き出しましたが、目の前でした。なんなら、店の入り口が広場に面していました。看板が凍りついていたので、分かりませんでした。確かに看板の端にタの文字が見えています。


「じゃあ溶かしてみます」

「あぁ、頼むぜ」


 他の皆さんが固唾を呑んで見守る中、私は炎魔法を使い、少しずつ、慎重に扉の氷を溶かして行きます。扉は木製なので、燃やさないように細心の注意を払います。


「……よし。開きました」

「よっしゃ! ナイスだぜヴァイオレットさん!」


 ガイルさんが扉を開け、皆さんもそれに続いて店内に入ります。『彩りパスタ』の内装は温かみのある木製で、彩りの名にふさわしく、色とりどりの椅子が置かれており、代わりに机は着色も何もない木製で統一されていました。


「『彩りパスタ』へようこそ。とりあえずここを拠点にしてくれて構わない。明日からこの氷漬けの原因究明をやろう。お前ら、腹が減ったろ? 俺が特別にパスタをご馳走してやるよ。手伝えレスト!」

「はいっす!」


 その日はガイルさんのお手製パスタをご馳走になりました。また二階がそれぞれ部屋を貸してもらい、各々眠りにつきました。


 その夜のこと。ロウソクの灯りの下、私は日記を書いていました。


「今日はようやく物作りの聖地こと、スティアに到着しました。道中の渓谷や双子雪山は絶景でした。しかし、スティアに着いて早々、私は氷漬けにされた門に行く手を阻まれ……」


 とこんな風に書き連ねていきました。ヒュプノスで買ったノートを日記帳としてその日あった出来事なんかをまとめていました。見返して懐古に浸れますしね。


 日記帳を書き終わり、ふと窓の外に目をやると、ノアくんが広場で体操座りをして空を見上げているのが見えました。なんとなく気になって、私も外に出てみることにしました。


「眠れないんですか?」

「誰!?」

「私ですよ。ヴァイオレットです」

「あ、旅人さん。僕、心配で眠れないんです。みんな一緒に氷漬けになってるだろうから……」


 ノアくんの話を聞く限り、ノアくんには姉がいるそうです。もちろん両親も居て。今は3人とも氷の中。不安になる気持ちは痛いほどわかります。同時に、心配できる家族がいることを少し羨ましくも思いました。


「ノアくん。君の心配する気持ち、とっても分かります。だから、氷が溶けたら、前よりもっと家族を大事にしてあげてください。愛してあげてください。また失うのは、怖いですからね」

「……はい」

「では私はそろそろ戻ります。あんまり夜風に当たりすぎると風邪を引きますし、ノアくんもほどほどにね。後これ。眠れないのなら、このお花を枕元に置いてみてください。きっとよく眠れますよ」

「はい。付き合ってくれてありがとうございました」

「どういたしまして」


 礼儀正しい子だなぁ、と思いながら私は部屋に帰って行きました。


 ちなみに、ノアくんに渡した花はガーデニアです。クチナシとも呼ばれていますが、香りにリラックス効果のある花です。花言葉は『喜びを運ぶ』。これからの出来事に対して彼に幸せが訪れて欲しいという意味を込めました。


 言い忘れていました。おやすみなさい。


 私はロウソクを吹き消しました。


-------


 翌朝。ひんやりとした空気を感じながら目が覚めました。寝ぼけ眼を擦りながら窓の外を見ると、窓に霜が降りていました。白く曇った窓を拭き、身支度を済ませて私は下へ降りました。そこには、既にみなさん揃っていました。一番最後とは、ちょっと恥ずかしいですね……


「おはようございます」

「おう、おはよう。ヴァイオレットさんも朝食食べて、感想くれや」

「分かりました」


 案内された席で朝食をとりました。メニューは、菜類の乗ったトマトパスタでした。朝から麺なのはパスタ店だからでしょうか。


「ん、トマトソースが甘めになっていますね。よく麺に絡んでいて美味しいです」

「ハハハ、ありがとな。こいつの女性受けが気になってたんでな」

「素人目線ですけどね」


 こうして全員朝食を食べ終えたところで、ガイルさんが今後の計画について話す。


「で、これからの計画だが、ヴァイオレットさんの手を借りて、凍っちまった街の人を救助したい。もしかしたら、誰かがここで何があったのか知っているかもしれないからな」

「賛成です。原因がわかれば、この状況をどうにかできるかも知れませんからね」

「でしたら、先に大聖堂の入り口を開けるべきですわ。あそこなら、助けた人たちを収容するだけの広さがありますし、ここからも近いですわ」


 ローズさんの意見が採用され、最初に大聖堂の扉を開けることになりました。


 大聖堂、ですか……これまた大変な作業になりそうですね……



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― 新着の感想 ―
[良い点] はじめまして! 最新話まで読ませていただきました。 迫害や、悲しい過去にもめげずくじけず、心清らかなままの女の子。ヴァイオレットのことが、僕はとても好きになりました。 純粋に世界を楽し…
2021/09/27 02:23 退会済み
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