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機械仕掛けの翼

 箒の上から失礼します。ヴァイオレットです。


 今日は、私が初めて箒に乗った時の話をしましょう。今こそ乗りこなしている箒ですが、最初は酷いものでした。


 それは、機械いじりの大好きな修理屋の少年との出会いから始まります。まさか、空から降ってくるなんて……


---------


 無事中央大陸に辿り着いた私たちは、セイルさんと別れ、旅を続けていました。中央大陸側の港町、ポートリアで情報を得て、私たちは今、街全体がからくり仕掛けの国、カイゼンへ向かっている途中です。


「それにしても、カイゼンまでまだまだ遠いですね」

「ですね。ネールさん、疲れたらいつでも言ってくださいね。休憩にしますから」

「私はまだまだ行けます……!」


 とは言いつつも、彼女は普段より返事のキレが鈍いです。船に乗った後にこれですから、体力が持っていかれたのでしょう。私も少し反省です。仲間の体力を考えられていませんでした。私は旅をしてそれなりに経ちますし、慣れていますが、ネールさんはメイドでした。長時間野外を歩くのは相当な負担だったはず。


「近くに村があるようですし、そこで休憩しましょうか」

「……ネールは大丈夫ですよ?」

「私が休憩したい、ではダメですか?」

「……分かりました」


 本当に顔色が悪そうなので半ば無理矢理休ませましょう。私たちは、今いる街道から逸れ、近くにある村へ寄り道させてもらう事にしました。


 村へ向かう道の途中、ついにネールさんが倒れてしまいました。


「ネールさん!? 大丈夫ですか!?」

「いえ、大丈夫、です……ヴァイオレットさんは心配なさら、ず……」


 ネールさんのおでこに触れてみると、熱したやかんのように熱く、熱を出していることは間違いありません。これは私が無理をさせすぎた結果です。責任持って背負って行きましょう。


「あ、そんな、ヴァイオレットさん。悪いですよ……」

「熱出してる時くらい甘えてください! あなたは自分に厳しすぎです。無理をさせてしまった私も悪いですが、体調が優れないならすぐに報告してください。それを迷惑かける、だなんて思わないでください。遠慮なく頼って良いんです。仲間ですから」

「ヴァイオレットさん……」

「さ、行きますよ」


 私は、羽のように軽いネールさんを背負います。こんな小さい身体で頑張っていたんですね。背負ってみてこの子がまだ10歳にも満たない少女だったことを思い出しました。よし、急いで村まで向かいましょう。そこでとりあえず看病が出来たらな、と思います。


 ネールさんを背負って歩き出したその時。地面に何かの影が映ったと思えば、上から声が降ってきました。


「わぁああああ!?!? 危なーい!?」

「きゃぁっ!?」


 それは、私の目の前をかすめ、土煙を上げながら着地しました。ほどなくして土煙が晴れると、服の砂を払いながら立ち上がる人影が見えました。


「ふぅー、危なかった。また失敗かー」

「あの……あなたは……?」

「突然降ってきてごめんね。僕はゼル。この近くの村で修理屋をやってるよ。君たち、怪我はないかい?」


 そう言ってはにかむ彼の背中には、機械できた翼が付いていました。それより、どうして空から……?


「はい、大丈夫です。というか、どうして空から降ってきたんですか?」

「あ、えっとね。この背中にある翼が見えるかい? 僕は修理屋をやってるって言ったけど、裏で空を飛ぶ研究をしてるんだ。魔力と親和性の高い鉱石を使って、この機構の翼を作ったんだ。まだ試作品で今も失敗したばかりだけど………いつか作り上げてみせる。ところで、君が背負っているその子。辛そうだけど大丈夫かい?」

「はっ、そうでした。ゼルさんに一つお願いがあるのですが」

「なんだい?」


 私は、ゼルさんに事情を説明し、どこか休める場所がないか聞いてみました。


「それならうちを使うといいよ。最近僕の姉が結婚して家を出ていったから、部屋が空いてるんだ」

「それは助かります。是非お借りさせてください」

「了解。じゃあ付いてきて」


 空から不時着してくた少年、ゼルさんのお家をお借りして、ネールさんの看病をすることになりました。運良く彼に出会えて良かったです。それにしても、空を飛ぶための研究、ですか。私も一度空に憧れたことがありました。まだゼタの村で虐げられる生活を続けていた頃、空を飛ぶ鳥を見てよく羨んだものです。飛べるのなら、私もいつか空を飛んでみたいですね。


 しばらく歩いて村へと到着しました。


「ようこそ、ウィレッド村へ。さ、僕の家はあっちだ。行こう」


 ウィレッド村は、段々畑がたくさんある村でした。水路が整備されており、水門のようなものを用い、半自動で水やりをしているそうです。とうもろこしなんかの粉挽きや、布などのはた織りも機械による手が加えられ、生産者の負担を減らしているようでした。やはり、中央大陸の技術はこんな村でも発揮されているようです。


「ここだよ。姉の部屋は一階の階段横だよ。そこを自由に使ってくれ。僕は氷のうを準備するよ」

「何から何までありがとうございます」

「気にしないで。困っている人は放っておけない性質なんでね」


 ゼルさんの用意してくれた氷のうをネールさんのおでこに乗せ、彼女が眠るまでそばで待ちました。背負っていた時に既に目がとろんとしていたので、眠気が来ていたのでしょう。すんなりと眠ってくれました。


「彼女、どうだった?」

「すぐに眠ってくれました。私が無理させてしまったせいで、疲れていたんですね」

「だったら、起きた時にりんごでも食べさせてあげなよ」

「そうですね。あ、申し遅れました。私はヴァイオレット。旅人です。今ベッドをお借りしているのはネールさん。私の旅の仲間です。この度は、寝床を貸して頂いて、ありがとうございます」

「いやいや、大したことはしてないさ。それじゃあ、僕は研究に戻ろうと思うんだけど、ヴァイオレットさんも見学していくかい?」

「あ、ぜひお願いします」


 私はゼルさんの研究を見せて頂けることになりました。空を飛ぶ研究……一体どのようなものなのでしょうか?

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