迷子
かなり間が空いてしまいました。申し訳ない……
私たちは今、コウモリの大群に追われています。
この階層は分かれ道が多く、迷路のように入り組んでいます。しかし、どの道が正解かも構わず、とにかく逃げ回っていました。
そろそろどうにかしないと、体力的にも厳しいです。
しかし、どうするのが良いでしょうか。私の魔法では一度に数匹ずつしか撃ち落とせませんし、あの数に対しては現実味がありません。通路を塞ぐことが出来ればいいのですが。通路を塞ぐほどの大きさの氷や岩も、私の実力では厳しいです。
「あ、そうです! 岩が出せないなら借りれば良いんじゃないですか!」
「へ? ヴァイオレットさん、何する気なんですか?」
「まぁ見ててください」
私は背後のコウモリたち……ではなく、その天井に杖を向けます。
「これでっ、どうですか!」
私の放った爆破魔法が、坑道の天井を砕き、土砂が崩れてきました。それらがコウモリたちを押し潰し、道を塞ぐことに成功しました。
「よし、上手くいきましたね」
「わぁ、流石ヴァイオレットさんですね! ふぅ、ようやく一息つけます」
「えぇ、私もちょっと疲れました。少し休みましょう」
「キュ?」
「あ、ごめんなさい、アイラ。驚かせちゃいましたね」
走り出した時にはポケットの中に潜っていたアイラですが、爆破魔法の音でびっくりさせちゃったようで、ひしとポケットを掴んで離しません。
私たちは少しの休息を挟み、また探索を再開しようと地図を見た時、あることに気付きました。
「あれ? 私って今、どこにいるんでしょうか……」
闇雲に逃げ回っていたので、地図上でどこにいるのかが全くわかりません。
「ネールさん、どういうルートを通ったか覚えてますか?」
「ネールも覚えてないです……」
私たちは、鉱山の地下で迷子になったのでした。
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とにかく動いてみない事には始まらないので、その場から移動することにしました。
それから数十分もしない内に気が付きました。
「おかしいですね……同じところを回っている気がします」
そう、どの道を行っても、結局この道にまで戻って来てしまうのです。
「うーん、どうすれば良いのでしょうか……」
「じゃあ、道に目印を付けながら行くのはどうでしょうか!」
「そうですね。では、ここにこのブロックを置いておきましょう」
私は土魔法で小さなブロックを作り、その場に置いておきます。
そして進みます。
「あ、さっきのブロックがあります」
また戻って来ました。
次は通った道に、間隔を空けてブロックを置きます。
「あ」
また戻って来ました。
今度こそは、と全ての道を試します。
「……」
……また戻って来ました。
「ネールさん、全部の道、ダメでしたね」
「ですね。ネールたち、迷子とかそういう次元じゃ無いのでは?」
と、最初に置いたブロックの前で項垂れていました。
すると、何やら上から物音が。
今更になってコウモリがこっちに来たのか、と身構えましたが、次の瞬間に聞こえて来たのは、女性の悲鳴でした。
「きゃぁあああああああああ」
「けほっ、けほっ」
着地と同時に巻き上がった砂埃に咳き込んでいると、やがて視界も晴れ、痛そうにお尻をさすっている女の子がいました。
「イタタ……何でこんなところに落とし穴が……」
「あの、大丈夫ですか?」
「わっ!? なんだ、人か。驚かせないでよね。ありがとう、大丈夫よ」
そう言って、彼女は土を払いながら立ち上がる。
「あたしはセレナ。貴女たちは?」
「私はヴァイオレット、旅人です」
「ネールです! ヴァイオレットさんのメイドやってます!」
「ヴァイオレットさんに、ネールさんね。覚えたわよ」
セレナさんは、私たちと同じような装備で、ピッケルを背負っています。何か鉱石を採りにきたんでしょうか。
「それにしてもツイてないわね。こんな長い落とし穴があると思わなかったわ」
「そのことなんですが、多分私のせいです……」
「ヴァイオレットさんの?」
「はい。向こうを見て貰えば分かるんですが、少しここの天井を崩したので、たまたま落とし穴と繋がってしまったのかな、と」
「なるほどね。まぁ、結果的に早く降りて来れた訳だし、気にしないわよ」
セレナさんが心の広い方で良かったです。まさか、落とし穴と繋がっていたなんて思わないじゃ無いですか……
「あ、セレナさん、地図上で今どの辺りにいるか分かりませんか?」
「え? あぁ、ちょっと見せて。あたしが居たのがここで、まっすぐ落ちてきたから……大体この辺りかしら」
「ありがとうございます、助かりました」
「もしかして……迷ってた?」
「……はい。お恥ずかしながら」
「あはは、見たところ初心者みたいだし、しょうがないと思うわよ。さて、そろそろ行きましょう。ずっと同じ場所に居ると魔物が来るわよ」
「ですね。行きましょう」
私たちはようやく位置を把握できたマップを見つつ、先へ進むのでした。




